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2017.11.30 NEW 境界線の越えかた

千葉ジェッツの島田慎二がこだわる、「みんなでハッピーになる」ための経営理念

千葉ジェッツの島田慎二がこだわる、「みんなでハッピーになる」ための経営理念のイメージ

男子プロバスケットボールリーグB.LEAGUE屈指の人気チーム・千葉ジェッツふなばしの島田慎二代表取締役。観客動員数などの記録を次々と塗り替え、業界に風穴を開ける凄腕がチームにやってきた経緯と、チームの運命を変えた「ある決断」について聞いた。

まず最初に、千葉ジェッツに関わるようになったきっかけを教えてください

経営していた会社の全株式を売却して、海外を旅していた2011年のことでした。千葉ジェッツの会長で私の事業の出資者でもあった道永幸治さんから「暇ならジェッツを手伝ってくれないか?」と声をかけられたんです。
本当は気が進まなかったんですが、出資していただいた恩もあるので「お手伝いくらいなら」ということで、その年の11月から無償のアドバイザーとして関わり始めました。

そこからいくつもの施策を打ち出して立て直しを図ったわけですが、その中で特に重要だったと感じる施策は何ですか?

2012年2月、代表取締役に就任したその日に発表した経営理念でしょう。私がアドバイザーとして関わるようになったころから、ジェッツはつぶれそうな状況でした。球団がどこに向かっていくかの指針もなければお金もない。おまけにチームも弱い。

ないない尽くしだったところから、まず、社員やステークホルダー、行政・スポンサーに、球団がどこに向かって進むかを明確に示しました。「お金がなくてボロボロですけど、こういうビジョンを持ってこういう戦略でやっていくんです」と伝え、将来性に懸けてもらうしかなかったんです。

公式サイトにある「千葉ジェッツを取り巻くすべての人たちと共にハッピーになる」という大前提と、それに続く13の経営理念ですね。

それを一つずつ示して「この球団ならサポートする価値がある」「応援してあげたい」と思っていただくことが重要でした。お金を集めるという意味でも、うつむいていた社員たちの顔を上げるという意味でも。骨太の方針を掲げたことは今でも生きていると思います。

理念を打ち立てる上で、重要視したことは何ですか?
千葉ジェッツの活動理念のイメージ

バスケットボール界はバスケットが好きな人が集まっている産業なので、給与が安かろうが休みがなかろうが、それこそ夜中まで寝袋で仕事をしようが、みんな我慢して仕事をこなしている。

でも、異業種からきた私からすれば、「この人たちはこれで幸せなんだろうか」と思わずにはいられなかった。その部分を“本当の意味でのハッピーなもの”に変えないと、業界発展はないだろうと思いました。

それでまずは、ジェッツの経営理念に「みんなでハッピーになる」という言葉を掲げたんです。社員やステークホルダーも含め、みんなが幸せになってこそスポーツチームの存在意義があるんだと。

19時退社の推奨もそのひとつですね。ご自身もそのような働き方をされているのでしょうか?

そんなことはないですね。ファンの方にも「働き方改革をされているのに、社長自身は寝ずに働いていますよね」とツイッターで指摘されることがあります(笑)。やっぱり経営者は甘くないですよ。仕事のことを死ぬほど考えていなかったら、トップになんか立てませんから。

ジェッツは日本のトップに立とうとしている球団ですし、バスケットボール界全体が野球やサッカーに追いつきたいと思っている。それを実現するには、楽しみながら仕事をするなんて感覚ではやっていられないです。

就任された当時、バスケットボール界にはプロアマ混在のNBLと、そこから派生した完全プロのbjリーグという2つのリーグが存在していました。千葉ジェッツは当初bjリーグに所属していましたが、2012年6月にNBLへの移籍を発表します。島田さんは著書『千葉ジェッツの奇跡』で、この決断を非常につらかったと振り返られています。

40代に入ってからは穏やかに落ち着いて仕事をしていたんですが、この時は久しぶりにつらかった。この時のジェッツは経営が不安定でお金がない状態。私の決断が間違っていたら私と社員・選手はもちろんのこと、周囲の信頼も大きく低下するわけです。
取り巻く人とハッピーになると宣言したにもかかわらず、ハッピーになれるかどうかの岐路に立ってしまった。「この人についていけばうまくいくかも」と思ってもらい、再建のスピードが上がっていただけに、余計につらかったですね。

まわりの反応はいかがでしたか?

移籍のリリースを出す最後の3日間は、bjリーグの幹部と帝国ホテルの会議室で「NBLには行くな」「でもbjリーグはこのままじゃいかんでしょう」、「行ったってボコボコにされるだけだぞ」「ボコボコ、大いに結構」とか、そんなことを朝まで話し合っていましたね。
でも、私からするとNBLもbjリーグもどっちもどっちだったんですよ。どちらが正しいのかということより、同じ国の同じスポーツで2つリーグがあること自体が変でしょと。わかりづらいのは消費者に受けないというのが私のスタンス。

社会全体から見たら、バスケットボール界自体が“小さな存在”でしかないのに、その中でチマチマ争っていたって産業全体が伸びるわけがない。だからこそ、何か変えないとダメだと思ったんです。こういう状況をぶち壊さなきゃだめだという危機感に突き動かされるように、自ら激流に飲まれていきました。

なにが、そこまで大胆なことを成し遂げさせたのでしょう。

なんでしょうね…。やはり経営理念だと思います。社内で唱和するだけでなく、世間に向けて宣言している以上、その言葉には責任があります。
だからこそ、リーグを変えるチャレンジをしたほうがジェッツの幸せにつながると判断して、その道を選んだ。何かきっかけがあったわけではなく、「約束を果たそう」という思いが突き動かしたんだと思います。

話は変わりますが、20代から30代にかけては、どのような社会人生活を送っていましたか?

25歳から会社を経営してしました。野心でギラギラして上場しか考えていないような時期で、そこそこの業績は挙げていましたが、総じてあまりうまくいかなかったですね。
30歳で立ち上げた会社に至っては「株式公開」が経営理念ですからね(笑)。そんなアホみたいな時期もありました。若かったですね。

ジェッツにも20代から30代の社員がいらっしゃると思います。彼らのことはどのようにご覧になっていますか?

もちろん頑張っていますよ。ただ…これはうちだけでなく社会全体に言えることだと思うのですが、アグレッシブな人が減ってきているなという印象はあります。
もちろん、それはそれと割り切って「ジェッツを戦える集団」にするにはどうするかを考えるようにはしていますが、もっとチャレンジしてほしいなと思うこともあります。

世の中には、特にやりたいことが見つからないまま働いている人もいれば、実力や会社の事情などでやりたいことにたどりつけていない人も多いと思います。そういった人たちが今いる場所でやり甲斐を見つけるには、どうしたらいいと思いますか?
千葉ジェッツ 島田慎二のイメージ

「自分がどういう生き方をしたいのか」を考えることが道しるべになると思います。私は大学を卒業して3年間だけ企業に勤めたんですが、経理に配属されたんですよ。こういうキャラクターなので、営業や「なんとか企画室」みたいなところに入りたかったのに、まさかの経理(笑)。

しばらくは悶々とした思いを抱えて、上司に「こんなことやってられません」なんて言っていたんですが、ある時「自分がどういう生き方をしたいのか」に立ち戻ってみたら、経理という仕事にもやり甲斐が見えてきました。

それは、どのような生き方だったのでしょう?

大学時代から「30代で仕事を引退して、あとは楽しく暮らしていこう」と決めていたんです。それを実現するにはお金が必要で、そのお金を手に入れるには社長になるしかない。だったら社長を目指そうと思っていました。

「社長になりたい」ではなく「30代で引退したい」が目標だった。

そうです。社長は自分の目的を達成するための手段だったんです。社長になる以上は会社を経営しなければいけないわけで、経営するためには数字にも明るくなくてはならない。ならば、経理の仕事をしっかりやろうと切り替えました。実際、経理時代に学んだことが経営にもすごく生きているんですよ。

がんばることは決して無駄にはならない、というわけですね。

キラリと光るナイフは草原に投げても誰かが拾うと言いますけど、どんな仕事であれ一生懸命やってキラリと光ることができれば、遅かれ早かれ自分のやりたいことに近づいていける。
そのためにも、まずは置かれたところでベストを尽くすこと。それは新人であろうが30代であろうが、50代だって同じだと思います。そうやって前向きに仕事をすれば、仕事が楽しくなって評価も上がるし、多少つらいことがあっても乗り越えていける力になると思います。

島田 慎二(しまだ しんじ)
1970年生まれ、新潟県出身。日本大学法学部卒業後、マップインターナショナル(現エイチ・アンド・エス)入社。95年から01年にかけて3つの会社を立ち上げ、12年に千葉ジェッツ代表取締役に就任。17年9月にはB.LEAGUEバイスチェアマンを正式に兼任し、多忙な日々を送っている。

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