2020.04.16 NEW
消費より“一時利用”の時代―30代以下は購入前に「いくらで売れるか」を考えている
自動車配車サービスや宿泊施設貸し出しサービス、フリマアプリなど、最近では消費者が提供(売る)側にも利用(買う)側にもなれるサービスが普及している。これらのサービスは「シェアリングエコノミー(共有型経済)」と呼ばれ、インターネット上のマッチングプラットフォームで、場所、移動手段、モノ、スキルなどを他の人が利用可能にする仕組みだ。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会の調査によると、空間やモノの利用率を上げることで経済の活性化が期待されるシェアリングエコノミーの市場規模は、2018年度で約1兆9000億円に。10年後の2030年度には、約6倍の11兆1000億円になると言われている。
数字に表れているとおり、ビジネスの形態が“所有”から“共有”へ、パラダイムシフトが起こりつつある。個人単位に言い換えるとすれば、モノやコトの“消費”から“一時利用”に変化していると捉えてもらえればわかりやすいだろう。
最近では、シェアリングエコノミーでも特にフリマアプリが普及しており、関心を集めている。「いらないモノはフリマで売ってお金にしよう」「安く買いたいから、まずはフリマアプリで検索しよう」と考えたことがある人はきっと少なくないはずだ。
こうした傾向は調査データからも読み取ることができる。2つの調査データから、現代人の消費意識の変化を見ていこう。
モノが一番、“一時利用”されている
まずは、シェアリングエコノミーの利用実態はどうなっているのだろうか?
PwCコンサルティング合同会社の調査によると、「シェアリングエコノミーのサービスで利用したことがあるカテゴリは?」という質問では、レンタルスペースなどの「場所・空間」、カーシェアなどの「移動手段」を抑えて、「モノ」のシェアがトップという結果に(図1)。
出典:PwCコンサルティング合同会社「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019」
※全国の16歳~70代の男女2,000名を対象にしたインターネット調査。2019年5月7日~5月9日に実施。
また、「シェアリングエコノミーの自分自身への影響」を聞いた調査結果では「影響があると思う」と回答した人が53.8%。(図2)
その内訳を見てみると、1位が「金銭的な節約ができる」で31.2%、2位が「サービスの選択肢が増える」で27.4%、3位が「無駄な消費を減らすことができる」で27.0%となった(図3)。
この結果から、シェアリングエコノミーのサービスを利用する理由は主に、節約や利用でできるサービスのバリエーションの多さであることがわかる。
出典:PwCコンサルティング合同会社「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019」
※全国の16歳~70代の男女2,000名を対象にしたインターネット調査。2019年5月7日~5月9日に実施。
また、シェアリングエコノミーのサービスを利用しているのは、主に30代以下がメイン。シェアリングエコノミーのサービスを「利用したことがある」と回答した人の年代別内訳を見ると、30代以下の世代に6割以上が集中している(図4)。
出典:PwCコンサルティング合同会社「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査 2019」
※全国の16歳~70代の男女2,000名を対象にしたインターネット調査。2019年5月7日~5月9日に実施。
10代~30代はモノを買うとき、すでに「いくらで売れるか?」を考えている
30代以下のシェアリングエコノミーの浸透具合は、中古売却意識の調査にも表れている。
株式会社ジャストシステムの調査によると、「中古品としての売却を視野に入れつつ商品を購入することがある」という人は、10代で46%、20代で47%、30代で45.5%という結果に。対して、40代以上では、年代が上がるにつれて割合が低くなっている(図5)。
出典:株式会社ジャストシステム「Eコマース&アプリコマース月次定点調査(2019年7月度)」
※17歳~69歳の男女1,100名を対象にしたセルフ型ネットリサーチFastaskでのアンケート調査。2019年7月23日~7月27日に実施。
また、売却を意識した際の購入単価についても、「中古品としての売却を意識して商品を購入したことがある」と回答した人に、「売却を意識した」場合と「売却を意識しない」場合で購入単価がどう変化するかというアンケート結果がある。すると、「売却を意識した」方が、商品の購入単価が「高いことがある」「高いことが多い」と答えた人の合計が50.4%という結果に(図6)。
特に、単価が高い商品を購入する場合、半数以上の人にとっては「後で売却できるかも」といった気持ちが購入を後押しすることがわかった。
出典:株式会社ジャストシステム「Eコマース&アプリコマース月次定点調査(2019年7月度)」
※17歳~69歳の男女1,100名を対象にしたセルフ型ネットリサーチFastaskでのアンケート調査。2019年7月23日~7月27日に実施。
日本ではもう何年も前から“若者の消費離れ”という言葉が聞かれ、クルマやブランド時計などの高級品に見向きもしない若い世代の人たちが増えている。
しかし、中古品としての売却を意識して、一生使うのではなくそのうち売る――ある意味「一時的に利用するモノ」として高価な商品などを利用する人が特に若者に多いことがわかった。
ここまでの調査から見えてくるのは、そんな若い世代の人たちの、モノを「消費」するのではなく「一時利用」するといった新しい消費意識だ。日本でここ数年普及し始めているシェアリングエコノミーが、そうした若い世代を中心とした人たちの消費意識に影響を与えているのかもしれない。
消費者の3つのタイプ、あなたはどれに当てはまる?
「消費」から「共有・一時利用」にシフトしつつある社会では、主に以下の3タイプに大別することができるだろう。
- Aタイプ:新品で買って、最後まで使い続ける
- Bタイプ:新品で買って、中古として売る
- Cタイプ:中古で買って、最後まで使い続ける
「質の良さ」を優先する人は、新品を購入するAもしくはBタイプ、「バリエーションの多さ」を優先する人は、買いまわすBもしくはCタイプが当てはまり、「購入費用の安さ」を優先する人は、中古で安く入手するCタイプが当てはまる。
「衣服はいろいろ着たいからBタイプで、本は中古でいいからCタイプ。家は新築でずっと住める家がいいからAタイプ」といったように、モノの対象によって優先する項目が異なり、タイプが切り替わる人も多いだろう。
日本で人口減少が進むという前提で言えば、単純に考えるとモノの総消費量は減少していくだろう。そのため、これからは“新しいモノ”を作るよりも、“今あるモノ”を効率よく活用して人々の課題を解決する新しいシステムをつくるビジネスやサービスのニーズが高まっていく可能性が大きい。
日頃から不便に感じたことをサービス化できないかと考えたり、自分用としてまとめている知見を公開してみたりすると、意外なところに新たなビジネスチャンスを見つけられるかもしれない。