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ブロックチェーンで進化する「J-クレジット制度」―“脱炭素”化社会の実現のカギ

ブロックチェーンで進化する「J-クレジット制度」―“脱炭素”化社会の実現のカギのイメージ

政府が推進するデジタル化によって、さらにその利用が加速しそうな「J-クレジット制度」。いま注目を集めている“脱炭素”化社会の実現に向けて、どのような役割を果たすのか? J-クレジット制度の仕組みやメリット、制度のカギとなるブロックチェーン技術導入による変化について見ていこう。

そもそもJ-クレジット制度とは?

J-クレジット制度とは、「削減・吸収できた温室効果ガスの量」という目に見えない価値を「クレジット」として可視化し、売買できるようにした制度のこと。現在は経済産業省、環境省、農林水産省によって運営されている。
「J-クレジット制度」をおさえておくべき理由として、いま国内外で話題になっている“脱炭素”に対して、政府が急速に動き始めたことがあげられる。

2020年10月、菅内閣総理大臣が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指す」と宣言。世界がSDGsを掲げて足並みを揃えるなか、日本政府の脱炭素化社会実現に向けた本気度が国内外に示された。また、2020年12月8日の都議会では、「2030年までに、(都内で販売される乗用車新車販売の)100%“非ガソリン化”を目指す」という小池都知事の発言もあり、具体的な目標がいよいよ進み始めている。

このJ-クレジット制度では、温室効果ガスの排出削減または吸収量の増加につながる事業を実施する地方自治体や企業、森林保有者などをJ-クレジット“創出者”という。

J-クレジット創出者が省エネ設備や太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入したり、適切な森林管理を行った場合、その活動による温室効果ガスの排出削減・吸収量がクレジットとして認証される。

その認証されたクレジットを、事業ではなかなか温室効果ガスの削減などの取り組みができない大企業や中小企業、地方自治体などが、J-クレジット創出者から購入する。それによって、J-クレジット創出者はクレジット額に応じた売却益を得ることができる。さらに環境保全の取り組みに興じることができるため、国全体でみたときに、温室効果ガスの排出削減または吸収量の増加が促進されるという仕組みだ。

図:J-クレジットの仕組み
図:J-クレジットの仕組み

出典:J-クレジット制度のホームページから編集部作成

J-クレジット制度を利用するメリットとは?

J-クレジット創出者がこの制度を利用するメリットは、クレジットの売却益で事業活動のランニングコストを抑えられる上、環境に配慮した企業であることを社内外に向けてアピールできること。

対して、J-クレジット購入者のメリットは、事業活動などで排出されてしまう温室効果ガスを他の削減分で埋め合わせるカーボン・オフセットなどの取り組みによって、自社の計画目標達成やCSR活動への活用が可能な点だ。

たとえば同じような規模の企業でも、どのような事業を行っているかによって環境対策は異なってくる。なかにはどうしても多くの温室効果ガスを排出してしまう企業もあるが、いくら低炭素化社会とはいえ、そうした企業が環境にかける負荷だけで評価されてしまうと、事業活動を健全に行うことが難しくなってしまう。

そこで、大きく温室効果ガスの排出量を削減・吸収できている企業からJ-クレジットを購入し、自分たちが環境に対してかけている負荷を相殺する。そうすることで温室効果ガスの排出削減などに間接的に貢献できることが、この制度の肝になっている。

大企業を中心に多くのCO₂を排出せざるを得ない事業者にとってこの制度は救いの手となる。

また、投資家向けに企業の環境情報の提供を行うことを目的とした国際的なNGOであるCDPによる調査や、国際的な温室効果ガス排出削減目標であるSBT(企業版2℃目標)の評価、さらには温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)で義務づけられる報告書などにおいても、J-クレジットの取り組みが反映される。

つまり、SDGsへの取り組みが重要視される時代において、J-クレジットへの参画度合いは、自社の企業評価につながる環境対策の重要な評価指標になるといえるだろう。

2022年、政府が“ブロックチェーン”を活用!

J-クレジットは、これまで取り組んでいる企業があまり多くなかったため、これまで耳馴染みのなかった人も多いだろう。現状では制度の登録・申請は紙の用紙によるアナログな手続きのみ。さらには排出削減量の正確性を担保する第三者の検証が必要な上、取引に関しても事務局への申請が必要になるなど、特に人手のない中小企業にとってはJ-クレジット制度を利用するハードルが高かった。

しかし、今後はその状態も一転するかもしれない。

そのカギとなるのが“ブロックチェーン”の活用だ。政府は、ブロックチェーンなどのデジタル技術を活用した同制度の運用についての検討をスタート。新内閣ではデジタル庁の創設など、真のデジタル化社会の実現に向けた改革も本格的に推進されていくなかで、このJ-クレジットがその顕著な例になりそうだ。

すでに2022年度の運用を目指した、ブロックチェーンを活用したJ-クレジット取引市場(ezzmo:イツモ)の創設を発表している。ブロックチェーンを活用することのメリットは、以下の3つである。

  1. 高い改ざん耐性や信頼性が確保されたクレジット取引が可能
  2. 申請・認証などの手続きの簡素化・取引などの自動化
  3. J-クレジット以外の複数のプラットフォーム・企業を巻き込んだビジネスモデルの実現

最近では、企業などが太陽光発電で自己消費する電力を、J-クレジットとして収益化する取り組みもスタート。ICT機器による電力データなどの計測や、発電データのブロックチェーンへの記録など、先端技術を活用したこの取り組みには、すでに名だたる大企業が参加している。

SDGsやESG投資の観点でも、J-クレジット制度がカギになる?

政府が推進するデジタル化によりブロックチェーンが導入され、その運用が大きく変わりそうな「J-クレジット制度」。最近では環境問題や社会課題、ガバナンスなどに配慮した企業を重視して投資を行うESG投資が世界的に注目を集めるように、いまや各企業の環境対策は企業評価につながっていくといえる。

SDGsやESG投資の観点でも、このJ-クレジット制度への取り組み度合いが新たな評価指標になる可能性が高い。

ビジネスパーソンなら、自分が勤める会社や興味のある会社の環境意識を測ったり、資産運用をしている人は投資先を見極める判断材料として、新たな企業評価指標になり得るJ-クレジット制度への取り組み度合いに注目してみてはいかがだろう。

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