2026.09.09 NEW

韓国コスメが世界2位に躍進 その背景にある政府の支援策を分析 野村證券・杉本佳美

韓国コスメが世界2位に躍進 その背景にある政府の支援策を分析 野村證券・杉本佳美のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

K-POPや韓国ドラマなど韓国発のカルチャーが世界的に広がっています。韓国発の化粧品は「K-Beauty」と呼ばれ、若年層を中心に人気を集めています。韓国の化粧品産業は、どのように海外市場のシェアを拡大することができたのでしょうか。国内外の化粧品業界に詳しい野村證券フロンティア・リサーチ部のシニア・リサーチャーの杉本佳美が解説します。

韓国コスメが世界2位に躍進 その背景にある政府の支援策を分析 野村證券・杉本佳美のイメージ

中国依存から脱し、グローバルに存在感を高めている韓国化粧品

韓国コスメの広告などを目にする機会が増えているように思います。日本のドラッグストアやコンビニなどでも手軽に購入できますが、世界の化粧品市場において、韓国の存在感は増しているのでしょうか。

韓国化粧品はグローバルにプレゼンスを高めています。韓国政府の発表によると、2025年の韓国の化粧品輸出額が114億米ドルに上り、米国を抜いて世界第2位になりました。2016年からの化粧品輸出額主要8か国における輸出額の推移を見ると、韓国(図表赤線)は概ね右肩上がりで推移し、2025年には日本の約3倍の規模まで拡大しました。

化粧品輸出額主要8国における輸出額の推移(2025年時点上位8国)

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(注)2025年時点の上位8国の推移。
(出所)食品医薬品安全処より野村證券フロンティア・リサーチ部作成

これまで韓国化粧品の輸出先は中国に偏っていましたが、多角化が進んでいます。2025年の輸出金額の国別構成比では、米国向けが首位になりました。また欧州、中東、中南米などが含まれるその他国向けが40%超を占め、輸出先も202カ国に達しました。

韓国の化粧品の輸出金額の国別構成比

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(出所)食品医薬品安全処より野村證券フロンティア・リサーチ部作成

韓国の国策と特徴的な産業構造が海外展開を後押し

なぜ韓国の化粧品産業が世界でシェアを拡大することができたのでしょうか。

韓国の化粧品産業がグローバル成長できた背景には、主に2つの要因があると考えています。1つは国策による中小企業の海外進出支援、もう1つは特徴的な韓国の化粧品産業構造です。まず、韓国政府の政策から見ていきましょう。韓国政府は化粧品産業の輸出を強化することを明確に掲げ、2013年から本格的に支援してきました。主に①国内での研究開発に向けた投資、②規制緩和、③海外進出手続き支援の3つに注力してきました。

中でも輸出専門人材の育成や輸出規制に関するデータベースの整備など、韓国化粧品の海外展開を円滑にするためのプラットフォーム作りに政府が尽力していたことが奏功していると考えます。

例えば、企業の担当者は韓国政府が整備したデータベースを参照することで、化粧品に関する各国の最新の法規制の動向を素早く把握することができます。特に大手に比べ経営資源が限られるスタートアップ企業や中小企業にとっては、海外に展開するための法規制対応が重荷となっていましたが、このような負担の軽減につながっています。

もう1つの韓国の化粧品産業構造の特徴についても、教えてください。

韓国の化粧品産業は、分業型が敷かれている点が特徴です。研究開発・製造を化粧品メーカーから受託するODM(相手先ブランドによる設計・生産)・OEM(相手先ブランドによる生産)大手に資金やノウハウが集約されており、低コストでの製造が実現しています。そのため、新興メーカーでもODM・OEM企業が持つノウハウやリソースを利用して、短期間で海外進出が可能です。

例えば、「Anua」というブランドを展開する新興企業のThe Foundersは、設立から10年未満で、すでに160か国以上で展開しています。このスピード感は日本では考えられないことです。

販路についても、韓国で有名な化粧品量販店「オリーブヤング」や電子商取引(EC)サイト「Qoo10」のような化粧品販売チャネルが確立しています。また化粧品販売におけるオンライン比率も4割を超えているためデジタルマーケティングが発達し、海外展開がしやすい特徴があります。

分業型と垂直統合型

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(出所)経済産業省資料を参考に野村證券フロンティア・リサーチ部作成

一方、日本のように垂直統合型のシェアが高い市場では、大手の化粧品メーカーが研究開発から企画、製造、販売までの機能をそれぞれ担っています。韓国に比べると、資金やノウハウが分散されており、商品展開のサイクルが長期になりやすい傾向にあります。

新興化粧品メーカーが海外市場拡大のけん引役に

実際、韓国では、新興化粧品メーカーの台頭が輸出拡大のけん引役になっているのでしょうか。

そうですね。2025年の韓国化粧品企業の生産額ランキングを見てみましょう。上位21社のうち、ピンクでハイライトしている9社は2010年代に創業された新興企業です。特に前年21位だったAPR(2014年設立、主力ブランドは「medicube」)は、4位まで順位を上げました。2025年には海外での化粧品販売が急伸し、海外売上構成比は80%になりました。2024年に韓国株式市場に上場したAPRの時価総額は、2026年4月に1.7兆円に達し、韓国化粧品メーカーで1位となりました。

韓国化粧品企業の生産額上位21社(生産額1,000億ウォン以上の企業)※ハイライトは2010年代創業の新興企業
順位 企業名(証券コード) 主なブランド 生産額
(億ウォン)
1 LG Household & Health Care (051900) The History of Whoo 39,185
2 Amorepacific (090430) Sulwhasoo 30,256
3 Aekyung Industrial (018250) AGE 20’s 2,966
4 APR (278470) medicube 2,850
5 The Founders Anua 2,285
6 CJ Olive Young BIOHEAL BOH 2,052
7 Cosmax (192820) - 1,966
8 Craver Corporation SKIN1004 1,939
9 Goodai Global Beauty of Joseon 1,841
10 Clio Cosmetics (237880) CLIO 1,728
11 BENOW numbuzin 1,662
12 d'Alba Global (483650) d’Alba 1,661
13 Atomy Atomy 1,592
14 Torriden Torriden 1,273
15 iFamilySC(114840) rom&nd 1,272
16 L&P Cosmetic MEDIHEAL 1,251
17 Carver Korea AHC 1,155
18 HANSOLBIO - 1,123
19 TIRTIR TIRTIR 1,088
20 COSRX COSRX 1,088
21 Gowoonsesang Cosmetics Dr.G 1,054

(注1)単体企業ベース。親子関係やグループ関係にある企業もある。
(注2)主なブランドの記載がない企業はOEM/ODM企業で特定ができないため。
(注3)企業名は英語表記。
(出所)食品医薬品安全処をもとに野村證券フロンティア・リサーチ部作成

韓国の新興化粧品メーカーは、どのように海外市場に参入し、消費者から支持を得ているのでしょうか。

韓国化粧品の輸出額が増えている米国を例に挙げると、まずECサイト「Amazon」で販売実績を積むケースが多いようです。若年層が主なターゲットで、現地インフルエンサーを起用したSNSを中心としたマーケティングで、商品を訴求していきます。カタツムリ分泌液を配合したスキンケア化粧品などを取り扱う新興企業のCOSRXは、そのインパクトから米国で注目され、グローバルにも話題になりました。

韓国の新興化粧品メーカーは、成分、テクスチャー、使用方法など独特のインパクトのある商品を強みとしている企業が多く、SNSマーケティングとの親和性が高いです。SNSで話題を集め、ECでヒットした商品を店舗販売へ展開していくのが王道となっています。

日本の化粧品産業の海外展開における課題は

韓国の化粧品産業の勢いが増す中、日本の化粧品市場はどのような状況にあるのでしょうか。

日本における化粧品の国内出荷額は、コロナ禍の影響から回復が遅れているものの、長期的に見れば概ね横ばいです。海外から日本への化粧品の輸入金額は増加傾向にあり、国内の競争環境は激化しています。国別では韓国の増加が顕著です。

日本の化粧品の国内出荷金額の推移

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(出所)経済産業省生産動態統計調査より野村證券フロンティア・リサーチ部作成

日本の化粧品輸入額:国別内訳

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(出所)財務省貿易統計より野村證券フロンティア・リサーチ部作成

海外展開についても苦戦しています。日本の化粧品の輸出額は、2021年(約8,000億円)をピークに減少傾向となっており、2025年の輸出額は約6,000億円です。中国向けの割合が50%を超えており、中国の市場動向に左右されやすい点が輸出額の減少要因の1つと考えられます。

韓国の化粧品産業の海外展開モデルは、日本にとっては参考になるでしょうか。

参考になると思います。特に韓国は民間企業に対する政府の支援が充実していることが、成功の背景にあります。日本も官民で連携していく必要があるでしょう。

政府・与党は韓国の政策を参考にしながら、海外進出支援を強化する意向を示しています。経済産業省の「化粧品産業競争力強化検討会」は、6月に中間報告書を取りまとめました。輸出額と海外現地製販額の合計額を、2033年までに2兆円規模へ引き上げることを目標とし、化粧品メーカーの海外展開支援を進めていく方針です。具体的には、各国法規制等のデータベース構築、広告規制の緩和、日本独自のブランドを訴求するための「J-Beauty」のロゴ作成などを進めていく方針です。今後、アンチエイジングなど日本の化粧品メーカーの強みを生かし、海外でのシェアを高めていくことを期待しています。

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野村證券 フロンティア・リサーチ部 シニア・リサーチャー
杉本 佳美
2007年野村證券入社。エクイティ・リサーチ部にて、上場企業のアナリストとして、小売セクターを担当。2012年より経済産業省に出向し、組織再編、コーポレート・ガバナンスに関する政策立案に従事。2018年より現職の前身となる野村リサーチ・アンド・アドバイザリーで、小売・サービスの未上場企業調査を担当。2020年より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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