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2022.11.17 NEW

リカレント教育でキャリアアップ 上場企業の62%が導入する学び直しの制度とは?

リカレント教育でキャリアアップ 上場企業の62%が導入する学び直しの制度とは?のイメージ

新しいことにチャレンジするため、何かを学んでみたいと考えたことはあるだろうか。学びといってもその範囲は広く、一冊の本を読んで知識を得る、カルチャースクールに通って見識を広める、資格試験にチャレンジするなど、学び方はさまざまだ。そこで今回は、政府も推進しているリカレント教育について紹介する。企業の中には、社員の学びを後押しする制度を導入する動きもあり、社会人になってからでも学ぶチャンスが広がっている。社会人がどんな目的で、何を学んでいるのか、その様子も見ていきたい。

リカレント教育とは? 生涯学習との違いは?

リカレント教育とは、学校教育を修了して社会に出た後も、必要なタイミングにあらためて教育を受けることを指す。仕事に関する専門的な知識やスキルを習得するため、仕事を続けながら学ぶケースもあることから、「社会人の学び直し」とも呼ばれている。

学ぶといえば「生涯学習」を思い浮かべる人もいるかもしれないが、学ぶことは同じでも目的が違う。生涯学習は人生を豊かなものにするため、生涯にわたって学ぶあらゆる分野が対象で、スポーツ活動やボランティア活動、趣味に関する内容も含まれる。これに対してリカレント教育は、ビジネスに生かすことができる知識やスキルを身に付けるため、法律、会計などの経営に関する科目や、語学、プログラミングスキルといった、専門的な内容になる。

終身雇用が一般的だったころは、就職したら定年まで働き、退職したらセカンドライフを送るというライフスタイルが定番だった。しかし近年では、働き方改革など、社会に柔軟性が生まれる動きが見られ、休職して留学する、転職や起業をして新たな仕事にチャレンジするなど、さまざまな生き方や働き方を選ぶ人が増えた。そのため、キャリアアップ・キャリアチェンジに必要な知識やスキルを学べるリカレント教育が、注目されているのだ。

学びに対する意識は高い 66%が「この1年間に何かを学んだ・習った」と回答

ここで、「学び」に関するアンケートの結果を見てほしい。この1年間に何かを学んだり習ったりしたことがある人は66%を占め、その内容は「趣味に関するもの」「仕事に必要な知識に関するもの」「仕事に必要な資格の取得」「英語など語学に関するもの」などが多かった(図1)。

図1:1年間の学びの有無とその内容

図1:1年間の学びの有無とその内容

出典:株式会社キャリアパワー「『学び』に関するアンケート」をもとに編集部作成

登録スタッフおよび一般の人1,639名(男性11%、女性89%)を対象にしたインターネット調査。2022年1月14日~1月30日に実施。

学ぶ目的について聞くと、最も多かった回答は「現在の仕事や転職に役立てるため」で、そのほかでは「家庭や日常生活に役立てるため」「その学習分野が好きだから」などが多い(図2)。

図2:学んだり習ったりする目的について

図2:学んだり習ったりする目的について

出典:株式会社キャリアパワー「『学び』に関するアンケート」をもとに編集部作成

登録スタッフおよび一般の人1,639名(男性11%、女性89%)を対象にしたインターネット調査。2022年1月14日~1月30日に実施。

こうしたアンケート結果を見ると人々の学びに対する意識は高く、仕事や趣味に関することを学んでいる様子が分かる。しかし、「リカレント教育」という言葉の認知度を見ると、「知っている」と答えた人は28%にとどまり、「聞いたことがない・知らない」人は40%に達している。キャリアアップ・キャリアチェンジのために学ぶ人は多いものの、リカレント教育という言葉自体を認知したうえで学んでいる人はまだ少ないようだ(図3)。

図3:リカレント教育という言葉の認知度

図3:リカレント教育という言葉の認知度

出典:株式会社キャリアパワー「『学び』に関するアンケート」をもとに編集部作成

登録スタッフおよび一般の人1,639名(男性11%、女性89%)を対象にしたインターネット調査。2022年1月14日~1月30日に実施。

上場企業の62%がリカレント教育を導入 「リスキリング」や「休暇制度」の実施も

リカレント教育に対する一般の認知度は低いものの、企業を対象にした調査では、社員のリカレント教育に積極的な様子がうかがえる。東証上場企業を対象にした調査では、回答企業の62%がリカレント教育を実施しており、従業員規模が大きい企業ほど実施率が高くなる傾向があった(図4)。

図4:リカレント教育の実施状況

図4:リカレント教育の実施状況

出典:経済産業省「令和3年度産業経済研究委託事業(「イノベーション創出」のためのリカレント教育に関する調査)」をもとに編集部作成

調査対象は東証全上場企業(3,749社)の人事部門(人材育成)担当者で、回答数は382件。2021年10月21日~12月9日に実施。

企業が従業員に求める知識・スキルには、業種によらない分野では「マネジメント(MBA等を含む)」「ソフトスキル(リーダーシップ・コミュニケーション等)」などが、専門的な分野では「デジタル分野の基礎的知識(リテラシーレベル)」「デジタル分野の専門知識」など、デジタル分野の知識・スキルのニーズが高かった(図5)。

図5:企業が従業員に求める知識・スキル

図5:企業が従業員に求める知識・スキル

出典:経済産業省「令和3年度産業経済研究委託事業(「イノベーション創出」のためのリカレント教育に関する調査)」をもとに編集部作成

調査対象は東証全上場企業(3,749社)の人事部門(人材育成)担当者で、回答数は382件。2021年10月21日~12月9日に実施。

企業はどのようにリカレント教育を推進しているのだろうか。具体的なケースを見ると、今後の業務に必要な知識・スキルの習得を目指す「リスキリング」や、社員に学ぶ時間を提供するための休暇制度の導入が中心になっているようだ(図6)。自身の勤務先にも利用できる制度やプログラムがないか、この機会に確認してみるとよいだろう。

図6:リカレント教育を導入する企業の事例
国内大手精密機器メーカー リーダー育成のため、職種や部門を超えて工場の仕組みを学べる機会を提供するほか、欧米やアジアなど重要な市場で活躍できるプロフェッショナル人材の育成を目指す制度等を導入。
国内大手精密機器メーカー 国内の大学と共同で、若手技術者・研究者の育成を目的にしたプロジェクトを始動。対象社員は大学院入試を経て博士号取得を目指す。教育派遣扱いとなり、入学金・授業料などの学費は企業が負担。
ラーニングスペースを提供する国内企業 個人のキャリア形成のため、勤続3年以上の社員を対象に、最長6カ月間の長期休暇を取得できる「リカレント休暇」制度を導入。

国もリカレント教育を後押し。どんな支援プログラムがある?

企業ではリカレント教育を人材戦略や福利厚生の一環として導入する動きがある中、国はリカレント教育を推進するための事業を展開している。

その一つが、「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」で、全国の大学が企業や経済団体、ハローワークなどと連携して、2~6カ月程度の短期間で就職・転職につながるプログラムを受講費無料で提供している。プログラムにはDXや医療・介護、地方創生の講座などがあり、その内容も基礎的なものから応用的なものまでさまざま用意されている。厚生労働省の求職者支援制度と連携し、職業訓練受講給付金を受給しながら参加できるプログラムもある。

また、文部科学省の事業によるポータルサイト「マナパス~社会人の大学等での学びを応援するサイト~」では、大学等における学び直し講座や、学び直し支援制度の情報を発信しており、条件が合えば無料で受講できる講座もある。

リカレント教育という言葉だけを聞くと、あまり身近に感じないかもしれないが、学びに意欲的で、すでに何かしらの学びを実践している人は多い。これから学ぼうと考えているが何から始めればよいか思い浮かばない場合には、まずは暮らしやビジネスに欠かせない“お金”の知識を学ぶことから始めてみてはいかがだろうか。

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