2026.06.25 NEW

コーポレートガバナンス改革「最終章」 日本株にまだ上昇の余地があると考える理由 野村資本市場研究所・西山賢吾

コーポレートガバナンス改革「最終章」 日本株にまだ上昇の余地があると考える理由 野村資本市場研究所・西山賢吾のイメージ

写真/北原裕司(人物)

日本の成長戦略の柱の1つであるコーポレートガバナンス(企業統治、CG)改革で、指針となるCGコードの改訂が進められています。改革の目標を達成できれば日本企業の「稼ぐ力」の改善が進み、日本株の魅力を高める可能性があると期待されています。野村資本市場研究所主任研究員の西山賢吾が詳しく解説します。

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CGコードはスリム化、改革の実効性に重点

CGコードとは何でしょうか。また、どのような改訂となりますか。

CGコードは、上場企業(及びその取締役〔会〕)の行動原則であり、2015年に制定されました。今回は2018年、2021年に続く第三次改訂に当たり、2026年7月までに実施される見通しです。上場企業は改訂内容を踏まえた「コーポレートガバナンス報告書」を1年後の2027年7月末までに証券取引所に提出することが求められます。

今回の改訂は、CG改革が目標とする持続的な成長と中長期的な企業価値向上を真の意味で実現するため、CG改革を形式的な対応から実効性を伴うものへと「実質化」することに重点が置かれている点が特徴です。コードの改訂案に新設された序文の中で、内容を再整理して「プリンシプル化」・「スリム化」を行ったことに言及しています。

具体的には、現行の「基本原則」や「原則」の数を減らし、新たな「解釈指針」などへ再整理されます。結果として、企業がコードの内容を受け入れてそれに従って行動するか(コンプライ)、あるいは他の施策の方が望ましいとして受け入れず、その理由(自分たちの施策の方が企業価値向上に資すること)を説明するか(エクスプレイン)の選択を求められる「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象項目は83個から30個に大きく減少しました。

CGコード構成の変更

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(注)基本原則、原則、補充原則はコンプライ・オア・エクスプレインの対象、考え方、解釈指針は対象外。
(出所)「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」(令和7年度第2回、2026年2月26日開催)事務局説明を基に野村資本市場研究所作成

CG改革は、目標達成の結果を問われるフェーズに入り、「リターン(投資収益)向上」の実践及びそのための行動を強く意識した議論が進展することが望まれます。

ROEは改善途上、日本株に恩恵の可能性

日本企業にとって、どのような点がメリットになりそうでしょうか。

今回のCGコード改訂の主要項目として、まず経営資源の配分が挙げられます。CG改革はこれまで一定の成果を上げたと考えていますが、一方で、引き続き取り組む必要のあるものとしてROE(自己資本利益率)、つまり稼ぐ力の伸び悩みと、企業のバランスシートにおける現預金の積み上がりがあります。

このため、改訂案の原則には、取締役会が自社の経営資源の配分が、成長の実現を目指して策定・公表した経営戦略や経営計画に照らし適切なものとなっているかについて不断に検証を行うことが記載されました。さらに、同原則の解釈指針において、現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべきという記載も追加されました。

主要企業のROEは10%近辺にはあるものの、10%超えの水準はなかなか定着せず、グローバルで比較すると見劣りしています。数値だけが全てではありませんが、日本企業のROE10%超えが定着するようになれば、CG改革の1つの目標を達成したということになると考えています。日本企業の稼ぐ力は改善の途上にあり、CG改革を通じて、経営資源を有効活用していくことがカギとなります。稼ぐ力の向上により日本株の魅力が増せば、投資家層の拡大や株価の押し上げといった恩恵を受けることも期待できるでしょう。

他にも注目すべきポイントはありますか。

人材を資本として捉える「人的資本」への投資、適切な配分などを例示し、解釈指針に記載しています。人的資本についてはCGコード以外に有価証券報告書での記載も拡充されており、企業価値向上において重要な役割を持つものとして位置付けられた印象です。日本においては、人口減少や少子高齢化に伴う人手不足への対応が課題となっており、企業の成長戦略の中で、いかに良い人材を確保するかという人的資本の視点がより重要性を増していくと考えられます。

投資家・企業とも「リターン向上」を求めるフェーズに

CG改革にはどのような成果が求められていくのでしょうか。

日本においては、少数株主である純投資家の意見が企業に反映されにくいことが問題点の1つとされ、CG改革が進められてきました。その結果、企業同士が相互に株式を保有する「株式持ち合い」の解消や、取引先との関係保持を目的とする「政策保有株式」の圧縮が進みました。

純投資目的の株主の声が企業経営に届きやすくなり、最近は企業買収などで様々な株主の意思決定が企業経営に大きな影響を及ぼすことも出てきています。企業から個人への発信も以前より拡充され、個人投資家の議決権行使を促進する動きもあり、個人の考えが非常に重要になってきています。

これまでのCG改革は一定の成果を上げ、残された課題に対し実質的に対応することで、日本経済の中長期的、持続的な成長につなげるという目標の達成に向けた「最終章」に差し掛かってきました。株主・投資家、企業ともに改革の目標達成という「結果」をより問われるフェーズに入ります。CG改革は成長戦略であるという原点に立ち返れば、CG改革の目標達成のために必要なものは、企業も投資家・株主も「リターン向上」であると言えるでしょう。

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野村資本市場研究所 主任研究員
西山 賢吾
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、(株)野村総合研究所入社。1998年4月、野村證券(株)に転籍。野村證券(株)エクイティ・リサーチ部等を経て、2018年4月より現職。専門分野はESG(環境、社会、コーポレートガバナンス)、株式保有構造。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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