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人生100年時代でも怖くない。知っておきたい資産形成術とは【第1回】

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人々の寿命は延び、100歳まで生きることが珍しくない時代が到達するという予測もあります。そのとき、老後の生活資金はどうまかなえばよいのでしょうか。年金は十分にもらえるのでしょうか。投資や資産形成というけれど、そのやり方は?

野村證券のオンラインセミナー「知っておきたい!人生100年時代の資産形成~貯蓄から投資へ~」では、CFPとDCプランナー1級の資格を持ち、資産形成のアドバイスを行う同社資産形成推進部(当時)の舟木周子が、これからの時代の資産形成の必要性やノウハウ、リスクを減らす投資のコツなどを解説しました。その内容をご紹介します。

これからの人生にどれだけお金がかかる?

以前から「貯蓄から投資へ」と言われ続けています。しかし、日本ではなかなか投資が浸透しません。日本では個人の資産のうち、投資の占める割合は15%程度ですが、米国では約50%。「この違いは個人の資産の増え方にも影響して、過去20年間で日本では家計の金融資産が4割増にとどまりますが、アメリカはなんと3倍にもなっています」と舟木は話します。

資産形成の第一歩は、これからのライフイベントにかかる費用を把握すること。下の図はお金がかかるライフイベントを示しています。

子供の教育費や住宅費などのライフイベントは大きな支出を伴いますが、現役世代の間は収入でまかなえる場合も多いでしょう。こういった支出自体、必要がない人もいるかもしれません。これに対し、誰にでも共通する必要費用は、セカンドライフ、つまり退職後の生活を支える費用です。実は人生で一番お金がかかるとも言われており、収入がある間に無理なく備えていくことが重要です。

セカンドライフの費用はインフレによってさらにかさむ可能性があります。インフレは将来かかる費用を増やすだけでなく、今持っているお金の価値も減らします。お金の価値はそのままで、モノの値段だけが上がっていけば、当然買えるモノの量は減ります。

使えるお金の価値が半減するインフレ

毎年、物価が一定の割合で上がると、お金の実質的な価値がどのぐらい下がるかを示したのが、上図のグラフです。物価が毎年2%上昇した場合、30年後の1000万円では、現在の552万円分の価値のものしか買えなくなります。つまり、実質的なお金の価値が半分程度になってしまいます。

ゆとりある老後の生活には、夫婦2人世帯で1月あたり37.9万円が必要になるという調査結果があります。毎年2%ずつ物価が上がっていくと、同じ生活をするのに20年後には55.2万円、30年後には67.3万円も必要になります。

インフレの実感があまりない人もいるかもしれません。しかし、実際に日本の消費者物価指数は2022年平均で前年比2.5%上昇しました。米国でも同年に入り、対前年比で7%を超えるインフレ率で推移しており、社会問題化しつつあります。ウクライナ危機もありしばらくはインフレが続く見込みです。「今から将来に備えていくにあたって、インフレに対応するための適切なマネープランが求められています」と舟木は呼びかけます。

投資のリスクとリターンとは

適切なマネープランのために自分で運用して、将来に備えようとしても、運用するお金がなければ資産形成が始められません。運用資金は貯蓄から支出する必要がありますが、使い切ってしまったりしてなかなか貯まらないものです。舟木は「まずは給与天引きや口座引き落としなどで先に貯蓄分は抜いて『先取り貯蓄』をして、残りを支出に回すことで、着実にお金を貯めること」を勧めます。

さらに、リスクとリターンを踏まえて、運用商品を選ぶことも欠かせません。では、運用におけるリスクとはどんなものでしょうか。「元本割れしまうこと、損をすることがリスクと誤解されがちなのですが違います。運用でのリスクとは、運用商品の値動きの大きさのことを指します」(舟木)

一般的に値動きが小さい、リスクが低い商品ほど得られる平均リターンは小さくなります。値動きが大きい、リスクが高いものほど得られる平均リターンも大きくなります。運用の対象商品ごとに傾向があり、債券よりも株式の方が「ハイリスク・ハイリターン」といえます。

さらに、上図の通り投資対象を国内に限定しているものよりも、外国にまで拡大しているものの方が政治経済の変動や、為替の変動の影響を強く受けます。さらにハイリスク・ハイリターンの傾向があります。

日本は2010年ごろに人口が頭打ちとなり、減少しつつありますが、世界を見ればまだまだ人口は増加します。人口増加による経済成長が見込めるため、外国株式はハイリターンが狙える資産といえるかもしれません。

リスクを減らす方法とは?

投資ではなるべくリスクを減らして、リターンを得たいものです。リスクを軽減させることを期待できる方法の一例として「長期投資と積立投資、分散投資を組み合わせることです」と舟木は解説します。

過去の分散投資の効果を比較しました。まず下図は分散投資しなかった場合の実績です。1988年初から2021年末まで、過去34年間の毎年の運用成果をグラフにしています。

利益が出た年を「勝ち」、損失が出た年を「負け」とした場合、国内株式にすべて投資した場合は過去34年で「19勝15敗」でした。

一方で、分散投資した場合はどうでしょうか。下図は国内外の株式と債券に25%ずつ、つまり4分の1ずつ分散投資した結果です。

同じ34年間の投資結果ですが、分散投資すると「24勝10敗」と大幅に勝ち越しています。あくまで過去の実績ですが、分散投資した方が運用成果は安定することがわかります。

さらに長期投資を組み合わせるとこうなる

さらに、分散投資は長期で行うことでより一層効果を発揮します。10年にわたって国内、外国の株式と債券に分散投資した場合の運用成果が下図です。

グラフを見る限り、下に向かって伸びているマイナスのリターンとなった年がありません。舟木は「2008年は100年に1度の経済危機と言われたリーマンショックがあった年。その年ですらプラスのリターンなのです。驚いてしまいますよね」と語ります。

平均すると、年率5%以上のプラスのリターンが出ていたことになります。あくまで過去の実績ですが、分散投資と長期投資を組み合わせることでより安定的な運用成果が期待できることがわかります。

年金も分散投資されている

なお、私たちが将来もらう年金の一部も運用、分散投資されています。150兆円以上の巨額な資産を年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という公的機関が運用しています。GPIFは、国内、外国の債券と株式におおむね4分の1ずつの分散投資をしています。その運用実績が下図です。

年によってばらつきがあるものの、2001年以降の平均収益率は年率プラス3.7%となっています。特に、2020年度にはプラス25%と過去最高の収益率を記録しています。この年はウィルスによるパンデミックが落ち着いた期待感から国内外の株価が上昇し、30年ぶりの日経平均3万円台回復といった出来事もありました。

「株式や債券の売買のタイミングを見極めるのは難しいですが、金利がほぼゼロの預貯金だけではお金は増えません。リスクをしっかり分散して投資することで、世の中の経済変動に振り回されずに、増やしながらの資産形成が期待できます」と舟木。

ただ、分散投資が重要とはいえ、数多くある債券や株式の中から自分自身で複数の銘柄を選んで投資し、長期間管理していくことは簡単ではありません。

【第2回に続く】

  • この記事は、2023年2月時点の情報に基づくものです。

文責・野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室

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