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2019.10.21 NEW

「アフター5G」のGAFAは誰だ? 第四次産業革命がもたらすインパクト

「アフター5G」のGAFAは誰だ? 第四次産業革命がもたらすインパクトのイメージ

5Gが、「GAFA」の時代に終わりをもたらすかもしれない――。

2020年、ついに待望されていた5Gが日本でも本格的に導入される。2019年の夏、総務省の総合通信局は各通信業者に5Gの商用免許を交付。大手キャリアが各社ともに5G開始に向けたPRを盛んに行っているのはご承知の通りだ。

しかし、5Gのもたらす本当のインパクトは、「4Gから5Gへ」といったような、インターネット史の枠のみに収まるものではない。より大きなフレーム、産業構造レベルの視点から捉える必要がある。ともすればGAFAすらをも過去の企業にしてしまいかねない可能性を秘めているからだ。

そもそも5Gとは

5Gのいったい何がそこまで凄いのか。その前に改めて、「5G」とは何かを振り返っておこう。

5Gとは「5th Generation(第5世代移動通信システム)」のこと。80年代にスタートしたアナログ方式の通信システム(第1世代)から数えて5つめの通信規格という意味だ。

この通信システムは、およそ10年のスパンで更新されており、2019年現在の主たる通信システムは4Gに該当する(図1)。

図1:5Gへの進化

図1:5Gへの進化

出典:総務省「2020年の5G実現に向けた取組」より編集部作成

「1G」はアナログ形式の音声通話、「2G」はパケット通信によるメールやインターネット利用を可能にし、「3G」はウェブを通じたさまざまなサービス、「4G」は大容量コンテンツの利用を可能にした。

特に、3Gから4Gへの移行に伴いスマートフォンが普及したことで、社会システムが大きく変化したことは記憶に新しい。

4Gへ移行した際に私たちが受けた印象は、「スマートフォンで動画がスムーズに、高画質で観られるようになった」「ネットがサクサクになった」というものであった。そのため、5Gに対しても同様に「次はどれほど携帯電話を便利にしてくれるのか」という期待を抱いてしまう傾向にある。しかし、それは5G全体のインパクトからすると枝葉の部分にすぎない。

国際電気通信連合(ITU)は5Gによってもたらされる変化を3つの要素、「高速大容量通信」「超信頼・低遅延通信」「多数同時接続」から説明している(図2)。「動画の読み込み速度が上がる」などは、この3要素のうち「高速大容量通信」のみに過ぎない。重要なことは、この3つの変化が掛け合わさったときにどのような変革が生じるかだ。

図2:5Gがもたらす3つの変化
  数値 具体例
高速大容量通信 最高伝送速度 10Gbps(現行LTEの100倍) 4K/8Kなど高精細映像も超高速に伝送
超信頼・低遅延通信 1ミリ秒程度の遅延(現行LTEの1/10) 自動運転、遠隔ロボット操作(リアルタイム操作、ミッションクリティカルなIoT)
多数同時接続 100万台/km²の接続機器数(現行LTEの100倍) 狭いエリアでの同時多数接続、スマートメーター、インフラ維持管理(多数接続、低消費電力なIoT)

出典:総務省「2020年の5G実現に向けた取組」より編集部作成

近年、なぜ自動運転技術が大きな話題を集めているのか。それは自動運転技術が、これら5Gがもたらす3つの変化全てを要求する技術であるからだ。

ここで注目したいのは、5Gの導入が「自動車産業」のような、これまでのIT領域とは異なる領域とインターネットを接続し、産業の姿を大きく変えようとしている点である。

その変化の大きさは、「第四次産業革命」の始まり(ないしは完成)と呼ばれるほどだ。

第三次産業革命の覇者はGAFAであった

2016年1月にスイス・ダボスで開催された第46回世界経済フォーラム(WEF)において、WEFは第四次産業革命を、あらゆるモノがインターネットにつながり、新たな製品・サービスの開発につながる社会となる産業革新であると定義している。そして現在、5Gの導入はまさにそうした変化を加速しようとしている。

これまでの産業革命は、たとえば第一次産業革命において蒸気機関(蒸気エネルギー)の発明が工場制機械工業を急速に発展させたように、その革命ごとにさまざまな産業を大きく発展させてきた。

図3:産業革命の主要因と影響を受けた産業
  主要因 影響を受けた産業
第一次産業革命
(18~19世紀初頭)
蒸気機関 工場製機械工業
第二次産業革命
(19世紀後半)
ガソリン/電力 重化学工業
第三次産業革命
(20世紀後半)
コンピューター IT産業
第四次産業革命
(21世紀)
5G/AI ??

出典:各種資料より編集部作成

「デジタル革命」とも呼ばれた第三次産業革命は、コンピューターの発達によってIT産業を発展させた。それを代表する企業群が「GAFA」などだと言えるだろう。今から20年前、こうした企業がここまで成長すると予測できた人がどれほどいただろうか。

しかしそれを裏返すと、同じように大きな産業革新が起こりかけている現在は、その20年前と同じだけの投資機会、ビジネスチャンスに溢れているタイミングだといえるかもしれない(今から20年後、GAFAが今の地位を維持できるのか、それとも前世代の企業として古くなっているのか、私たちはまだ分からないでいる)。

では、そのチャンスをいかに掴むか。第四次産業革命の恩恵を受けるのは、どのような産業・企業なのか。

「第四次産業革命」のスタンダード―「B2B2X」モデル

5Gが一番インパクトを発揮するのは、B2B領域であるといわれている。5Gの「高速大容量通信」「超信頼・低遅延通信」「多数同時接続」という3つの特性は、IoTを中心として、企業の可能性を飛躍的に向上させることができるからだ。

5Gが本格的にスタートすれば、さまざまな業種の企業が通信業者と協力し(デジタルトランスフォーメーション支援を受け)、これまでになかった新しいサービスを提供するようになることが予測されている。「5Gでミライが変わる」といわれる際に語られていることの多くは、「5G」そのものではなく、こうした事業会社間の連携から提供されるサービスの結果だ。

通信事業者(B2)による協力のもと、「センターB」と呼ばれる他の事業会社(B2)がエンドユーザー(X:個人または企業)に新しいサービスを展開する。こうしたモデルは「B2B2X」と呼ばれ、5G導入後のスタンダードになるといわれている(図4)。

図4:B2B2Xモデル

図4:B2B2Xモデル

出典:総務省「平成30年版 情報通信白書」より編集部作成

ひとつの例としてあげられるのがMaaSだといえるだろう。

MaaS(Mobility as a Service)とは、自動運転やAI、オープンデータなどを掛け合わせることで実現する「目的地への移動を最適化しサービスとして提供する仕組み」のこと。MaaS事業者は、通信事業者のもつエンドユーザー情報をもとに、これまでは個別に存在していた交通手段を束ね、ユーザーにとって最適なかたちでパッケージングして提供する。

日本でも、某自動車メーカーが「自動車をつくる会社」から、世界中の人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティ・カンパニー」(MaaS事業者)にモデルチェンジすると宣言したことが大きく話題となった。これはつまり、「B to C」企業から、「センターB」事業者になるという宣言といえるだろう。

自動車業界に限らず、現時点で、5Gがスタートすることで、建設機械における遠隔操作や医療業界における遠隔医療などが実現すると言われている。今まででは想像も出来なかったようなサービスが5Gの実現により新たに生まれてくるだろう。

20年前にGAFAのような企業がここまで成長すると予測できなかった。そして次なるGAFA、第四次産業革命以後における勝者が、5Gを活用した新たなサービスを生み出した企業の中から生まれてくるかもしれない。私たちは現在、そうした転換期を迎えているのである。

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