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質の高いアウトプットはルーティンから生まれる――水野学を支える仕事の「段取り」

質の高いアウトプットはルーティンから生まれる――水野学を支える仕事の「段取り」のイメージ

政府が掲げる「1億総活躍社会」実現に向けた行動施策として、2019年4月にスタートした「働き方改革」。以来、多くの企業が労働時間の短縮に取り組み、一定の成果があったといわれている。しかし当然のことながら、勤務時間が短くなっても仕事の量は変わらない。限られた時間でタスクを終えることができず、結局は家に持ち帰っているという人も多いのではないだろうか。

そこで身に着けたいのが「段取り力」。段取り力があれば、限られた時間内で確実に仕事を終えることができるだけでなく、あらゆるアウトプットのクオリティを最大化することができる──。そう語るのは、日本が誇るトップクリエイティブディレクターのひとりであり、ベストセラー『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)などの著書で知られる水野学(みずの まなぶ)さんだ。

段取りとは、“余白”をつくり出すための作業

誰もが知るマスコットキャラクター「くまモン」のデザインや、人気食品メーカーのブランディングなど、これまでにさまざまなプロジェクトを手がけてきた水野さん。つねに何十件もの案件を同時進行する精力的な仕事ぶりを支えているのが「段取り力」だという。

そもそも「段取り」とはなにか。物事を進めるための順序? それも間違いではないが、水野さんが定義する「段取り」は少し違う。

「僕もかつては、段取りとは『効率的に物事を進めるための手順』のことだと思っていました。たとえばエレベーターに乗った瞬間、行き先の階数を押すより先に『閉じる』のボタンを押す、といったような。

しかし、ではなぜ自分は効率的に物事を進めるのかと考えたとき、それは“余白”をつくるためだと気づいたんです。効率的に物事を進めることで余白をつくる。それが目的ならば、余白をつくり出すための作業のことを『段取り』と呼ぼう、と」

では、「余白をつくる」とは、いったいどういう意味なのか。

どんな締め切りも絶対に守らなければならない理由

水野さんがいう「余白」を理解するには、まず「時間」について考える必要がある。

人生は有限であり、それゆえに時間は王様である──。この考えが、水野さんにとっては仕事をはじめ、あらゆる物事に対する姿勢の前提になっているからだ。

「昨今は『人生100年時代』だなんて言われていますが、それでも僕は時間が足りないと思っているんです。人が人生を自分のものにできる──お金を稼いで自立できるようになるのは、早い人で16歳、だいたい20歳や22歳くらいからですよね。そして、いまの日本人の平均寿命は約84歳。そう考えると、人が“事実上”の“自分の人生”を生きられるのは60年ちょっとしかないということになる。

加えて言うと、うちは父親の兄妹の半数以上が50代前半で亡くなっている短命の家系なんです。そんな個人的な事情もあり、小さなころから死とか、時間の有限性みたいなものに敏感だったように思います」

水野さんの場合、自らの家庭環境も影響して時間に敏感になったというが、命が有限なのは誰もが同じこと。そして、仕事はその限られた時間のなかで行われる。だからこそ、どんなプロジェクトにも必ず期限や締め切りがある。

「僕がずっと大切にしている言葉に『締め切りが完成』というものがあります。これは仲條正義(なかじょう まさよし)さんという大先輩のグラフィックデザイナーに教わった言葉で、完成したから世の中に出すのではなく、締め切りがきたら世の中に出すべし、といった意味。社会のなかで仕事をしている以上、締め切りがすべて。『時間があればもっといいものができた』という言い訳は通用しません。『時間内にやりとげることも実力のうち』というシビアさが必要なのだと僕は考えています」

すばらしいものができるなら、少しくらい締め切りに間に合わなくても仕方がないと考える人は少なくない。クリエイティブな職種の人であればなおさらそうだろうと思いきや、水野さんは違う。締め切りこそ絶対のルール。耳が痛い人もいるかもしれないが、だからこそ水野さんは「段取り」を重視しているのだ。

ルーティン化が仕事のクオリティを高める

人の時間は有限だからこそ、どんなプロジェクトにも期限がある。だから締め切りを守らなければならない。いたってシンプルなルールだ。

その「締め切りを守ること」を物差しにすることで、仕事の“本質”が見えてくるのだと水野さんは続ける。

「弊社はキャラクターの考案や店舗デザイン、ブランドロゴの作成などさまざまな仕事を手がけており、クライアントの業種も多岐にわたります。しかし僕にとってはすべての仕事の“本質”は同じです。まず、どんな仕事にも締め切りがある。そして、どんな仕事であっても、やりとげるまでの工程──タスクは基本的には変わりません」

どういうことか。水野さんによると、たとえばデザインの仕事なら、どのプロジェクトもおおまかには以下のような工程をたどるという。

調べる→手描きのラフを描く→「たたき台」となるラフをパソコンで描く→デザイン案を出す→最終版デザインを出す

これはデザインにかぎらず、ほかの仕事にもいえることだろう。たとえばマーケティング職の人が企画書をつくる場合、どんな案件であっても工程はおおよそ以下のようなものになるはずだ。

調べる→方向性を決める→企画書の流れを決める→文字にする→図を加える→完成

どんな仕事も工程を分解すれば、やるべきことは同じ。つまり、一種の「ルーティン」だ。

「ルーティン」と聞くと「流れ作業によるクリエイティビティの低下」を懸念する人もいるだろう。しかし実際には逆で、あらかじめ基本の流れをルーティン化し、無駄な作業を減らすことで、時間やエネルギーに余裕をつくることができるというのが水野さんの考え。

「ルーティンを増やすと効率よく物事が進むうえ、気持ちにも余裕ができます。たとえば日課の散歩をしているときや、シャワーを浴びているときに良いアイデアを思いついた、なんて経験のある方もいるかもしれません。要するに、ルーティンの作業をしていると、頭に“余白”ができてクリエイティブな思考回路が生まれやすい。だから僕は、クリエイティブな仕事こそルーティンにすることをおすすめしています」

ルーティン化したことで生まれた余分な時間とエネルギーを、「ここぞ!」という部分につぎ込む。それが限られた時間のなかでアウトプットのクオリティを上げる、「段取り力」の核心なのだ。

それらを踏まえたうえで、後編では水野さんが実践する「段取り力」の具体的なノウハウ、仕事におけるルーティンの作り方を紹介する。

【お話をお伺いした方】
水野 学(みずの まなぶ)
クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント。1998年good design companyを設立。ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、インテリア、広告宣伝、長期的なブランド戦略までをトータルに手がける。主な仕事に「相鉄グループ」、熊本県「くまモン」、三井不動産、JR東日本「JRE POINT」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、黒木本店、Oisix、NTTドコモ「iD」ほか。著作に『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版)、『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)など。最新刊は、2020年3月に発刊した著述家の山口周氏との共著『世界観をつくる 「感性×知性」の仕事術』(朝日新聞出版)。

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