2018.02.22 NEW
【特別企画】80年代生まれのリスクは年金・高齢化などの社会不安?
80年代生まれをとりまく「リスク」と「チャンス」を分析、「ハッピー」な生き方を提案する当企画。一回目は「リスク」の正体を浮き彫りにしてみた。
80年代生まれが考えるリスクとは
これからの時代の担い手となる「80年代生まれ」のリアルを知るために、編集部はまず読者を対象としたアンケートを実施した。
「あなたのキャリアや人生設計にとって『リスク』だと思う世の中の変化は?(複数回答可)」という質問に対して、年金不安(69.6%)、高齢化(63.9%)、少子化(56.5%)が上位を占めた(図1)。
※EL BORDEがSTART!(朝日新聞社)と共同で、1980年代生まれの全国の男女588人を対象にインターネットにて調査。2018年1月15日~1月28日に実施。
#みんなのコメント
【年金不安】
- 賃金が変わらず出費が多くなると老後への貯蓄が心配。(男性34歳)
- もらえないので払いたくない。(男性33歳)
- もらえる年齢が上がり金額も下がっている。我々が受給する年齢は90歳くらいになるのでは? 事実上破綻してるのと同じだと思う。(男性32歳)
【高齢化】
- 30代の今でさえすでに高齢化社会。この際負担がどれだけ増えるのか不安で仕方がない。(女性36歳)
- 高齢化に伴って定年も引き上げられ、若い人材が若いうちにリードしていけない。(男性36歳)
- 高齢者が増加し福祉施設も入りづらくなる。姥捨山は現実に増えるだろう。(女性35歳)
【少子化】
- 人口が少なくなれば社会構造が変化し、これまでのモデルが通じなくなるから。(男性34歳)
- 税収の減少、労働年齢人口の減少、消費の減少。(34歳女性)
- 未来ある子供の数が減っていくということは、それだけ将来への影響が大きいと感じる。(男性32歳)
リスクの底に潜むものは何なのか
この結果を、野村総合研究所未来創発センター2030年研究室の上田恵陶奈(うえだ えとな)氏はこう分析する。
「年金も高齢化も少子化も、個人の努力によって解決できないもの。社会の行き先がそれほど明るくないことをリスクとしてとらえている印象です。また、これからは22~23歳から65歳まで同じ会社で働き続けて、そのあと年金をもとに老後を楽しむという生き方そのものが変わっていきます。
今は「人生100年時代」における新しい生き方のプロトタイプを、80年代生まれの彼らが作っている段階。上の世代からそういうチャレンジへの共感を得られないこともあいまって、『生みの苦しみ』が不安につながっているという側面もあるでしょう。」(上田氏)
80年代が多く抱えるリスクの根底にあるのは「超高齢社会」。65歳以上の高齢者1人を15歳~64歳の現役世代が2.3人で支えている現在の日本。2060年には現役世代の割合が1.3人にまで減少すると見られている。
また、医療の進歩により寿命は上がり続け、ベストセラーとなった書籍「LIFE SHIFT」をもとに試算すると、80年代生まれの約半数は95歳~100歳まで生きる計算になる。政府も平成29年11月に「人生100年時代構想会議」を設置し、超長寿社会を生きる方法の検討を始めている。
こうした高齢化する社会とその適応への不安が、80年代生まれに「年金不安」「高齢化」「少子化」といったキーワードを選ばせたと言えそうだ。
不安の根拠はどこに?
それでは、その不安の根拠はどこにあるのか。自身も80年代生まれの博報堂生活総合研究所の三矢正浩氏は、自由記述の「リスクと思う理由」を眺めながら、「少なくとも自分たちの親が30代だったころ、こんな不安を抱いていたとは考えにくいですね」と率直な感想を述べた上で、財務省が推計した国民負担率を引き合いにだした。(図2)
出典:「国民負担率(対国民所得比)の推移」より作成
「これは、自分たちの稼ぎのうち税金や社会保険料負担でどのくらいの割合が引かれているかを示した数字なのですが、昭和45年度に24.3%だったものが、平成29年度は42.5%にまで上昇しています。勤労者の場合は給与から天引きされているので気づきにくいものではあるのですが、可処分所得がなかなか増えないというのは単なる印象ではないんです。消費が活性化していかないと国も増税などの手を打ちづらい。税金でテコ入れができなければ年金制度への不安はどんどん高まっていく。そういった状況を如実に反映した結果になっているように思います」(三矢氏)
高齢化が進む「未来」と、給与は上がっても可処分所得が増えにくい「現在」。この2つが、80年代を包むリスク意識を生みだしていると言えるかもしれない。
最も大きなリスクは何か
「未来には、AIやIoTの進歩などによって、未来が明るい方向へ変化するチャンスにもあふれています。ただし、この変化は自動では起きない。これが、80年代にとって最大のリスクかもしれません」と上田氏は述べた。
「例えば、技術の進歩によって可能となった業務改革も、『今日のままがいい』という上の世代とうまくやらない限り起こりません。業務改革には痛みが伴いますが、その痛みに対して決断できなければ、企業にも自分にも改革は起きません」(上田氏)
既得権益を握っている人は、その権利を手放すような改革は望まない。そうした人々が「動かない」というリスク、そして80年代生まれが「動かせない」というリスクが、最も大きなリスクだと指摘するのだ。
「時代の変化」という波に立ち向かうことを余儀なくされた、80年代生まれのビジネスパーソンたち。次回は彼らがリスクを受け止めながら「チャンス」を生み出す方法について、焦点を当てていく。
- START!タイアップ記事(リスク編)
EL BORDE×START! タイアップ企画!
詳細はこちら- 監修:上田 恵陶奈(うえだ えとな)
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株式会社野村総合研究所 未来創発センター 2030年研究室 兼 ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント。AI、決済、コンテンツなどの複合領域を専門とし、また2030年研究室にてAIと共存する未来を研究している。
- 監修:三矢 正浩(みつや まさひろ)
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博報堂生活総合研究所 生活表現グループ 上席研究員。2005年に株式会社博報堂に入社し、2016年より現職。生活者に対する多角的・ユニークな観点から、幅広い分野の研究調査に従事。今年度は生活者とお金をテーマにした「進貨論~生活者通貨の誕生~」のメイン研究者の一人として、研究発表を行った。