2026.08.13 NEW
NISAにはないメリットも
DC(確定拠出年金)はどう活用すべき? 年齢に応じて使い分けてみよう 浦田経営金融ラボ・浦田春河さん
撮影/タナカヨシトモ(人物)
定年退職後の資金づくりを目的とした確定拠出年金(DC)。積み立てた資産は原則として60歳以降でないと受け取れないため、NISA(少額投資非課税制度)と比べて「使い勝手が今ひとつ」と思われるかもしれません。しかし、DCはNISAにないメリットもあり、資産形成に活用できる大変便利な制度です。DC創設期からこの分野に関わっている専門家、浦田経営金融ラボ代表の浦田春河さんに、DCで資産形成する際の注意点やNISAとDCの違い、使い分け方などを聞きました。
年々増えるDC加入者、気付かずに運用し続けているケースも
- DCの加入者は増えているのでしょうか。
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DCは大きく分けて、主に企業が掛金を拠出する「企業型DC」と、個人が掛金を拠出する「iDeCo(個人型DC)」の2種類あります。いずれも加入者は増えており、厚生労働省によると、2026年3月末時点の加入者数は企業型DCが約893万人、iDeCoは約393万人でした。2025年12月時点のNISA口座数(約2,821万、金融庁調べ)と比べて少ないものの、毎年着実に加入者は増えています。
(注)企業型DCとiDeCoに同時加入する人もいるが、それぞれで計算。
(出所)厚生労働省「確定拠出年金制度の現状等」等を基に浦田経営金融ラボ作成
- 定年退職後に向けて備える意識が高まっているのでしょうか。
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老後の資金づくりのために、DCを活用する機運は高まっています。しかし、全員が積極的かというと、そうとは言い切れません。
浦田経営金融ラボと確定拠出年金・調査広報研究所は2025年9月、全国の3万6,000人を対象としたアンケート調査「確定拠出年金3万6000人調査」を実施しました。加入者のうち「元本確保型商品(定期預金、保険商品など)のみで運用している」と回答した割合は、企業型DC、iDeCoとも17%でした。その理由を聞くと「資産が減るのが嫌だから」、「預金や保険の方が安心できるから」、「何で運用をすればよいか分からないから」との答えが目立ちました。こうした回答は20~29歳の若年層にも多くみられました。
また、企業型DCに関しては勤め先が福利厚生制度として導入しており、自分が自動的に加入していることに気づかず、運用先を指定しない場合の「指定運用方法」(デフォルト商品)のひとつである元本確保型商品などに資産が置かれているケースもあるかもしれません。
(出所)「確定拠出年金3万6000人調査」より浦田経営金融ラボ作成
(出所)「確定拠出年金3万6000人調査」より浦田経営金融ラボ作成
「元本確保型」はインフレで目減りするリスク、代替候補は?
- 元本確保型商品だけでは不十分なのでしょうか。
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企業型DCもiDeCoも自分が拠出した掛金は所得控除の対象となり、所得税と住民税の負担が軽減されます。そのため、税制優遇メリットだけを享受したい場合は、元本確保型商品を選択するのもよいでしょう。定年退職が目前に迫っていて運用資産の目減りを防ぎたい人にも、元本確保型商品は適しています。
しかし企業型DCやiDeCoを何十年も先の定年退職後を見据えた資産形成の手段として考えている場合は、元本確保型商品だけでは、心もとないと言えます。
その理由はインフレです。最近では金利上昇により、元本確保型商品の保証利率は少しずつ上昇しています。一方でモノの値段はそれ以上に上がっており、インフレ分を加味すると、運用資産が実質的に目減りするリスクがあります。老後に備えて十分な資金を確保したいのであれば、インフレ率を上回る利回りで運用することが大切です。
毎月3万円を掛金として拠出し、(1)現金で保有した場合、(2)元本確保型商品だけで運用を続けた場合、(3)バランス・ファンドで運用を続けた場合、の3つのケースについて、30年後の実質的な資産価値を試算し、以下に示しました。
※バランス・ファンドとは株式や債券など複数の資産クラスに分散投資するファンドのこと前提条件(いずれも30年間変化しないと想定)
・現金の利回り0%
・元本確保型商品の保証利率1.5%
・バランス・ファンドの利回り4.5%
・インフレ率1.5%
・毎月3万円を月末に積み立て、各商品の実質利回りを月次換算して30年間運用したものとして試算(投資元本は合計1,080万円)
| 運用方法 | 実質利回り | 30年後の実質価値概算 |
|---|---|---|
| (1)現金 | ▲1.5% | 870万円 |
| (2)元本確保型商品 | 0% | 1,080万円 |
| (3)バランス・ファンド | 3.0% | 1,748万円 |
(注)実質利回りは前提条件にある各運用方法の利回り・保証利率からインフレ率を差し引いて浦田経営金融ラボが計算。 実質価値はインフレ率考慮後の資産価値。※上記は、記載した前提に基づく試算であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではありません。
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結果を見ると、かなりの差が生じることがわかります。企業型DCの加入者でDC口座にログインした記憶があまりないような方は、まずはなるべく早いタイミングで自分の口座を確認し、どんなファンドで運用しているのかを把握することから始めてみましょう。
- 元本確保型商品から運用先を変更する場合、どんなファンドが候補になるでしょうか。
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定年退職まで10年以上ある場合は、運用資産が目減りしたとしても、再び取り戻す時間もあるかもしれません。そのため、株式ファンドで運用して資産を増やすことを目指すと良いかもしれません。そして、定年退職が近付くにつれて少しずつ株式ファンドへの配分割合を減らし、債券ファンドや元本確保型商品の配分割合を高めるようなメンテナンスをしましょう。
DCの主たる運用目的は老後の資産づくりです。取り崩しの時期が近づく中で運用資産が大きく目減りしてしまうと、その後の生活設計にも影響が出ます。そうならないよう、年齢を重ねるにつれてだんだんと「守りの運用」にシフトさせていくイメージです。
ファンド選びに迷う場合は、ターゲット・デート・ファンドという選択肢もあります。ターゲット・デート・ファンドは株式や債券を組み合わせたバランス・ファンドのひとつです。ファンド名の後に「2050」や「2060」といった西暦を表す数字が記載されており、その年に向けて少しずつ株式の比率を下げ、債券の比率を上げていく仕組みになっています。ファンドの運用担当者が配分割合を変更するため、自分で配分割合を調整する必要がなく、資産運用の手間を省きたい人に向いています。ご自身のおおよその退職時期に近い西暦のファンドを選ぶとよいでしょう。
米国のDCではデフォルト商品としてターゲット・デート・ファンドを設定するのが一般的です。
気をつけたい、分散投資した「つもり」
- 自分でファンドを選ぶ場合に、注意すべき点はありますか。
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最も注意すべき点は、分散投資した「つもり」にならないことです。分散投資は長期的な資産形成に欠かせない運用手法ですが、加入者の中には「複数のファンドを選んでおけば、分散投資になる」と誤解している人もいます。「分散投資」したつもりでも「重複投資」になっているケースもあるので、注意が必要です。
「確定拠出年金3万6000人調査」では、2種類以上のファンドで運用しているDC加入者がどんなファンドを組み合わせているか、尋ねています。それによると、同種の株式に投資するアクティブ・ファンドとパッシブ・ファンド(インデックス・ファンド)の両方に投資していたり、バランス・ファンドに国内株式のインデックス・ファンドや外国株式のインデックス・ファンドをトッピングしていたりする例がありました。
※アクティブ・ファンドは市場平均(指数)以上の利益を追求したり、市場平均以下にリスクを抑えたりすることを目指して運用するファンド、パッシブ・ファンド(インデックス・ファンド)は対象の指数に連動する投資成果を目指して運用するファンド。例えば「日本株式アクティブ・ファンド」と「日本株式インデックス・ファンド」にそれぞれ50%ずつ配分していた場合、分散投資といえるでしょうか。この2本のファンドは名前こそ違うものの、いずれも日本株式に投資していることには変わりありません。日本の株式市場で株価が大きく値下がりするショックが起きた場合は、両方のファンドが値下がりするかもしれません。
株式ファンドとバランス・ファンドを組み合わせて運用すれば問題ないでしょうか。そんなことはありません。バランス・ファンドは株式や債券など複数の資産クラスを組み合わせたファンドです。つまり株式が含まれるため、さらに株式のリスクが上乗せされることになります。
(注)グラフの数値は回答者の割合。左は投信だけでなく元本確保型商品も同時に選択している人の選択例、右は投信だけで運用している人の選択例。
(出所)「確定拠出年金3万6000人調査」より浦田経営金融ラボ作成
(注)グラフの数値は回答者の割合。左は投信だけでなく元本確保型商品も同時に選択している人の選択例、右は投信だけで運用している人の選択例。
(出所)「確定拠出年金3万6000人調査」より浦田経営金融ラボ作成
- それぞれのファンドの投資先や特徴などをしっかりとチェックすることが大切ですね。
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はい。分散投資の基本は、国内株式(日本株式)や外国株式、国内債券、外国債券などリスク・リターン特性の異なる資産クラスに資産を分けることで、特定の資産に配分割合が偏りすぎないようにすることです。
しかし、いざ分散投資をしようと思っても、ファンドがずらっと並ぶ中でどれを選べば良いのか、一見して分かりにくい可能性もあります。
厚生労働省などによると、運用商品の平均本数は、企業型DCが22.1本、iDeCoは21.3本です(2024年度時点。ただし、ターゲット・デート・ファンドのシリーズは1本として計算)。ひとつひとつのファンドの特色は異なりますが、中には「日本株式インデックス・ファンドA」「日本株式インデックス・ファンドB」など似たファンドがいくつも並んでいるケースも、ゼロではありません。
そのため、少し手間かもしれませんが、「このファンドとあのファンドは何が違うんだろう。いろいろ組み合わせてみたけれどきちんと分散投資できているのかな」と、少し立ち止まって考えてみることが大切です。
NISAとどう使い分ける?
- 「資産形成はNISAで十分」と考える人も少なくないようです。NISAとDCはどう使い分ければ良いでしょうか。
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余裕があれば両方利用するのが望ましいのですが、あえてどちらかを優先する場合は、年齢に応じて2つの制度を使い分ける方法があります。
NISAは所得控除のメリットがないものの、必要な時に現金化できる柔軟性がある(もちろん、現金化のタイミングで元本を下回っている可能性があることには注意が必要です)ため、お金がかかるライフイベントの多い世代に向いています。DCは資産を利用できるタイミングが原則60歳以降で柔軟性には欠けるものの、所得控除によって翌年の所得税や住民税の負担を減らせるメリットがあり、この点においては収入が多い人ほどお得です。一般的には年齢を重ねて所得が高くなるほどメリットは大きくなるでしょう。
つまり、収入がまだそれほど高くなく所得控除の恩恵を十分に受けにくい一方で、結婚・教育・自宅購入などお金がかかるライフイベントも控える若年層はNISAを積極的に活用し、自分の老後に少しずつ意識が向かう年齢に差し掛かった頃にDCでの運用資金を増やす、という方法が選択肢として考えられます。
2026年12月からは企業型DCやiDeCoの拠出限度額が引き上げられます。また、50歳以上を対象に追加の拠出枠を設ける「キャッチアップ拠出」の導入に関する議論も始まっています。一方で2027年1月からは「こどもNISA」も始まるため、こうした使い分けがますます有効になるかもしれません。
長期的な資産形成にNISAが有効なのは間違いありませんが、NISAにはないメリットを持つDCも、定年退職後の資金づくりには欠かせない優れた制度です。ぜひ有効活用し、豊かな老後を実現してください。
- 浦田経営金融ラボ代表
浦田 春河(うらた・はるか)さん - 1990年代半ばにアメリカで401(k)プランの販売・マーケティングを担当。1998年「401(k)プラン-アメリカの確定拠出年金のすべて」(東洋経済新報社)を執筆。わが国の確定拠出年金制度の創設にあたり理論・実務の両面からサポートし、その後も提言活動を継続。運営管理機関、コンサルティング会社、資産運用会社を経て、2024年浦田経営金融ラボ合同会社を設立。日米の確定拠出年金に関する情報発信や日本人の金融経済活動のリサーチを展開。行政機関、金融機関、マスコミ等にも情報提供。東京大学法学部卒、ニューヨーク大学経営大学院卒(MBA)。中小企業診断士、日本証券アナリスト協会検定会員、J-FLEC 金融経済教育推進機構認定アドバイザー。
※本コラムで取り上げられたマーケットや投資に関する考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。本コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
- 手数料等およびリスクについて
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当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
- NISAのご利用にあたり、ご留意いただきたい事項
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- 日本にお住まいの18歳以上の方(NISAをご利用になる年の1月1日現在で18歳以上の方)が対象です。
- すべての金融機関を通じて、同一年内におひとり様1口座に限り利用することができます。
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- 年間投資枠はつみたて投資枠は120万円、成長投資枠は240万円です。また非課税保有限度額(総枠)は、成長投資枠・つみたて投資枠合わせて1,800万円、そのうち成長投資枠は最大で1,200万円までとなります。なお、非課税保有限度額については、NISA口座で上場株式等を売却した場合、当該売却した上場株式等が費消していた分だけ非課税保有額(NISA口座で保有する上場株式等の残高)が減少し、その翌年以降の年間投資枠の範囲内で再利用することができます。
- NISA預りに係る配当金等や売却損益等と、特定預り、一般預りとの損益通算はできません。また、NISA預りの売却損は税務上ないものとみなされ、繰越控除はできません。
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- つみたて投資枠を利用した投資信託のお取引について
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購入時手数料はございません。なお、換金時には基準価額に対して最大2.0%の信託財産留保額を、投資信託の保有期間中には信託財産の純資産総額に対する運用管理費用(信託報酬)(最大1.65%(税込み・年率))等の諸経費をご負担いただく場合があります。
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該資産の価格や為替の変動等により基準価額が変動することから、損失が生じるおそれがあります。個別の投資信託ごとに費用やリスクの内容や性質が異なりますので、ご投資にあたっては目論見書や契約締結前交付書面をよくお読みください。
- iDeCoへの加入にあたってのご留意事項
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- 加入し、掛金を拠出できるのは65歳未満の国民年金の被保険者の方です。
- 確定拠出年金制度で積み立てた資産は、原則60歳になるまで引き出すことができません。
- 個人型確定拠出年金は、1人1口座が原則です(複数の金融機関を通じて加入することはできません)。
- 60歳到達時点で通算加入者等期間が10年未満の場合、期間に応じて受給開始可能年齢が61歳~65歳に繰り下がります(通算加入者等期間を有しない60歳以上の加入者の方の受給開始は加入から5年経過した日以後となります)。
- 将来の受取額は運用成果によって決まりますので、良かった場合も悪かった場合もご自身の受取額に反映されます。
- 加入から受け取りまで、所定の手数料がかかります。
- 掛金は「毎月定額」以外に「掛金額、拠出月を指定」することが可能ですが、一定の制約があります。
- 野村のiDeCoへの加入にあたってのご注意
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