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2018.03.15 NEW

【特別企画】現代の魔法使い・落合陽一さんに聞く80年代生まれの現在と未来

【特別企画】現代の魔法使い・落合陽一さんに聞く80年代生まれの現在と未来のイメージ

START!とEL BORDEが共同で実施した、若者の人生を取り巻く「リスク」「チャンス」「ハッピー」に関するアンケート。この結果を踏まえて、「現代の魔法使い」といわれるメディアアーティストで筑波大学学長補佐の落合陽一さんに、80年代生まれの現在と未来について話を伺いました。

リスクは大きなチャンスになりうる

アンケートの結果を見て、この世代は特に不安もない、希望もないってことかなと感じました。
例えば 「リスク」のところで見ると、年金不安が一番上位に来ています。でも人生まだ残り50年以上あるのに、ラスト10年のことばかりを考えてもしょうがないでしょう。老後に年金を頼って生きていくつもりなんでしょうか。たぶんそうはならないんじゃないかと思います。

少子化・高齢化もそうです。これはむしろ日本にとってはチャンスでしょう。大人に比べて子どもの数が少なくなるということは、「子どもは貴重だから大切にしよう」とより多くの教育コストをかけてもよくなるわけで、今とは比べ物にならない優秀な人材を育てることができるかもしれません。

また、働く人が少なくなれば、どんどんロボットに置き換えて、機械化・省人化せざるを得ません。そもそも機械化に対してはヨーロッパ、アメリカと比べて、日本は歴史的にほとんど抵抗がありません。外からやってきた新しい技術を受容する感性が弥生時代のころから日本人にはありました。産業革命のときの「ラッダイト運動※1」みたいなこともなかったですしね。

テクノロジーを活用した仕組みが定着すれば、将来的にはアジアなどやがて同じ状況を迎える国に輸出できる。これはとても大きな価値となるでしょう。

次に「チャンス」に関する質問では、AIの進化やIoTの実現、スマホの普及が上位の結果でした。
もちろんテクノロジーが発展することで、新しい仕事がもっと生み出されるのは間違いありません。
このときポイントなのは、80年代生まれの人々が被雇用者としてAIを考えるのか、それとも経営者として考えるのか、その立場の違いを認識することだと思います。被雇用者側から見ると低賃金になったり、技術失業したりするリスクがあるかもしれません。

しかし一方で、AIによって作業量が減れば、やりたいことや好きなことをずっと続けられる職場環境ができるかもしれません。経営者側から見ると、コストが下がって高利潤を出しやすい状況になるでしょう。そうなると働く人に対する適正な査定と価格設定が進んできます。このことは副業やダブルワークが広がるきっかけになると思います。

兼業していろいろなコミュニティーに属することは、一つのところに全部を賭けないという意味でリスクヘッジになるし、全然違うフィールドと交わることができれば元の仕事にもプラスの影響を与えるはずです。市場価値はレア度(希少価値)で決まるので、兼業でレア度が高くなれば、もらえる給料も高くなるかもしれません。

最後は「ハッピー」に関する質問です。ハッピーって簡単にいうけど、定義するとなると本当に難しいです。欧州のハッピーは「ドグマ※2」だけれど、日本人にとってのハッピーは、「快適」つまり「カンファタブル」でしょうか。
さらに言えば、カンファタブルかつサステナブルなものです。そもそもハッピーと幸せは違うけど、幸せとか愛とかいうのは、明治時代に入ってきた西洋的な幸福観です。誰かが定義するものではなく、千人いたら人それぞれによって違うはずです。自分にとって何がハッピーなのかを定義できれば、人と比較する必要もないと思います。

お金ではないコミットメントのかたち

落合陽一さんのイメージ

寄せられたフリーアンサーを見ていくと、お金にそれほど困ってはいないけど、お金のことをすべて忘れるほどお金があるわけでもないという感じでしょうか。
お金がないと何も始まらないといえばそうかもしれないし、お金があってもしょうがないといえばそうだし、どちらも正解だと思います。

よく、何か仕事しないとご飯が食べていけないというじゃないですか。でもいまの日本では、働かなくてご飯が食べられないなんてことはないはずです。ただ、そう教育されているだけ。

近代化とはそういうことです。お金がないといけない、お金がある程度あれば幸せだ、貯金は美徳だ…このような観念を刷り込み、植え付けてきたわけです。これはまもなく変わっていくと思います。お金がただのパラメーターだということにやがて気づくはずです。仮想通貨とかやってみるとすぐわかりますが、みんなが価値があると思えばあるし、ないといえばない。ただそれだけです。

そもそもお金と労働がリンクしているなんて思っている人は、教育によって大幅に何かを間違えさせられているだけです。そもそもお金と労働は全く関係ないものなのに、いつの間にか密接に関係させられている。不思議ですね。もちろん労働が悪いわけでなく、労働はとても尊いものです。

でも僕は、労働っていうものの尊さは、お金で判断されるものではないと思います。お金をもらうからコミットメントが高くなるというのは、ある程度のところまででしょう。もらわなくてもそれをやりきる。その地点までたどりつく。その状態が一番コミットメントが高いです。
だから、お金じゃないコミットメントを達成できる人は、いまも将来も価値が高いでしょうね。

教育では気づかない本物の価値

多くの人は自分のやりたいことが何なのか、あるいはお金の価値から自由になるためにはどうしたらいいか、そういうことがわからないように教育されています。現代の教育って基本的には工業化することです。工業化とは、同じ価値でも一見すると変わったように見えるものを提示することです。

僕はグミが大好きなんですが、グミはまさに究極のもの。中身や成分はほとんど一緒だけど、パッケージにあるビジュアルを信じこませて、「これはオレンジ味だ」「これはリンゴ味だ」と思って食べさせる。どこまで人は信じられるかっていう英知の結晶なんですよ。そんなことだけをさせられていたら、自分のやりたいことなんてわかるはずありません。

一方で、アートとかデザインとかサイエンスとかエンジニアリングとかって、それだけではなく、人間の営みについて本気で考えている側面があります。本気で何かをやっている人たちにしか生み出せない価値、「本物」があることを知ること、それはとても重要です。

本物には時間的な蓄積、本質的な価値があります。最近、オリンピックとか見ているとすごく感じます。アスリートは純然たる複雑性がなくて、すごく誠実だなと。何かを成し遂げるためにはやらなきゃいけないことがあって、ずっとそれをひたむきにやってくる。そういう人じゃないとオリンピックで金メダルを取れないのかもなと思います。
例えばフィギュアスケートの羽生結弦選手を見ていると、ものすごく尊いと思います。フィギュアスケートは、人類がやっている中で一番速いスピードで動くダンスですね。圧倒的に速い。その高速の中で跳んだり回ったり演技する。これはものすごく尊いことです。

スポーツだけじゃなくて、音楽でもそうです。BABYMETAL(ベビーメタル※3)にも同じ感じを覚えます。彼女らを見ていると、ある一瞬っていうものが過ぎ去ることがわかっていて歌っているんだなと思うんです。そういう刹那(せつな)な覚悟感を両者から感じます。
テレビでズームされて一部を切り取ったものだけを見ていると、時間性と空間性が失われてしまうから、「羽生君かっこいい」それで終わってしまうかもしれません。でも本物を実際に見ることにはとても価値があるし、本物とそうでないものにはものすごい違いを感じます。

二項対立のその先に

落合陽一さんのイメージ

僕はもう二項対立の時代は終わったと思います。統治する方からすると二項対立の方がもちろん楽なんです。手をあげるかあげないか。ただ人間の感覚はグラデーションになるに決まっているんですよ。境界条件で定まるわけはないんです。

それを考えると二項対立をどう突破するかが大事になるでしょう。僕はそこには時間や空間を超えたそれぞれの人のストーリーでしか語り得ないことがあると思います。イエスでもあるし、ノーでもある。どちらも受け入れる。いまの民主主義では決め得ない未来になると思います。

そもそも文化っていうのは、二項対立では語れるものではありません。なぜなら、そこには積み上げた複雑性があるからです。文化へのリスペクトが足らない人は、すぐAかBかで物事を判断しがちです。でもこれからの未来に重要なのは、教養ある攻め方だと思います。相手を倒すのではなく、どれだけ相手のことを理解できるかというアップデートの考え方が間違いなく主流になると思います。

日本の未来は二項対立じゃないから、明るくも暗くもありません。明るいところもあれば暗いところもある。でも問題ははっきりしているから、全体的に見れば明るいんじゃないですか。年金不安とか少子高齢化とか、いま日本が抱える問題は、ほとんどテクノロジーで解決できるはずです。たいがいは労働力が足らないことが問題の根幹で、それは全部テクノロジーで解決できてしまいます。だからこれからは、何が本質的なことなのかを知り、なぜ尊いのか理解できることが、何よりも重要になってくるのだと思います。

※1:イギリス産業革命期の1810年代、失業が増え生活が苦しいのは機械化や技術革新のためだとして、繊維工業を中心とした職人や労働者が引き起こした機械打ち壊し運動
※2:各宗教、各宗派が持つよりどころとなる教義
※3:日本の女性3人組のメタル系ダンスボーカルユニット

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落合 陽一(おちあい よういち)
1987年生まれ。ピクシーダストテクノロジーズ株式会社代表取締役。メディアアーティスト。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了)、博士(学際情報学)。筑波大学准教授・学長補佐、大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学客員教授を兼務。

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