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リーダーと中間管理職は役割が違う―危機下で結果を出す、冨山和彦のリーダーシップ論

リーダーと中間管理職は役割が違う―危機下で結果を出す、冨山和彦のリーダーシップ論のイメージ

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が経済に大きなダメージを与えている。自らのキャリアパスよりも、会社や事業の存続そのものを心配している人も少なくないだろう。

そんななか、20代・30代の若いビジネスパーソン――特にリーダーやマネジメント志向者にとっては、いまこそが成長のチャンスだと喝破する論者がいる。『結果を出すリーダーはみな非情である』(ダイヤモンド社)などの著書で知られる、株式会社経営共創基盤CEOの冨山和彦さんだ。

危機下にこそ必要とされる、リーダーという役割

冨山さんといえば、大小さまざまな企業の経営改革や成長支援に携わってきた企業再生のスペシャリスト。その経験から、世界のビジネスのルールや経済構造が変わるなか、諸外国の企業に大きく遅れをとっている日本の現状を“有事”とし、いま日本企業に必要なのは“企業を、正しい道へと導くリーダー”であると以前から説いてきた。

リーダーという役割は、危機下にこそ必要とされる。極論すると危機でなければリーダーなど不要。そう冨山さんは言う。

「たとえば金融市場におけるブラックスワンのようなイベント的危機、それから破壊的イノベーションによってビジネスのルールが変わるような局面も企業にとっては危機ですが、そんな状況下では会社の舵取りをどうすればいいのか、過去の傾向や統計をあてにすることができない。そこで必要とされるのが、高度な決断をし、正しい道へと導くリーダーです

つまりリーダーシップとは、決断力と統率力だと考えることもできるだろう。若手にはまだ関係のない話だと思うかもしれないが、「リーダー」は出世の果てに手に入るご褒美的な地位ではなく、特別な能力が必要とされる専門職、というのが冨山さんの持論。

専門職ともなれば、ある程度は実務で経験を積むことが必須である。そのため、リーダーを目指すならその能力を20代・30代の若い時期から磨いておかないといけないのだ。

決断時に必要な「知性」と「合理的思考」

では、リーダーシップはどのようにして磨けばいいのか。

冨山さんによると、磨くべき要素にはソフト面とハード面があるという。ハード面は、いわゆる知識。会計や財務、競争戦略論、マーケティング、組織論などビジネススクールの必須科目になるような知識は、若いうちに身につけておきたい。それが大前提だという。

一方、ハード面よりやっかいなのがソフト面で、こちらの必須要素は「知性」「合理的思考」「ストレス耐性」、それから「洞察力/交渉力」。ビジネススクールに通えば磨けるハード面と違い、ソフト面はビジネスの現場で揉まれて時間をかけて磨くしかない。

図:リーダーシップを磨くための要素と構造

図:リーダーシップを磨くための要素と構造

まず、ここでいう「知性」とはどのようなものを指すのか、噛み砕いていこう。

「知性といってもテストで満点をとるみたいな頭の良さは関係なくて、物事の本質を考えられる賢さ、といった意味でしょうか。たとえば新事業が失敗したときに、原因の本質は何なのかを見極める能力のことですね」

では、その“本質を見極める”とはどういうことなのか。冨山さんはこう例える。

「失敗したときの対応としてよくあるのが、その直接の原因――新事業にフィットした人材がいなかったとか、開発した商品が市場ニーズからずれていたなどと結論づけて、そこで思考を終えちゃうパターン。

じゃあ次は適した人材をアサインしよう、商品企画を修正しよう、などと言ってお茶を濁すんだけど、いや、ちょっと待てと。

掘り下げて考えていくと、そもそも新事業に必要な能力を満たす人材が社内にいないかもしれない。あるいは、そもそも新商品を開発する必要はないのかもしれない。原因の原因を突き詰めれば、組織構造や経済構造の問題に行きつくことがあります。それには、日頃から『なにが本質なのか』考える訓練をして、知性を磨かないといけない

そうして物事の本質を見極められるようになれば、次は「合理的思考」が必要になる。

「新事業では利益が出ないと気づいたときに、どう判断するか。私の経験上、この人はすごいと感じた経営者は例外なくスーパーリアリストでした。みな利益をシビアに追求します。結局のところビジネスの世界においては、いかに崇高な理念や目的があろうと、まずは競争に勝って利益を上げないと意味がない。

つまりある種の冷徹さが必要で、会社を存続させないと理念が実現できない。会社が潰れると社員だって守ることができないわけですよ。それよりは、事業を売却したほうが幸せになる人が多いかもしれない。自社のこの事業でないと人を幸せにできないという考えは、はっきり言って思い上がりですよ」

決断後の統率力を支える「ストレス耐性」と「交渉力」

本質を見極め、判断する。前述した「知性」と「合理的思考」は、リーダーシップでいうところの「決断力」に相当する。

決断をした次は、実行のフェーズ。そこで必要になるのが「ストレス耐性」と「洞察力/交渉力」だ。

たとえば自らの判断で事業や人員を整理するとなれば、精神的に相当な負荷がかかる。それに押しつぶされないメンタルの強さも、リーダーに欠かせない要素だという。

「大きな決断をするときもそうだし、そもそも経営者になれば、いつ会社が倒産するかわからないストレスのなかで日々の生活を送るわけだから。ビジネスの世界で負けたって殺されるわけじゃないという、ある種の達観が必要です。

こればっかりは生まれ持った性格によるところが大きいんだけど、若い頃に失敗を経験するなどして鍛えられるかもしれない。少なくとも、私の知るかぎり失敗をしたことがないエリートはストレス耐性が備わっていないことが多いですね」

リーダーが決断したことを実行する際に、ストレス耐性とともに問われるのが「洞察力/交渉力」。両者は切り離せない関係で、スマートな交渉には洞察力が不可欠だという。

「交渉をうまく成立させるには、相手がなにを考えているのかを察知しないといけない。たとえばきわどい交渉の場で、こちらが交渉決裂をにおわせて席を立ったときに、相手はどう出るか。そこでディールが終わるのか、あるいは続くのか。それがわからないと高度な交渉はできない。

ハードな局面だけではなく、だれかをモチベートするときもそう。相手の本心がつかめていないと、モチベーションにならないものを与えてしまって失敗する。承認欲求が強い人にお金を渡しても、効果は薄いでしょう。その意味でも、洞察力は極めて大事。身につけるには『世の中には多様な人がいる』ことを知る必要があるから、これも若いときにいろいろな経験をしたり、いろいろな人と付き合わないといけない

危機の時代こそ、若手が成長するチャンス

「知性」「合理的思考」「ストレス耐性」「洞察力/交渉力」。冨山さんが考える“リーダーに必要な要素”は、組織に所属している若いビジネスパーソンでも磨くことができる。

物事の本質を見極め、気づいたことがあれば上司や部下に進言し、交渉する――ポイントは「その組織のなかで出世したいという雑念を捨てること」だという。

「だって、上司の顔色を伺い続けて出世して、調整上手なだけの中間管理職になったって仕方がないでしょう? それを目指しているならいいんだけど、中間管理職の延長線上にトップリーダーはない。どちらが偉い、偉くないのではなく、役割が違うんです。

最近はそのことに気づく会社も増えているから、リーダー候補は30半ばから従来の出世コースとは別のトラックに乗せられたりするんだけど。そうして若いうちにタフアサインメントにぶつけて、PL責任とBS責任が伴う仕事をさせる。たとえば商社は事業が細かく分かれていて、若い社員もPL責任をもたされることが多い。だから比較的リーダーが出やすい」

そう冨山さんは言うものの、日本にはまだまだ年功序列のままになってしまっている企業が多いのも事実。どうしても身動きがとれないのなら、成長の場を社外に求めて転職するという手もあるが、今回のコロナショックは、旧態依然とした日本企業のシステムをも変革させるインパクトをもつ。

「こういったタイプのウイルスが流行ったことは人類史上これまでになく、本当に先が読めない。誰の目にもあきらかな“有事”だからこそ、20代、30代のビジネスパーソンにはチャンスです。状況が安定していれば、経験値の高いおじさんたちのほうが強いけれど、いまはゲームのルールが変わろうとしている状況です。若い人の成長にとってこんなに良い時代はないと思いますよ」

コロナによってもたらされた不安定な状況を成長の好機ととるか、たんなる危機ととるか。攻めに出るか、守りに入るか。すべては自分次第だ。

冨山 和彦(とやま かずひこ)
1960年生まれ。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役社長を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。解散後、IGPIを設立、数多くの起業の経営改革や成長支援に携わり、現在に至る。パナソニック社外取締役。2020年6月、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて1週間で書き上げた『コロナ・ショックサバイバル 日本経済復興計画』(文藝春秋)を緊急出版。続けて『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』(文藝春秋)を出版。

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