2026.07.03 NEW
「ISM製造業景況感指数」が米国株をみる上で重要 6ヶ月連続で「景気拡大」示す50超え 野村證券・竹綱宏行
撮影/タナカヨシトモ(人物)
世界最大の経済大国である米国においては、世界中の市場関係者が注目するさまざまな経済指標が発表されています。数値の内容や背景を読み解くことで、市場動向の把握や先行き見通しに役立てることができるかもしれません。代表的な米経済指標について、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの竹綱宏行が、米国市場の状況に即して詳しく解説していきます。第1回は「ISM製造業景況感指数」です。
米国の製造業の景況感を示す「ISM製造業景況感指数」
米国は製造業の取引額や市場規模が大きく、その景気動向を世界の市場関係者が注視しています。ISM製造業景況感指数は、全米供給管理協会(ISM)が発表しています。野村證券の証券用語解説集では、下記のように説明されています。
ISM製造業景況感指数(読み:あいえすえむせいぞうぎょうけいきょうかんしすう)
全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)が算出する製造業の景況感を示す指数のひとつ。旧NAPM指数。毎月発表される米国の主要指標の中で最も早い毎月第1営業日に発表され、「ISM非製造業景況感指数(毎月第3営業日発表)」とともに、米国の景気先行指標として注目されている。
製造業(300社以上)の購買・供給管理責任者を対象に、各企業の受注や生産、価格など10項目についてアンケート調査を実施。「良くなっている」、「同じ」、「悪くなっている」の三者択一の回答結果を集計し、季節調整を加えた新規受注・生産・雇用・サプライヤー納期・在庫の5つの指数(サブ指数)をもとに、ISM製造業景況感の総合指数を算出する。
日本銀行が四半期に一度発表する「主要(全国)企業短期経済観測調査(日銀短観)」と類似する統計で、日銀短観がゼロを分岐点とし、+(プラス)、-(マイナス)で表すのに対し、ISM製造業景況感指数は0から100までのパーセンテージで表す。50%を景気の拡大・後退の分岐点とし、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示す。
ISM製造業景況感指数に比べて歴史は浅いものの、主にサービス業の景況感を示すISM非製造業景況感指数もあります。米国の名目GDP(国内総生産)に占める割合は非製造業の方が大きく、同様に注目される経済指標の1つですが、ISM製造業景況感指数の方が景気の転換点を早く反映しやすいため、重視される傾向があります。
なお、報道などでは数値は%が省略されるケースが多いため、コメントでは省略させていただきます。
米国株とISM製造業景況感指数は過去にはある程度連動
投資の観点では、ISM製造業景況感指数は米国株をみる上で重要と考えています。米国株とISM製造業景況感指数はともに、主に景気の先行き予測に使用される「景気先行指標」です。
ISM製造業景況感指数は、特に設備投資の先行指標として知られています。ISM製造業景況感指数の聞き取り調査の対象となる企業は、新規受注や生産が活発な際には、需要の増加に応じて設備投資を行い、生産能力を拡大させます。その結果、売上高などの企業業績が拡大するため、米国株との関連性が高いと考えられます。
(注)見やすさを優先して縦軸を制限している。
(出所)ISM、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
図の、赤色の折れ線グラフで示したISM製造業景況感指数と、灰色の棒グラフで示した米国の代表的な大型株指数であるS&P500の前年同月比の騰落率は、過去には高い相関を示していました。
2022年後半から2025年にかけては、金利負担の増加や大統領選挙後の政策に対する不透明感などが製造業の景況感に悪影響を及ぼした可能性があります。一方、S&P500は、インフレに伴うコスト上昇を価格に転嫁できたことに加え、大手テクノロジー企業を中心とするAI関連の設備投資や利用拡大などによる業績成長を背景に堅調に推移しました。
ISM製造業景況感指数が堅調に推移していることは、企業活動の好調継続を示唆しており、今後の設備投資の拡大につながるとみることもできます。
6月のISM製造業景況感指数は6ヶ月連続50超え
7月1日に発表された2026年6月ISM製造業景況感指数によると、6月の総合指数は53.3と、年初から6ヶ月連続で分岐点の50を超え、景気拡大を示しました。一方で、5月の54.0からやや低下し、市場予想の53.8を下回りました。
総合指数の低下に最も影響したサブ指数はサプライヤー納期指数で、57.4と、前月の60.6から低下しました。サプライヤー納期指数は、景気拡大による需要増加を想定し、50超なら納期の長期化を示唆します。一方、供給制約の改善による納期短縮は指数にマイナスに働きます。イラン情勢を巡るサプライチェーンの混乱の緩和が、総合指数にマイナスに働いた可能性があります。
また、総合指数には組み入れられていない支払価格指数も73.0と上昇圏にあるものの、前月の82.1から大きく低下しました。調査対象企業からは、化学分析、環境・医薬品試験関連の消耗品・サービス購入の増加や、接着剤など石油由来部材の価格上昇がコメントされました。原油・燃料など一部品目の価格低下や、イラン情勢を巡る価格上昇圧力の緩和期待が影響した可能性があります。一方で、一部の調査対象企業は、米国の関税政策の不透明性(ボラティリティー)を懸念材料として挙げました。
新規受注指数と生産指数は低下しましたが、引き続き50を上回って推移しています。雇用指数と在庫指数は改善を示しました。ISMは6月の米製造業活動は前月に比べて拡大ペースがやや鈍化したものの拡大圏にとどまったとコメントしました。
| 単位:%、%ポイント | 2026年 | 前月からの変化 | |
|---|---|---|---|
| 6月 | 5月 | ||
| ISM製造業景況感指数(総合指数) | 53.3 | 54 | -0.7 |
| 新規受注 | 56 | 56.8 | -0.8 |
| 生産 | 52.2 | 54.3 | -2.1 |
| 雇用 | 49.7 | 48.6 | 1.1 |
| サプライヤー納期 | 57.4 | 60.6 | -3.2 |
| 在庫 | 51.4 | 49.9 | 1.5 |
| 顧客在庫 | 42.3 | 42.7 | -0.4 |
| 支払価格 | 73 | 82.1 | -9.1 |
| 受注残 | 50.5 | 52.2 | -1.7 |
| 新規輸出受注 | 48.5 | 50.6 | -2.1 |
| 輸入 | 52.9 | 53 | -0.1 |
(出所)ISMより野村證券投資情報部作成
今後も米国の製造業の景気拡大が続くのかどうかが注目ポイントになりそうです。
- 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
竹綱 宏行 - 1998年野村證券入社。2005年から2015年までニューヨーク、2016年までロンドン駐在(デリバティブモデル開発、デリバティブディーリング、機関投資家営業などに従事)。2019年から2021年に国際金融情報センターに出向(G7マクロ経済とESG金融の分析に従事)。これらの経験を活かし、グローバルな景気動向や政策分析、産業分析を踏まえ、米国株を中心とした投資戦略に関する情報を発信している。CFA協会認定証券アナリスト(米国証券アナリスト)。
※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
- 手数料等およびリスクについて
-
当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
- 株式の手数料等およびリスクについて
-
国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
外国株式(外国ETF、外国預託証券を含む)の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大1.045%(税込み)(売買代金が75万円以下の場合は最大7,810円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。









