2025.06.05 NEW

円高局面における国内株式の銘柄選択 「売上高リビジョン」が有力な選択肢か 野村證券ストラテジストが解説

円高局面における国内株式の銘柄選択 「売上高リビジョン」が有力な選択肢か 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

2015年以降は円高局面で相対的に売上高リビジョンが強い

アナリストコンセンサス予想の変化によって定義されるリビジョンファクターは、2015年頃までは日本株における代表的なアルファ(超過収益)ファクターとして多くのクオンツ投資家に利用されていましたが、近年ではその効果が低迷しています。

2002年以降のリビジョンのファクターリターンを確認すると、2015年前後までは良好なパフォーマンスが見られましたが、それ以降は短期的に効果が見られる場面はあるものの、中長期的にはほぼ横ばいとなっています。したがって、リビジョンが局所的に効果を発揮するタイミングを推定する必要性があるとともに、比較的長い目線でみた場合のアルファファクターとしての有用性は失われたといえます。この背景には、2016年に導入された公平な情報開示を義務付ける日本版フェア・ディスクロージャー・ルールの影響があると、度々指摘されています。

ところが、直近のリビジョンのファクターリターンについて、各利益項目別にその動向をみると、売上高リビジョンについてはファクターリターンが良好であることが分かります。2024年以降の利益項目別のリビジョンのファクターリターンを確認すると、売上高リビジョンの2024年以降の累和リターンは約10%となっており、唯一プラスかつ好調なファクターとなっています。特に2024年9月後半以降、米国の関税懸念が生じた場面でも、比較的安定した効果が見られている点は注目に値するといえるでしょう。

利益項目別リビジョンのファクターリターン(2024年以降)

カテゴリー別Barraベータの推移のイメージ (注)TOPIX500ユニバース。リビジョンはコンセンサス予想の過去4週平均からの変化率。ただし、来期優先、連結優先、IFIS予想優先(東洋経済予想で補完)。週次リバランス。2024年以降。
(出所)Quick、ブルームバーグ、IFISより野村證券市場戦略リサーチ部作成

この売上高リビジョンについては、2015年以降の傾向として、円高時に比較的効果が高いことも指摘できます。

週次の為替(ドル円)市場に基づき、円安時および円高時の各利益項目別の週次ファクターリターンの平均値(年率換算)を確認すると、2015年以降の円高時における売上高リビジョンの平均ファクターリターンは、2000年以降の平均よりも劣ります。しかし、他の利益項目の効果の低下度合いと比較すると、十分に有効性が高いといえます。

一つの解釈として、円高時には一般的に内需系銘柄が選好されますが、小売業などではトップライン(売上高)が意識されることも多いため、利益項目の中でも売上高に注目が集まると指摘できます。ただし、円安時にはファクターリターンの傾向が大きく逆転する点に注意が必要です。

最近、市場参加者の間では米国資産離れが話題になることが多くなっています。野村證券では、今回の売上高リビジョンが円高局面で比較的効果が高いことから、そのような状況に対する一つの解決策として覚えておくべきだと考えています。以下に、直近の売上高リビジョン上位銘柄を示します。

売上高リビジョン上位銘柄(2025年6月4日時点)
銘柄コード 銘柄名
1801 大成建設
1820 西松建設
1878 大東建託
1893 五洋建設
1925 大和ハウス工業
1928 積水ハウス
1944 きんでん
1951 エクシオグループ
2371 カカクコム
2531 宝ホールディングス
3289 東急不動産ホールディングス
3291 飯田グループホールディングス
3635 コーエーテクモホールディングス
3769 GMOペイメントゲートウェイ
4208 UBE
4272 日本化薬
4507 塩野義製薬
4521 科研製薬
4732 ユー・エス・エス
5411 JFEホールディングス
5832 ちゅうぎんフィナンシャルグループ
5838 楽天銀行
6134 FUJI
6178 日本郵政
7313 テイ・エス テック
7616 コロワイド
7832 バンダイナムコホールディングス
7974 任天堂
7984 コクヨ
8253 クレディセゾン
8279 ヤオコー
8309 三井住友トラストグループ
8359 八十二銀行
8473 SBIホールディングス
8801 三井不動産
8802 三菱地所
9006 京浜急行電鉄
9024 西武ホールディングス
9065 山九
9364 上組
9433 KDDI
9435 光通信
9503 関西電力
9504 中国電力
9505 北陸電力
9508 九州電力
9616 共立メンテナンス
9719 SCSK
9766 コナミグループ

(注)TOPIX500ユニバース。売上高リビジョン上位10%銘柄。2025年6月4日時点。
(出所)QUICK、Bloomberg、IFISより野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株クオンツメモ – 円高時には売上高リビジョンが有効(2025年6月5日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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