2025.03.04 NEW
進化を続ける「100年企業」に中長期投資の視点から注目 野村證券ストラテジストが解説
グローバル化を進め、事業や持ち合いも見直し
2023年以降、「JTC」という言葉をよく目にするようになりました。これは「Japanese Traditional Company(日本の伝統的な企業)」の頭文字を指し、上意下達の企業文化や硬直的な組織運営を揶揄する際に使われる表現です。
しかし、このような企業の多くは、長い歴史を持ち、その間に世界大恐慌や第2次世界大戦などの困難を乗り越えてきました。実際、TOPIX(東証株価指数)の構成企業1,698社のうち182社は1925年以前に設立された、いわゆる「100年企業」です。これらの企業は、世界大恐慌、第2次世界大戦、さらにはバブル崩壊やデフレといった経済的な試練だけでなく、1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災といった大規模な天災をも乗り越え、事業を継続してきました。
大林組(1802)
住友林業(1911)
三越伊勢丹ホールディングス(3099)
住友金属鉱山(5713)
IHI(7013)
武田薬品工業(4502)
伊藤忠商事(8001)
三井住友フィナンシャルグループ(8316)
など、源流が江戸時代創業に遡る企業も少なくありません。
これらの企業は、明治維新という混乱期をも乗り越えてきました。なかには、三越伊勢丹のように、本業を両替商から呉服屋、さらに百貨店へと転換してきたケースも見受けられます。
100年企業のEPS(1株当たり利益)は、中長期的に拡大を続けています。1990年代初頭と比較して現在では約6倍に達しており、その成長性と安定性のバランスが際立っています。さらに、海外売上高比率が中央値ベースでTOPIX全体を上回っているうえ、直近でも上昇傾向を示しており、グローバル化が一段と進展していることがうかがえます。
100年企業が抱える課題として、資本効率がTOPIXと比べて見劣りする点が挙げられます。1990年代以降、100年企業のROE(自己資本利益率)は一貫してTOPIXを下回る傾向が続いています。これは、売上高純利益率と総資産回転率に起因しています。具体的には、売上高純利益率の中央値は100年企業が6.0%、TOPIXが6.3%であり、総資産回転率の中央値は100年企業が72.9%、TOPIXが76.8%となっています。一方で、自己資本比率の中央値は100年企業が49.3%、TOPIXが52.0%と、100年企業のほうがレバレッジは高くなっています。
100年企業の外国人投資家保有比率は、中央値で19.6%と、TOPIX全体の16.1%を上回っています。このことから、100年企業もまた、コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革を求める声と無縁ではありません。確かに、ROEの面では100年企業はやや見劣りするものの、近年では子会社の削減や政策保有株の縮減といった動きが加速しており、着実な変化が見られています。
以上を踏まえると、100年企業はその長い歴史に安住するのではなく、時代や市場の要請に応じて変化を遂げています。このように、安定性を保ちながらも、変化に柔軟に対応できる力(アジャイルさ)を備えた100年企業は、中長期投資という視点から注目すべき存在といえるでしょう。
(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)
編集元アナリストレポート
Anchor Report: Japan’s Transformation – 100年企業も個人も「変身」する(2025年2月27日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。
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