2026.08.27 NEW

【税理士試算】 2027年から貸付用不動産の相続税評価が見直しに 賃貸マンション相続時の税負担はどのくらい増える?

【税理士試算】 2027年から貸付用不動産の相続税評価が見直しに 賃貸マンション相続時の税負担はどのくらい増える?のイメージ

撮影/齋藤大輔(人物)

2027年1月から貸付用不動産を相続する際の評価方法が変わります。相続対策の一環で、賃貸用マンションやアパートの購入を考えている方もいるかもしれませんが、制度が改正されると、相続時の税負担はどう変わるのでしょうか。税理士法人大手町トラストの川畑信之税理士がモデル家庭のシミュレーションも用いて、制度改正のポイントなどを解説します。

【税理士試算】 2027年から貸付用不動産の相続税評価が見直しに 賃貸マンション相続時の税負担はどのくらい増える?のイメージ

2027年から貸付用不動産の相続税評価はどう変わるか

資産運用の1つとして、現物不動産を持ち、賃貸収入を得るという方法への関心が高まっています。

そうですね。賃貸用マンションなどを所有していると、定期的な賃貸収入が期待できるだけでなく、相続対策としても有効でしょう。現預金や有価証券の相続に比べると、不動産の方が相続税評価額を抑えられるため、富裕層の間でよく知られた相続対策の手法でもあります。ただし、貸付用不動産に関しては、2026年度の税制改正で相続税評価額の評価方法が見直されることになったため、注意が必要です。

税制改正で、主にどのような点が変わることになるのでしょうか。

通常、賃貸用マンション(土地部分)の相続税評価額を算出する際には、国税庁が毎年7月に公表する路線価が用いられていますが、今回の見直しによって、相続開始前5年以内に購入・新築した一定の貸付用不動産については、路線価ではなく、通常の取引価格が適用される時価評価となります。建物部分についても、固定資産税評価額ではなく、時価評価となります。ただし、相続税評価額は100%の時価評価となるわけではなく、貸付用不動産の購入価格の8割程度となる見通しです。2027年1月1日以降に相続、または遺贈で取得する貸付用不動産が対象となります。

評価方法が見直される背景には、当局が過度な租税回避を問題視している点が挙げられます。過去には、相続直前に取得した不動産の市場価格と路線価ベースでの評価額との乖離が大きいケースで、国税当局が例外規定(財産評価基本通達6項)を適用し、裁判所が路線価ベースでの評価額を否認する判決が増えています。今回の評価方法の見直しを受けて、ルールが明確になりました。

制度改正前後で試算、子2人が賃貸マンションと株式・現預金を相続した場合

実際、貸付用不動産を相続する際には、どのような影響があるのでしょうか。

下記のモデル家庭を基に、相続税がいくら変わるかを試算してみたいと思います。

<モデル家庭>
概要:母(80歳)、長男(53歳)、長女(50歳)の3人家族。老人ホームに住む母が亡くなり、2027年1月以降に相続が発生した。マンションの賃貸収入で老人ホームにかかる費用の一部を捻出するため、不動産を購入していた(相続開始5年以内に取得したことを想定)。

母名義の保有資産の内訳:
賃貸マンション相続税評価額4,500万円(土地(貸家建付地)1,500万円、建物(貸家)3,000万円、専有面積70㎡)、上場株式3,000万円、現預金2,000万円。
(※1)賃貸マンションの土地の相続税評価額は路線価ベース。時価評価ベースでは3,000万円。建物の相続税評価額は固定資産税評価額ベース。時価評価ベースでは7,000万円。
(※2)実際の評価額は固定資産税評価額、路線価、敷地権割合、 区分所有補正率、借地権割合等により異なります。

相続時の資産分配:
長男が賃貸マンション、長女が上場株式・現預金(計5,000万円)を相続。

まず現行評価では、長男が相続する賃貸用マンションの土地部分が1,500万円評価で、「小規模宅地等の特例」により、土地の相続税評価額は750万円となります。この特例では、賃貸マンションの土地部分(敷地権)について、限度面積200㎡に対して50%減額されます。建物(3,000万円)と合わせて、賃貸用マンションの相続税評価額は3,750万円です。上場株式・現預金5,000万円を含めた相続財産全体の相続税評価額は8,750万円です。

次に貸付用不動産の評価方法見直し後の試算では、賃貸用マンション土地・建物の時価評価にそれぞれ0.8をかけて、相続税評価額を算出しました。土地の相続税価額は2,400万円で、小規模宅地等の特例を適用すると、1,200万円となりました。建物部分は5,600万円となりました。現行制度よりも相続税評価額が増加しました。その結果、相続財産全体の相続税評価額は1億1,800万円となります。

試算:貸付用不動産の評価方法見直し前後の相続税評価額
(万円)
種類 現行 見直し後
【賃貸用マンション】 3,750 6,800
 (内訳)
 土地 1,500 2,400
 小規模宅地等の減額 -750 -1,200
 建物 3,000 5,600
【上場株式・現預金】 5,000 5,000
合計 8,750 11,800

(注)小規模宅地等の特例を適用。
(出所)大手町トラスト作成

上記の相続税評価額を基に相続税額を試算したものが、下の表です。相続税評価額から子2人の場合の基礎控除額(4,200万円)を差し引いて計算すると、現行制度では582万円(実効税率:6.66%)となりました。評価方法の見直し後では、相続税総額は1,119万円(実効税率:9.49%)となり、現行より537万円増加する試算結果となりました。特に不動産を相続した長男の税負担が大きくなりました。今回のケースでは、相続税負担が増える可能性があることが分かりました。

試算:貸付用不動産の評価方法見直し前後の相続税
(万円)
相続人 現行 見直し後
長男 249 645
長女 332 474
合計 582 1,119

(出所)大手町トラスト作成

基礎控除前の財産総額(相続税評価額ベース)が1億円未満だろうと思っていたら、評価方法が見直されると1億円を超えてしまって、想定していたよりも相続税が増えてしまう、ということが起きる可能性があるのですね。

小規模宅地等の特例が使えないケースも要注意

小規模宅地等の特例による相続税評価額の減額影響がどちらのケースでも大きいですが、この特例が適用されないケースも考えられるでしょうか。

そうですね。今回の試算では、相続開始前5年以内の賃貸マンションの取得を想定しましたが、相続直前に購入した不動産の場合は小規模宅地等の特例が使えない可能性があります。具体的には相続開始前3年以内に賃貸に供された物件は、特例の対象外となります。参考として、貸付用不動産の評価方法の見直しが行われ、かつ小規模宅地等の特例が使えないケースで試算すると、相続税が1,359万円(実効税率:10.46%)、うち長男が支払う金額は836万円となりました。

なるほど。では相続対策として不動産を購入して賃貸に出しても賃貸開始から3年以内に相続が発生した場合、小規模宅地等の特例が使えず、さらに想定よりも相続税が高くなるということも起きそうですね。

税制改正を踏まえ、より早期から相続対策を進めることが重要に

今回の貸付用不動産の評価方法が見直された後も、相続対策として、賃貸マンションやアパートを購入するメリットはあるでしょうか。

相続対策としての効果が全くなくなったわけではないと考えています。2027年1月1日以降、相続開始前5年以内に取得した物件については、購入価格をもとに地価の変動を考慮した金額の80%で評価されるため、市場価格との差は20%程度あります。現預金などをそのまま相続するよりは相続税評価額を抑えられる可能性があります。また、相続開始前5年を超えて取得した物件には、路線価等による評価が適用されるため、これまでよりも早期から対策を進めていくことが重要になります。

【税理士試算】 2027年から貸付用不動産の相続税評価が見直しに 賃貸マンション相続時の税負担はどのくらい増える?のイメージ
大手町トラスト/税理士
川畑信之(かわばた・のぶゆき)
1972年生まれ。東京理科大学理学部卒業。主に証券会社の顧客の相続に関する税務申告、相続対策、事業承継対策(非上場株式等の納税猶予)などを担当している。相続対策や事業承継についてのセミナーも多数行っており、富裕層に対する資産承継や事業承継に関するコンサルティング対応を得意とする。

※本コラムで取り上げられた不動産・相続税に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。本コラムは2026年8月現在の法律に基づいて作成しています。個別の税務の詳細につきましては、税理士等にご相談ください。

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