2026.10.05 NEW
配当利回り3.2%以上の優良銘柄をスクリーニング 高配当株を選ぶ4つの指標とは? 野村證券・大坂隼矢
撮影/タナカヨシトモ(人物)
配当金に魅力を感じ、株式投資を考えられる方もいらっしゃるかもしれません。配当利回りが高い「高配当株」を選ぶときには、どのような点に注意したら良いでしょうか。配当利回り以外のポイントについて、複数のスクリーニング条件を組み合わせて抽出した高配当株の銘柄リストも交えながら、野村證券シニア・ストラテジストの大坂隼矢が解説します。
配当利回りだけで銘柄を選ぶのは要注意
高配当株を選ぶときには、ただ配当利回りが高い銘柄を選ぶだけでは不十分です。配当利回りは「1株当たりの年間配当金÷株価」で計算されるため、分母である株価が下落した結果、配当利回りが高く見えているケースがあります。また今後、業績悪化により減配・無配となる可能性も考えられます。そのため、配当利回り以外にも、配当金の原資である利益を安定して稼ぐ力があるか、流動性に不安がないかといった視点も重要になります。
配当利回り以外に注目すべき4つの指標を紹介
では、配当利回り以外に注目すべき指標は、どのようなものがあるでしょうか。今回は企業の稼ぐ力や流動性を判断するときに、参考になる4つの指標を紹介します。
まず1つ目は「時価総額」です。流動性の観点で参考になる指標となります。大型株に比べ、時価総額が小さい中小型株の中には、配当利回りが魅力的なものもありますが、流動性が乏しく、売りたいときに希望する価格で売れない可能性があります。
2つ目は「経常増益率」です。企業の収益力を測る指標として参考になります。一過性の要因で前期の経常利益が大きく増えていた銘柄などは減益となるため、安定して経常利益を増やしている企業かどうかを判断する材料の1つになります。
3つ目は「PBR(株価純資産倍率)」です。PBRは1倍割れとなると、株価が解散価値を下回っていることを意味しますが、この水準を極端に下回るまで売られているような銘柄については、市場で将来、純資産が目減りしていくと見られている可能性があり、注意が必要です。
4つ目は企業の稼ぐ力を示す「ROE(自己資本利益率)」です。税引き後当期純利益を自己資本で割った値であるROEが高い銘柄は、一般的に自己資本に対して効率的に利益を生み出せているため、安定配当の期待が高い企業と言えます。ただし、ROEの水準が高い要因について、継続的な利益成長によるものか、借入の増加や自己資本の減少によるものかを確認する必要はあります。
業績や流動性の面で不安が少ない高配当銘柄をスクリーニング
紹介した4つの指標をスクリーニング条件に加え、高配当株のスクリーニングを行いました。リストアップされた企業は、野村證券のアナリストがカバーしている野村ユニバース銘柄(12月期、3月期決算企業)を母集団とし、9月29日時点で、予想配当利回りが下期で1.60%以上、通期で3.20%以上(予想1株当たり配当金をベースに計算)の銘柄です。
| 業 種 |
時価 総額 |
株価 | 1株当たり配当 (2026年度) |
配当利回り | PER | PBR | ROE | 経常 増益率 |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 下期 | 通期 | 下期 | 通期 | 前年 度比 |
||||||||
| 億円 | 円 | 円 | 円 | % | % | 倍 | 倍 | % | % | |||
| 12月決算企業(12月末配当) | ||||||||||||
| 2914 | 日本たばこ産業 | 食品 | 137,700 | 6,885 | 136.0 | 272.0 | 1.98 | 3.95 | 18.2 | 2.99 | 16.1 | 28.3 |
| 3003 | ヒューリック | 住宅・不動産 | 13,104 | 1,706.5 | 33.5 | 67.0 | 1.96 | 3.93 | 10.5 | 1.42 | 12.9 | 8.1 |
| 5101 | 横浜ゴム | 自動車 | 11,315 | 6,800 | 136.0 | 223.0 | 2.00 | 3.28 | 8.1 | 1.04 | 12.0 | 29.7 |
| 5108 | ブリヂストン | 自動車 | 49,202 | 3,810 | 65.0 | 125.0 | 1.71 | 3.28 | 12.9 | 1.33 | 10.1 | 42.8 |
| 7751 | キヤノン | 電機・精密 | 61,180 | 4,587 | 80.0 | 160.0 | 1.74 | 3.49 | 11.2 | 1.15 | 10.0 | 5.8 |
| 3月決算企業(3月末配当) | ||||||||||||
| 1803 | 清水建設 | 建設 | 15,025 | 2,096.5 | 38.5 | 77.0 | 1.84 | 3.67 | 7.7 | 1.46 | 18.2 | 64.8 |
| 1878 | 大東建託 | 住宅・不動産 | 10,831 | 3,143 | 82.0 | 163.0 | 2.61 | 5.19 | 9.5 | 2.05 | 20.5 | 3.4 |
| 2768 | 双日 | 商社 | 11,676 | 5,560 | 90.0 | 180.0 | 1.62 | 3.24 | 9.2 | 1.06 | 11.3 | 41.0 |
| 4204 | 積水化学工業 | 住宅・不動産 | 10,103 | 2,491.5 | 41.0 | 81.0 | 1.65 | 3.25 | 11.9 | 1.18 | 9.3 | 3.2 |
| 4503 | アステラス製薬 | 医薬・ヘルスケア | 41,514 | 2,294.0 | 40.0 | 80.0 | 1.74 | 3.49 | 12.3 | 2.25 | 17.4 | 17.1 |
| 4528 | 小野薬品工業 | 医薬・ヘルスケア | 11,637 | 2,333.5 | 40.0 | 80.0 | 1.71 | 3.43 | 13.6 | 1.29 | 9.3 | 15.5 |
| 4568 | 第一三共 | 医薬・ヘルスケア | 51,872 | 2,784.5 | 50.0 | 100.0 | 1.80 | 3.59 | 16.7 | 3.04 | 17.5 | 25.9 |
| 6305 | 日立建機 | 機械 | 11,909 | 5,536 | 100.0 | 190.0 | 1.81 | 3.43 | 13.7 | 1.31 | 9.3 | 14.3 |
| 7203 | トヨタ自動車 | 自動車 | 420,555 | 2,881.5 | 50.0 | 100.0 | 1.74 | 3.47 | 10.0 | 0.94 | 9.1 | 0.5 |
| 8439 | 東京センチュリー | 金融 | 12,824 | 2,606.0 | 65.0 | 110.0 | 2.49 | 4.22 | 10.4 | 1.14 | 10.6 | 6.3 |
| 8601 | 大和証券グループ本社 | 金融 | 28,029 | 1,786.0 | 41.0 | 74.0 | 2.30 | 4.14 | 12.4 | 1.40 | 11.0 | 25.8 |
| 8750 | 第一ライフグループ | 金融 | 67,798 | 1,871.5 | 36.0 | 72.0 | 1.92 | 3.85 | 13.0 | 1.58 | 12.3 | 15.0 |
| 9107 | 川崎汽船 | 運輸 | 20,984 | 3,283.0 | 60.0 | 120.0 | 1.83 | 3.66 | 11.8 | 1.15 | 9.2 | 58.0 |
| 9434 | ソフトバンク | 通信 | 115,083 | 239.5 | 4.4 | 8.8 | 1.84 | 3.67 | 19.8 | 4.35 | 19.2 | 26.6 |
(注)諸般の事情により特定の銘柄をリストから削除している場合がある。株価、業績予想数値はいずれも2026年9月29日時点。業種は野村證券独自の業種分類に基づく。1株当たり配当の予想は東洋経済新報社で予想値がレンジの場合、下限値。その他の予想は野村證券エクイティ・リサーチ部。PERは2026年度基準。PBRは直近実績基準。ROEは2026年度予想税引後利益と、直近実績の自己資本額の比率。経常増益率は、野村證券予想に基づく2026年度経常増益率。会計基準等の影響により経常利益予想がない場合には税引前利益を用いている。
(出所)東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成
安定配当と値上がり益、どちらをより重視するか
以前は高配当株と言えば、商社株や銀行株がこのような高配当株のスクリーニングの常連でしたが、近年の株価上昇で顔ぶれがやや変わってきている印象です。米国の関税政策や中東情勢などの影響で売られていた自動車関連株が入るなど、業種の入れ替わりも見られます。
このようなスクリーニングを参考に、高配当株に投資をする際には、自らの投資スタンスも整理しておくと良いでしょう。その投資スタンスは主に2つあると考えています。1つは、株式の値上がり益はあまり期待せず、安定した配当を得ることを重視する投資スタンスです。もう1つは、高い配当利回りだけでなく、値上がり益も追求する投資スタンスです。
前者の場合は、本業となるビジネスの安定性が高い企業が選択肢の1つになるでしょう。例えば、生活に欠かせない通信インフラを提供する通信株は、候補として考えられます。また複数年にわたり配当金を連続して増やしている連続増配企業も、参考になります。連続増配年数が長い企業は、長い歴史やブランド力・技術力を背景に、安定した利益を生み出す事業基盤を確立しているケースが多く、景気変動や一時的な業績悪化にも対応してきた実績があります。
後者の場合では、株価の重しとなっている材料が将来的に解消に向かう可能性がある銘柄が候補として考えられます。直近の例では、過去にPBRが理論上の解散価値である1倍を下回るなど、割安の状態にあった銀行株を購入し、持ち続けている場合は、配当に加え、金利上昇に伴う株価上昇の恩恵を受けているケースが多いでしょう。今回のスクリーニングでは、原油高や金利上昇によるコストの増加が懸念されているものの、住宅・不動産株の中には、予想配当利回りの水準が高い銘柄もあります。このような業績悪化への懸念がいずれ払しょくされるという想定を置けば、住宅・不動産株や前述した自動車関連株などは、投資対象として検討できるかもしれません。
投資目的や自分自身が許容できるリスクに応じて、投資方針を決めておくと、投資判断で迷ったときに役に立ちます。配当利回りに着目して銘柄を選ぶ際には、このようなポイントを踏まえ、銘柄や業種の特性を見極めていくことが重要になります。
- 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
大坂 隼矢 - 2010年入社。3店舗での支店業務を経て、2015年3月より投資情報部。現在は月刊誌「Nomura21 Global」等、個人投資家向け株式資料の作成をはじめ投資情報の提供を行う。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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