2026.08.10 NEW

[対談]どのシナリオでも10年後は日経平均株価が上がると試算する根拠は? フリーアナウンサー・大橋ひろこさん×野村CIOチーフ・ストラテジスト・宮嵜浩

[対談]どのシナリオでも10年後は日経平均株価が上がると試算する根拠は? フリーアナウンサー・大橋ひろこさん×野村CIOチーフ・ストラテジスト・宮嵜浩のイメージ

写真/タナカヨシトモ(人物)

日本株は2026年前半、急ピッチで上昇しました。足元では調整局面を迎えており、年末の株価予想など短期の見通しも気になりますが、中長期ではどのように推移すると予想されるのでしょうか。フリーアナウンサーで個人投資家の大橋ひろこさんと、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングCIOマネジメント部(野村CIO)のチーフ・ストラテジストである宮嵜浩が対談しました。

(この記事は野村證券の対談動画をもとに構成しています。対談動画はこちら。収録日:2026年7月27日 視聴期限:2026年9月15日)

[対談]どのシナリオでも10年後は日経平均株価が上がると試算する根拠は? フリーアナウンサー・大橋ひろこさん×野村CIOチーフ・ストラテジスト・宮嵜浩のイメージ

2035年度の日経平均株価は標準シナリオで11万円超

2026年前半は日本株の上昇の勢いに市場の注目が集まりました。また、野村CIOでは先日、中長期的な日本株の見通しを出されたそうですが、どのような試算結果になったのでしょうか。大橋さんには個人投資家の視点で関心のあるテーマを聞かせていただきたいです。

大橋ひろこさん(以下、大橋)

今回は10年後の日本株市場が一体どうなっているのか、日本株の長期展望についてお話を伺います。

宮嵜浩(以下、宮嵜)

ここ1年、株式相場は特に日本株の上昇ペースが非常に早く、多くの投資家の方が株式の先行きに対して期待を込めて、どこまで上がっていくのか関心が高まっています。

大橋

2026年は、日経平均株価が一時72,000円台まで到達しました。まず、10年後の株価予想ということで、2035年度までの日経平均株価の試算ということですが…

宮嵜

2025年にも日経平均株価の長期試算を実施していたのですが、予想よりもかなり速いペースで上昇したことを踏まえて、長期試算をアップデートすることにしました。

2026年7月時点で、メインシナリオは110,448円。2025年当時の高成長実現シナリオを今回の標準シナリオということにしました。慎重シナリオは91,554円ですが、前回の標準シナリオに則ったファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から導かれた2035年度の水準ということですので、現在の株価水準よりはいずれも高いです。高成長実現シナリオはかなり高い成長が想定され146,142円になっています。基本的な考え方としては、ファンダメンタルズからEPS(1株当たり利益)を予想し、妥当なPER(株価収益率)を出し、それを踏まえて10年後の株価水準を出す枠組みです。

2035年度までの日経平均株価の試算

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(注)2026~2028年度の日経平均株価は、野村證券のトップダウン予想(2028年度は2028年末、2026年7月14日時点)。2029年度以降の日経平均予想EPS成長率は内閣府の試算とIMF予想を用いたNFRCによる試算。来期予想PERは慎重シナリオ15倍、標準シナリオ17倍、高成長実現シナリオ18倍として試算。
(出所)日本経済新聞社、内閣府、IMFより野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成

大橋

日本のファンダメンタルズ、経済成長はどのようなシナリオが描けるのでしょうか。

宮嵜

今回、ファンダメンタルズの前提としているのは、今後10年間の日本経済の成長については内閣府が算出している中長期試算(2026年1月)で出されている実質GDP(国内総生産)成長率をベースの1つにしています。ただ、実際には日本企業はグローバルに活動しており、日本経済の成長だけでなく米国や新興国も含めた世界の成長を取り込んで業績を上げてきています。

そこで、日本企業がどれだけ海外で売上を上げているのかというところと、海外でどの程度成長しているのかという、2つの要因をEPSの予想成長率に加味する必要があります。日本企業の海外売上高比率は40%を超えています。3%台半ばぐらいの海外での成長率と海外売上高比率を加算し、日本企業全体のEPS成長率を算出します。

また、自社株買いによってEPS成長率は年平均で2.0%程度押し上げられます。こうした要因も含めると、標準シナリオのEPS成長率がプラス6.8%、慎重シナリオが6.1%程度となります。

大橋

それでも成長が続く背景には、経済成長とインフレが関係しているのでしょうか。

宮嵜

実質GDP成長率に加えて物価上昇率、つまりインフレ率を加味しますので、仮に実質ベースではゼロに近い成長であっても、物価が上がっていれば企業の売上単価も上がっていきますので、EPS成長率は物価上昇率分、上乗せされます。

世界の1人当たり実質GDP成長率

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(注)人口増加率と実質GDP成長率により算出。網掛け部分は予測値。
(出所)IMFより野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング作成

大橋

単純なインフレだけではなく、企業の稼ぐ力も相まってというのが理想的ですね。

宮嵜

14万円を突破するという高成長実現シナリオについては、実質GDPは使っておらず、あくまでここ最近の非常に高いEPSの伸びや東京証券取引所の改革要請を踏まえ、EPS成長率9.5%程度の高成長を想定して試算したものです。足元でAI・半導体関連銘柄は値動きがやや不安定になっていますが、そういった不透明感を乗り越えて、また近年の高い成長が続いていくというかなり楽観的なシナリオです。

成長投資や企業の株主還元拡充でPER18倍の高成長実現も

大橋

PERはどの程度で試算されているのでしょうか。

宮嵜

標準ケースはPER17倍、慎重シナリオ15倍です。この15倍というのが、過去の平均的なPERの水準です。最近は特にTOPIX(東証株価指数)に比べると日経平均株価のPERが高くなっていました。日経平均株価という指数自体がAI・半導体の影響を受けやすく、その成長期待がPERに反映されてきたということですね。今回は過去の平均的な動きに加えて、長期金利とEPSの成長期待によってどれほどPERが変動するかというのも考慮した結果、標準シナリオでは、金利は上昇するとしても成長期待が上回ることで17倍になるという想定をしています。

大橋

PERは今年、AI・半導体相場で大きく上振れしましたけれども、米国に比べると日本は少し低めですね。

宮嵜

ご指摘のとおり日本の株価と米国の株価、PERを比較すると、米国の代表的な株価指数であるS&P500とナスダックに対して、日経平均株価とTOPIXは明らかに低いです。この大きな違いの1つにリスク許容度があります。日本の個人投資家の保有している金融資産に占める株式の割合は10%強しかありませんが、米国は40%程度あります。それだけ株に対して抵抗感がないということです。米国は経済成長率も高く、投資家が株式投資に積極的であるため、先行きの成長期待がPERに反映されやすいという面があります。

大橋

日本もこの米国型のPERに到達するためには、もう少し個人投資家の層が厚みを増す必要がありそうですか。

宮嵜

NISA(少額投資非課税制度)の普及などもあり、ひところに比べるとかなり日本の投資家も株式投資に積極的になってきていますし、日本政府もこれから積極的に投資家に株式投資などを推進していくような方向性を示しています。直近の2026年6月のPERは、日米の格差が若干縮まってきています。今回想定している高成長実現シナリオでは、PER18倍としています。それこそ米国に近づくような形でPERが高い水準を維持していく。そして、高いEPS成長率が持続することを一つのシナリオとして想定しています。

大橋

2026年前半は日経平均株価があまりに急ピッチで上がったため、バブルの記憶がある方から見ると、これが天井でだらだら下がり続けてしまうのではないかとの警戒感もあるかと思いますが、慎重シナリオで見ても2035年度の9万円に向けて株価は上がっていくという予想ですね。

宮嵜

短期的に見れば経済は良くなったり悪くなったりしますから、先行き10年の間に今の水準から下がることもあるかもしれません。ただ、長い目で見ると物価が上がっていくという状況に日本経済が変わってきています。それはすなわち売上高が物価上昇率分、上乗せされています。企業が株主還元、自社株買いを積極化するスタンスに今後変わりはないと見ておりますので、一番低い慎重シナリオでも成長率は徐々に水準を切り上げていくという見方ができると思います。

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大橋

高成長実現シナリオに向けて1%を超えるような成長にするため、高市早苗政権の施策はどうでしょうか。

宮嵜

高市政権は、短期的な景気対策よりも中長期的な成長力の底上げを重視し、370兆円の官民投資を推進していこうとしています。17分野にターゲットを絞って成長させていこうというスタンスは、まさに潜在成長率を現状のゼロ%台から、いかに1%超へ引き上げるか。そういう政策がうまくいけば、標準シナリオのようなパターンになりますし、ずっと景気後退をすることがなければ高成長実現シナリオになっていくという見方ができます。

大橋

10年も経つと紆余曲折もありそうです。過去にもコロナショックやリーマン・ショックもありました。ショックというのを現時点で想定するのは難しいですね。

宮嵜

今、景気拡大局面がかなり長く続いていますが、長い目で見ると、日本の景気はおおむね5年で1サイクルです。通常であれば、5年間に1度は景気が後退して株価が急落する局面があり、その後、再び回復するというサイクルを繰り返します。今回の日経平均株価の試算では緩やかな上昇を見込んでいますが、景気が良くも悪くもない状況が続けば、平均すると標準シナリオで11万円になるということです。実際には、この先10年間に1度は景気後退があるかもしれないということですね。

大橋

景気後退というと、日本でも米国でも到来が予想されながら、なかなか景気後退には至らず、景気拡大が続いています。

宮嵜

米国の景気後退はおおむね10年に1度です。今後10年間に世界同時不況が1度起こり、さらに日本独自の景気後退も1度起こる可能性があるという前提で見ておいた方が良いと思います。ただ、長い目で見ると、日本はデフレから脱却したことが大きな変化です。物価上昇が販売価格に反映され、売上や利益を押し上げていくと考えれば、景気変動をならした株価水準は、慎重シナリオであっても10年後には9万円に到達するだろうとみています。

企業価値向上で魅力増す日本株、国債とともに分散投資も一手

宮嵜

景気後退や株価下落が2~3年続くことはあまりなく、短ければ半年、長くても1年強です。その間に株価が下落したからといって、いったん株式投資をやめてしまうと、その後の反転局面を捉え損ねることがあります。また、株式の配当など、金融商品を保有することで得られるインカムゲインを再投資し、収益を積み上げる機会も逃しかねません。

今回の長期試算で示した水準を念頭に置き、株価の下落局面でも、必要に応じて株式のウェイトを引き下げたり、保有銘柄を見直したりすることはあっても、完全に手放すのではなく、できるだけ長く保有することで、長期投資のメリットを享受していただきたいと思います。

大橋

景気後退が来て株が下がったからといって、全部手放すということはしない方が良い、ということですね。慎重シナリオでも9万円という高い水準であれば、日本株を持っておいた方が良さそうかと思います。ポートフォリオの中でどれくらいの割合で日本株を持ったら良いのでしょうか(ポートフォリオで日本株をどの程度持てば良いか—は動画もぜひご覧ください)。

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宮嵜

日本株の適切な保有割合は、投資家によって異なります。投資に対するリスク許容度や目標収益、投資期間は、投資家の皆様一人ひとりで異なるため、一概には言えません。ただ、私たちは、株式だけではなく国内外の債券やREIT(不動産投資信託)を含めた様々な資産を組み合わせたポートフォリオを長期的に保有することをお勧めしています。

その中で、リスクに慎重な方とリスクを積極的に取っていくという方に向けて様々なモデルポートフォリオを出していますが、現時点で、一番慎重なケースで日本株の割合は5%程度です。一番高いところでも20%程度というのが現状です。標準的なのはその真ん中辺りですから、10%台前半ということになります。幅広い資産に分散投資して長期保有する場合、現時点では、それが日本株の保有比率としてバランスの良い水準だと考えています。

大橋

やはり日本株は米国株と比べて、バリュエーションの面でもまだまだ魅力的です。外国人投資家から見ても日本株の魅力は高いのでしょうか。

宮嵜

東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」への改革要請をしたことが大きなきっかけとなり、結果的に著名投資家ウォーレン・バフェット氏の日本株買いにもつながったと思います。資本市場から企業の成長を促していく流れは、やはり海外投資家から見ても非常に魅力的な投資先と映るのではないでしょうか。

大橋

私たち個人投資家もポートフォリオの中に10%程度、日本株を加えておくと、先々、株価はインフレとともに成長していくのではないかということです。金利も上がっていますが、日本国債についてはどう考えたら良いでしょうか。

宮嵜

日本国債は非常に金利が低い状況から変化し、ようやくその利回りが、日本株の配当利回りにほぼ並ぶ、あるいは上回る水準になってきています。今後の株式相場の動向にもよりますが、株式投資に対して不安を感じている投資家にとって、国債は株式と比べて相対的に値動きが小さく、利子収入を得られることから、有力な投資先として今注目されているのだと思います。

大橋

日本国債も投資の選択肢になってきたということですが、ポートフォリオを組む際には、米国株や日本株、日本国債など、複数の資産に分散して投資することが重要なのでしょうか。

宮嵜

そうですね。ずっと景気が良いのであれば株を持っておくと一番投資パフォーマンスは良いのですが、おおむね5年に1度は景気が後退して株価は調整します。長く景気拡大が続いた後に株価が下がってしまうと、投資家が受ける心理的な影響も大きくなりがちです。そういったショックや不安感を軽減する意味でも、あらかじめ債券を組み入れておけば、株価が下落しても自分の持っている資産はそれほど大きく下がらない。一方で、配当や利子収入が入ってくるという意味では、安心感を持って長期投資ができるというメリットがありますね。

大橋

10年先を見据える上では、分散しながらポートフォリオを構築していくのが重要ということですね。ありがとうございました。

※本記事で取り上げられた大橋氏のマーケットや投資に関する考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。本記事の内容等は野村證券において確認したものではなく、また、将来変更される場合があります。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

[対談]どのシナリオでも10年後は日経平均株価が上がると試算する根拠は? フリーアナウンサー・大橋ひろこさん×野村CIOチーフ・ストラテジスト・宮嵜浩のイメージ
個人投資家、フリーアナウンサー
大橋 ひろこさん
アナウンサーとして経済番組を担当したことをきっかけに自身も投資をスタート。現在は幅広い投資活動のほか、経済講演会のモデレーターとしても活躍。ラジオNIKKEI「マーケット・トレンドDX」、「大橋ひろこ×水谷隼のマーケット・ウィニングショット」、WEB動画「なるほど投資ゼミナール」などのレギュラー番組多数。近著に『無敵の日本経済! 株とゴールドの「先読み」投資術』(エミン・ユルマズ氏との共著)。
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野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング CIOマネジメント部チーフ・ストラテジスト
宮嵜 浩
1994年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、2001年中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。1994年に山一証券へ入社。その後、富士通総研、三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、しんきんアセットマネジメントチーフエコノミスト、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所シニアエコノミスト、みずほリサーチ&テクノロジーズ主席エコノミスト、伊藤忠総研マクロ経済センター長兼主席研究員として国内外のマクロ経済やマーケットの調査・分析に従事。
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