2025.12.01 NEW

経済キャスター・八木ひとみさんの資産運用の考え方 投資先を3つに分ける意味

経済キャスター・八木ひとみさんの資産運用の考え方 投資先を3つに分ける意味のイメージ

文/竹下順子 撮影/竹井俊晴(人物)

BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」(BSテレビ東京)のメインキャスターを務めるなどテレビやラジオの番組で活躍する、経済キャスターの八木ひとみさん。2021年からは早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)で学び、仕事と育児を両立させながらMBA(経営学修士)を取得されています。常に学び続ける八木さんに、経済・金融ニュースとの向き合い方や勉強法、そして自身の資産運用についての考え方を聞きました。

経済ニュースを担当して15年以上

経済キャスターのキャリアはどのように始まりましたか。

八木ひとみさん(以下、同)

大学を卒業して最初に入社したのが山口県の山口朝日放送で、アナウンサーとして夕方のニュースや情報番組を担当しました。3年ほど勤めた後に上京し、フリーランスのアナウンサーとして、生放送のニュースや経済番組を担当するようになりました。東京での活動を始めて、15年が経ちました。

もともと経済分野には興味があったのですか。

いいえ、どちらかというと数字を扱う分野は苦手でした。ところが、最初に担当したニュース専門チャンネルでは、東京証券取引所から中継するというコーナーを任されることが多く、「寄り付きって何だろう?」というところから金融の勉強を始めました。株式や債券の情報をリアルタイムで取得できる金融情報サービスを活用しつつ、読み上げる原稿はすぐに自分で考えなければならなかったので、本当に苦労しましたね。

そのとき、分からないことを調べたり、人に聞いたりする癖が付いたのは自分にとって大きなプラスだったと思います。手当たり次第人に聞き回ったおかげで、金融や経済関係の知り合いがどんどん増えていきました。

その次に担当したマーケット・経済専門チャンネル「日経CNBC」はほぼ台本がなく、その日に起きたことを解説者の方に聴くスタイルで、相当鍛えられた気がします。日米のマーケットの動き、個別株や金利・為替の変動など、自分なりのクエスチョンを毎日持ちながら、仕事に臨んでいました。

経済分野のキャスターには向いていると感じていましたか。

実は、今でもそんなに向いているとは思っていません。でも、自分がのめり込んできた分野ではないからこそ、冷静に伝えられると思っています。最初に「日経CNBC」を担当した2014年10月、日本銀行は「異次元緩和」のひとつである「ハロウィーン緩和」と呼ばれる金融緩和策を決定しました。周りがすごく熱くなっているときに、高揚感なく淡々と伝えられた部分がありました。もしかしたら、ことの重大さがあまり分かっていなかったからかもしれませんが、客観的にニュースを伝える冷静さはキャスターにとって欠かせないと感じます。私はニュースに対して意見を言う専門家ではなくて、専門家の方々にご意見を聞く立場なので、事象との適切な距離の取り方が大切だと感じます。

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新聞は必ず紙面の形で確認し、ニュースバリューを把握

ご自身は習慣としてどのように経済の勉強をしていますか。

基本的に日々の情報収集は、日本経済新聞の電子版と紙面ビューアーの両方を使います。新聞は紙面で見ると見出しの文字の大きさでニュースバリューが分かります。朝起きたらまずは朝刊の一面トップから記事の扱いを確認し、日中は電子版でニュースを追っていきます。

そのほかに、意外と街歩きから得られることもありますね。街中の看板や行列などが目に付くと、その先に何があるのか、何が人々の関心を引いているのかをチェックします。例えば行列のできているお店を展開しているのは個人なのか、チェーンなのか。どんな企業が手がけているのか、その企業は上場しているのかなどを、すぐ調べる癖がついています。

また、新幹線で岡山の実家まで帰省する時は、なるべく同じ車両の同じ位置の座席を取り、定点で変化を見るようにしています。

投資から得られる学びがある

ご自身でも資産運用はしていますか。

はい、番組で金融や経済を扱うのだから自分でも触れてみようと思い、30歳頃に初めて証券口座を開きました。経済キャスターという立場上、個別株は買わず、投資信託やETFでの資産運用がメインですが、勉強がてら原油や金などのコモディティ商品も少し持っています。

実際に資産運用を経験することで、投資家の目線から情報をお伝えできるようにもなり、キャスターとしての幅が広がりました。資産が目減りすることもありますが、それもニュースや情報を伝える上で役立ちます。投資をすることで世の中の動き、経済の動きによりリアルに興味を持つことができ、資産形成という目的を越えて得られる学びがあります。

特に、フリーランスとしての活動を中心にしてきた人は老後の年金問題も含めて将来に対して不安が大きいので、お金に働いてもらうことはすごく重要です。もちろん資産が減ることもありますけど、将来への不安を少しでも払拭する資産運用をするには、預貯金だけではなく投資を行うことが必要だなと思います。

資産運用する上でのポリシーはありますか。

生活費を除いた余剰資金の中で、成長を期待して買う商品と、世界の流れ、動きを知るための勉強用として買う商品、もう一つは将来のより良い世界になってもらうためのESG投資という3つのパートで投資先を考えています。特に子供が生まれてからは、自分の将来だけでなく、その先の未来や地球環境についても考えるようになりました。自分のお金の一部が世の中をより良くするために使われるといいなという思いでESG投資を続けています。

また、投資を行う上では他人と比べないことはすごく重要だと思っています。誰かに引っ張られて投資をするのではなく、自分が考えて判断することが大事ですよね。ちょっとおこがましいのですが、私の仕事は皆様が大切なお金をどう運用するのかを考えるための材料を、毎日お届けすることだと思っています。ですから、自分自身も勉強していきたいし、資産運用を楽しんでいます。

キャスターとして仕事の手応えを感じるようになったのはいつ頃からですか。

今も手応えはあまり感じていないですね。私はどちらかというとネガティブ思考なので、この知識があれば、番組の中でもっと深掘りができたのにと思うことがよくあります。終わった後にひとり反省会をして、知識が足りないからもっと勉強しようという気持ちになります。自分の仕事にあまり満足したことはないです。数年前に大学院に入学したのも常にそういう不安があったからだと思います。

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仕事、出産と両立させた大学院生活

大学院に行くと決めたきっかけは何でしたか。

経済に関して体系的に学びたいと思っていたときにコロナ禍に突入し、タイミングが合いました。私はそれまで飲み会などで人と会い、同世代の人が何に関心を持ち、経済状況をどう考えているかなど情報収集をしていたのですが、コロナ禍でそういう機会がなくなってしまいました。さらに、リアルのイベントなども中止になってフリーアナウンサーとしての仕事が減り、時間に余裕ができるかもしれないと思ったことも背中を押しました。

仕事をしながら社会人大学院に通い、大学院2年目には出産もされたのですよね。

はい、毎日が本当に大変でした。コロナ禍では、スポーツやエンターテインメントの分野で華やかに活動していた同業者の仕事が消滅していくのを目の当たりにし、自分の仕事も減ると覚悟していました。しかしながら、経済情報についてはむしろ需要が多くなり、大変忙しい2年間になりました。

平日は大学院の授業が終わるのが夜10時頃で、一度帰宅して午後11時過ぎからオンラインで集合してグループワークを行い、午前2時頃までかかることも。翌朝は午前4時起きで局入りするような生活でした。出産したのは大学院2年目だったので、幸いにも修了に必要な単位はほとんど取れ、修士論文を書く生活だったのでなんとかなりました。

大学院に入って良かったと感じるのは、どのような経験ですか。

最先端の経営に対する考え方を学べたことは、自分にとって大きなプラスになりました。決算の数字を読むことひとつをとっても、企業活動や経営に対する理解がかなり深まったと思います。もうひとつは業種も業界も全く違う人たちと一緒に学ぶことができたこと。同僚でも友人でもなく、将来の目標や熱い思いを語り合えるクラスメイトたちとは、社会人として大学院に行かないと知り合えなかったと思います。

クラスには自分の能力や経験を生かして、世の中の役に立ちたいと考えている方が多かったので、その志の高さに大きな影響を受けました。今でも定期的に会い、近況報告したり、将来のプランを話し合ったりしています。私のような仕事をしていく上で、分からないことをすぐに誰かに聞けるのは大きな財産です。思い切って違う世界に飛び込んでよかったなと思いますね。

学んだことは仕事には反映されていますか。

大学院で「問いを立てることを忘れずに。そこが一番難しい」と言われたことはすごく心に残っています。修士論文ではESG(環境・社会・ガバナンス)をテーマにしましたが、経済論文を書くためのアンケートの設計や調査にはすごく苦労しました。とはいえ、問いを立て、仮説を立て、自分で調べていくというサイクルは仕事をしていく上でも重要なので、何事も自分で深く考える癖をつけられたのはよかったですね。仕事の延長線上では決して得られなかった思考方法や視点を得られたと思っています。

また、リーダーシップ論を学んだことも役立っています。現在、番組のメインキャスターとして、人から助けたいと思ってもらえるようなリーダーになりたいと思っています。そのためには、皆が働きやすい雰囲気を作ることが大切で、同僚には良かった点だけでなく、改善点をシリアスになり過ぎないように伝えることを心がけています。みんなが働きやすい組織を作るというリーダー像が自分には合っています。

経済キャスター・八木ひとみさんの資産運用の考え方 投資先を3つに分ける意味のイメージ
経済キャスター
八木ひとみさん
岡山県出身。 2008年、香川大学を卒業後、山口朝日放送に就職。11年から24時間ニュースチャンネルの「TBSニュースバード」キャスター、14年から「日経CNBC」を担当。NHK BS1「経済フロントライン」キャスターを経て、BSテレ東「日経モーニングプラスFT」のメインキャスターを6年間務め、24年からBSテレ東「日経ニュース プラス9」、同「NIKKEI NEWS NEXT」のメインキャスターに。23年、早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)修了。MBA(経営学修士)取得。 趣味は居酒屋巡りと野球観戦。

※本コラムで取り上げられたマーケットや投資に関する考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。また本コラムは、 投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、 投資勧誘を目的として作成したものではございません。将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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