2026.06.18 NEW
「有事の金」と呼ばれる金(ゴールド) 10年間積み立てた場合の資産額シミュレーション 野村證券・松田知紗
写真/タナカヨシトモ
「積み立て投資研究」は、積立投資への理解を深めていただくために、過去の様々な局面での積立のシミュレーション結果をご紹介していくシリーズです。各試算結果は、あくまで過去のデータを元にした試算であり、実際の投資とは異なります。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもありません。
インフレ懸念や地政学リスクなどを背景に、実物資産である「金(ゴールド)」への投資が注目されています。「有事の金」とも呼ばれる金は、金融危機や紛争などの際に資金の逃避先として意識され、リスクヘッジの選択肢とみなされることがあります。では、金価格に連動する投資信託に毎月5万円を10年間積み立てた場合、どのような結果になるのでしょうか。野村證券投資情報部の松田知紗がパフォーマンスを検証します。
金の積立投資、過去10年間のパフォーマンスを試算
実物資産である金は、インフレや地政学リスクが高まる局面などで注目されることがあります。近年では金価格の高騰が目立っていましたが、2026年3月以降は不安定な値動きとなっています。今回のシミュレーションでは、過去に金を積み立てた場合のパフォーマンスを確認します。
試算の前提として、金価格に連動する架空の投資信託に毎月5万円を10年間積み立てた場合を想定します。金価格は、金の現物市場を代表するLBMA(ロンドン貴金属市場協会)金価格の円換算ベースを用います。なお、実際の投資信託の取引では、購入時手数料や信託報酬などの手数料、税金がかかりますが、今回の試算ではこれらを考慮していません。
10年前に積立投資をしたケースで考えてみましょう。期間は近年の金価格高騰を含む2016年6月から2026年5月です。この期間の金価格(円換算ベース)は概ね右肩上がりで推移し、2025年以降にその上昇ペースが一段と加速しました。金価格高騰の背景には、第2次トランプ政権の政策に対する不透明感や中央銀行による金買い需要の高まりなどが要因となった可能性があります。その後、中東情勢の影響による原油価格高騰を受けて、金価格は下落基調となりました。インフレ懸念から米国の金利が上昇したことで、金利のつかない金の投資妙味が相対的に低下していることなどが意識されたと見られます。
(注)データは月次で、2016年6月末から2026年5月末までの間。2016年6月末を100として指数化している。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
このような局面で、金価格に連動する架空の投資信託に毎月5万円を積立投資した場合、 2026年5月末時点の評価額は2,113万円、積立総額(600万円)の約3.5倍となりました。2024年6月末に評価額が1,000万円を超えた後、2026年1月には2,000万円台に到達しました。本試算では、対象指標である金価格(円換算ベース)の上昇が評価額を押し上げる結果となりました。
(注)データは月次で、直近値は2026年5月末。金価格は、ロンドン市場金価格(米ドル)にその時点の為替をかけた円ベースで試算している。積立投資開始期間は2016年6月末からで、毎月5万円ずつ積み立てた場合のシミュレーション。手数料・税金等は考慮していない。上記の計算例はあくまでも一定の条件を基に試算した結果であり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではない。積立投資のシミュレーションは計測する期間によってパフォーマンスは異なる。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
加えて、円安進行も影響したとみられます。ドル建てと円換算ベースの金価格を比較すると、ドル建ての金価格は10年間で約3.4倍になった一方、円換算ベースは約5.3倍となりました。この間、ドル円相場は1米ドル=103円台から159円台へと円安方向に進んでおり、円換算ベースの金価格の上昇を後押ししました。
金融危機が相次いだ10年間の積立投資のシミュレーション
参考として、2006年6月から2016年5月までの10年間についても試算します。この期間の金価格(円換算ベース)を振り返ると、2008年のリーマンショックで急落した後、FRBによる金融緩和や欧州債務危機を背景に、「安全資産」とされる金が相対的に選好される場面がありました。同時に「有事の円買い」の需要などから円高が進み、ドル建てと円換算ベースの金価格の差が広がりました。その後、2012年12月に第2次安倍政権が始動すると、「アベノミクス」を背景に円高から円安方向へ動いたことで、円換算ベースの金価格がドル建てをアウトパフォームする場面もありました。
(注)データは月次で、2006年6月末から2016年5月末までの間。2006年6月末を100として指数化している。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
このような局面で積立投資を行った場合、2016年5月末時点の評価額は743万円、積立総額に対する上昇率は24%となりました。今回はドル建ての金価格の下落を円安がある程度、打ち消した影響が評価額に反映された可能性があります。米ドル建てのLBMA金価格は、2011年8月末に試算期間内の最高値(月次ベース)となる1,813.5米ドル/トロイオンスを付けた後、2013年以降はFRBの量的緩和縮小観測から、概ね下落基調で推移しました。2016年5月末の試算終了時点では最高値から33%下落しました。その間、米ドル円相場は月次ベースで、試算開始時の114円台から一時76円台まで円高が進行しましたが、最終的には110円台の水準まで戻りました。
(注)データは月次で、直近値は2016年5月末。金価格は、ロンドン市場金価格(米ドル)にその時点の為替をかけた円ベースで試算している。積立投資開始期間は2006年6月末からで、毎月5万円ずつ積み立てた場合のシミュレーション。手数料・税金等は考慮していない。上記の計算例はあくまでも一定の条件を基に試算した結果であり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではない。積立投資のシミュレーションは計測する期間によってパフォーマンスは異なる。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
今回の2つのシミュレーションでは、いずれも試算終了時点の評価額はプラスとなりました。両期間とも円安が評価額を押し上げる要因となりましたが、逆に円高が進む局面では下落要因となる点には注意が必要です。
過去20年間を振り返ると、マーケットは金融危機やコロナ禍、世界で起きる紛争など、さまざまなショックに直面してきました。将来の危機を予想することは難しいですが、有事に備える手段の1つとして、長期にわたって金への積立投資を続けることは、リスクヘッジになるかもしれません。
- 野村證券 投資情報部
松田 知紗 - 2003年野村證券入社、営業店にて約18年に渡り個人営業に従事。2021年新規プロジェクト立ち上げのため本社部署より新会社へ出向。YouTubeなど動画コンテンツの作成やマーケティング業務を行う。2025年より投資情報部。資産運用アプリ「NOMURA」、野村独自の情報を発信するオウンドメディア「NOMURA ウェルスタイル」の企画・記事制作チームに所属。
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