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2021.08.19 NEW

カーボンニュートラル実現は「水素」が鍵? 世界で本格導入が進行中

カーボンニュートラル実現は「水素」が鍵? 世界で本格導入が進行中のイメージ

成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会の実現に注力している菅政権は、2050年までに「カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言している。

カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現のため、大きな貢献が期待されているのが「水素」であり、中でも「グリーン水素」が注目されている。改めて、その実態と可能性を探っていきたい。

脱炭素化の世界的なキーワードは「カーボンニュートラル」

日本では脱炭素社会とともに使われることが多い「カーボンニュートラル」とは、地球温暖化の主な原因となる二酸化炭素排出量を抑制するための概念。「ニュートラル(=中立)」という言葉からわかるように、これらは「カーボン(=炭素)」の排出量をゼロにしようというものではない。

二酸化炭素の「生産などによる排出量」と「植物の光合成などによる吸収量」を同量にし、実質的な二酸化炭素排出量をプラスマイナスゼロにすることを目指すのが基本的な考えだ。

二酸化炭素は主に石油や石炭などの化石燃料からエネルギーを作る際に排出され、その量は産業革命期から現代まで、増加を続けている。2018年の「世界の二酸化炭素排出量」を見ると、最も排出量が多いのは世界の工場とも呼ばれる中国だ。また、日本も世界5位であることは見逃せない(図1)。

図1:世界の二酸化炭素排出量(国別)

図1:世界の二酸化炭素排出量(国別)

出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト「EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版」をもとに編集部作成

2021年1月時点で、日本を含む124カ国と1地域が、2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指している。2060年までの実現を宣言する中国を含めれば、すでにカーボンニュートラル実現を表明している国と地域は、全世界の約3分の2を占める。

ちなみに、日本はカーボンニュートラル実現へ向け、「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言しており、二酸化炭素に限らず温室効果ガス全体を対象にするという、一段階レベルの高い、独自の目標を設定している。

新時代に注目されるエネルギーは「グリーン水素」

カーボンニュートラル実現に向け、新時代のエネルギーとして注目されているのが「水素」である。

水素は、宇宙で最もたくさん存在する物質とされ、燃焼させることで熱エネルギーとして利用できる。このときの最大の利点が、水素をエネルギーとして使用する際、二酸化炭素が発生しないことだ。しかも水素のエネルギー効率は高く、ロケットの燃料としても利用されるほどである。

実は、水素は「製造方法の違い」によって、主に以下の3つに分類される(図2)。分類により、製造過程での二酸化炭素の排出量が異なってくる。

図2:水素の分類と製造方法

図2:水素の分類と製造方法

「グリーン水素」とは、水(H₂O)を風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの電力によって、酸素(O₂)と分解することで作られる水素のこと。そのため、製造過程で二酸化炭素を排出しないのが特徴だ。

一方、化石燃料を分解して水素を作る方法もあるが、これには副産物としての二酸化炭素が発生する。発生してしまう二酸化炭素を、そのまま大気に放出する方法で作られる水素を「グレー水素」、大気に排出されないように回収し、地中に貯蓄する方法で作られる水素を「ブルー水素」という。

2020年時点、世界で生産されている水素のうち、約95%を占めているのはグレー水素だ。しかし、今後はカーボンニュートラルを実現するために、グリーン水素とブルー水素に限定されていくだろう。

水素市場は2050年までに2兆5千億ドル以上の市場規模に?

水素協議会(Hydrogen Council)は、2050年までに世界水素市場は2兆5千億ドル以上の市場規模に成長し、約3千万人の雇用が創出されると予想。さらに、水素エネルギーがエネルギー需要全体の18%を占めるようになり、それに伴い、世界の二酸化炭素排出量は約60億トン(2018年の世界の二酸化炭素排出量の約18%に相当)削減されると見込んでいる(図3)。

※水素協議会:エネルギーの移行に資する水素について、統一した長期的なビジョンを持つ大手エネルギー、輸送機器、産業の企業によるグローバルなイニシアチブ。

図3:2050年の水素市場のビジョン

図3:2050年の水素市場のビジョン

しかし、水素をエネルギーとして活用するには大きな課題がある。それは、製造コストが高いことだ。特にグリーン水素は、コストの低い化石燃料を原料とする水素に比べ、およそ3倍のコストがかかるとされる。

だが、水素より先に普及しはじめていた、その他のクリーンエネルギーである風力発電や太陽光発電などは、約10年前から大幅にコスト低下が進んでいるのも事実。今後、グリーン水素にも製造コストのスケールメリットが出てくれば、水素の中でもグリーン水素が新時代のエネルギーとして中心的な役割を担うことになるだろう(図4)。

図4:水素生産量の推移シナリオ

図4:水素生産量の推移シナリオ

世界各国で先進的な取り組みが先行

現在、世界各地で国や自治体が主導となって水素導入に取り組むプロジェクトが遂行されはじめ、そこではグリーン水素が目立っている。たとえば、ヨーロッパ連合では2020年7月に2050年までの「水素戦略」を発表し、水素戦略に4,700億ユーロを投じることを決定。3つのステージに分けて水電解装置のインフラ整備を進め、2050年までに脱炭素化が困難なすべての産業部門にグリーン水素を普及させるとしている。

民間企業では、水素関連ビジネスに参入する動きがある。たとえば、アメリカの石油関連企業が世間の脱炭素化へのニーズに応えるため、2021年4月に日本の大手自動車メーカーと水素関連ビジネスの促進のための戦略的提携を結んだことを発表。水素への期待が高まるにつれ、今後も技術力や組織力を活かす大手企業同士の提携や、これまで温室効果ガスを多く排出してきた業界のビジネスモデルシフトが見られそうだ。

こうしたカーボンニュートラルへの取り組みは、世界のエネルギー地図を変える可能性を秘めている。世界各国の政府や企業が水素の活用を進める2021年は、まさに「水素エネルギー元年」といえるだろう。私たちの生活にも影響する、環境に関わる国内外のニュースをチェックしていきたい。

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