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2020.04.23 NEWエッジな視点

中国新御三家「TMD」とは何か? それでも中国プラットフォーマーが伸び続ける理由

中国新御三家「TMD」とは何か? それでも中国プラットフォーマーが伸び続ける理由のイメージ

中国プラットフォーマーの勢いが止まらない。

「中国版GAFA」と呼ばれるBATの躍進ぶりは、今や日本でも広く知られるようになった。そして現在注目を集めているのが、ポストBAT、中国の新御三家と呼ばれる企業群「TMD」だ。

TMDとBATの違いは何なのか? なぜTMDが注目を集めているのか? 中国ビジネスの専門家に詳しく話を聞いた。

BATを成長させた中国の「困りごと」とは?

そもそもなぜ、BATと呼ばれる中国プラットフォーマーはここまで成長することができたのか。

「BATは、伝統産業が解決できなかった中国社会の“困りごと”を解決することを通じて成長してきました」と語るのは、株式会社NTTデータ経営研究所にてシニアスペシャリストを務める岡野寿彦氏だ。

「後にBATと呼ばれる企業群は、中国でインターネットが普及しはじめた2000年頃の起業ブームから誕生しました。その当時、私は北京の現地法人で社長をやっていたのですが、会社から独立して起業する人が後を絶たなかったのを覚えています。

その大半はいわゆる“Copy to China”と呼ばれる、アメリカのビジネスモデルを中国に持ち込んだものでした。その多くは消え去りましたが、一部は生き残った。それがBATなのです」

図1:中国三大テック企業(BAT)

図1:中国三大テック企業(BAT)

出典:「NOMURA FUND21 vol.137」

生き残った3社は、いずれもプラットフォームビジネスを中心に展開する企業であった。その理由として、岡野氏は「プラットフォーム・モデルと、経済成長段階にある国の相性の良さ」を指摘する。

「わかりやすい例はアリババです。彼らが登場した2000年代初頭、中国のEコマース市場には信用のできる決済手段や物流の仕組みが整っていませんでした。アリババは、そこに信頼性の高い決済ツール“アリペイ”を提供し、消費者や事業者の“信用”を可視化することで成長してきた。つまり、中国に存在する“困りごとの空間”を埋めることで彼らは成長してきたのです」

BATが登場した2000年代、中国のEコマース市場はある意味「偽物市」のようであったと岡野氏は語る。ユーザーが商品を購入しようにも、「商品を届けたのに代金が支払われない」「お金を払ったのに商品が届かない」といったようなトラブルが相次いでおり、Eコマースでの取引の信用がとても低い状況だったのだ。

「そうした中、アリババは小売りとユーザーをマッチングするプラットフォームを作り、両者が安心して取引するためのインフラを整備した。顧客体験を重視し、消費者を集客して、企業に広告枠などの形で売ることで、成長してきました」と岡野氏は説明する。

図2:BATのビジネスモデル

図2:BATのビジネスモデル

「同じく、バイドゥは検索エンジンによる検索者と広告主をつなぎ、テンセントはSNSを中心としてユーザーとユーザーをつなぐことで顧客接点を増やして成長してきました。しかし今、こうしたモデルには限界が見え始めています」

こうしたビジネスは、埋めるべき「困りごとの空間」が存在していること、ネットユーザー数が増えていくことを前提としている。現在の中国のように、一通りの仕組みが整い、消費者がお金を出してでも買いたいと思う魅力的な新規サービスの創出が難しくなると、顧客獲得コストが上がる。収益性が低下することが避けられないのだ。

そうした中で、「ポストBAT」として頭角を現し始めたのが「TMD」と呼ばれる中国新御三家だ。

TMDは何故市場参入できたのか

TMDは、2010年代におけるスマートフォンの普及や高速無線通信「4G」の普及を機会として、BATの用意した基盤を利用しつつ、専門性のある分野においてユーザーを囲い込むことで成長してきた企業群だ

図3:新・中国三大テック企業(TMD)

図3:新・中国三大テック企業(TMD)

出典:「NOMURA FUND21 vol.137」

それぞれのビジネスについて、岡野氏は次のように説明する。

「トウティアオは、ティックトックを運営するバイトダンスを親会社に持つ企業です。AIを用いたニュースアプリで一世を風靡しました。メイチュアンはフードデリバリーサービス、ディディはUberのような配車サービスです。この3社の共通点は、消費者と企業をマッチングするだけでなく、自らが専門とする事業領域で、供給者を育てながら成長しようという意識にあふれている点にあります」

「たとえば、いまや中国の配車サービスシェアの9割を握っているディディは、運転手を儲けさせるための仕組み作りに力を入れて成長しました。AIやビッグデータなどを用いることでドライバーと乗客のマッチングを効率化するなど、より運転手が儲かる仕組みを可能にしているのです」

図4:TMDのビジネスモデル

図4:TMDのビジネスモデル

こうした特徴は、ほかの2社においても同様に見られると岡野氏は続ける。

「フードデリバリーのメイチュアンも、飲食店の仕入れや経営管理を効率化するシステムを提供したり、“美団大学”という飲食店経営者にデジタル教育を施すための機関を創設したりしました。トウティアオも、アマチュアエコノミーを促進し、コンテンツ配給者を儲けさせるためのプラットフォームを運営しています。

供給者が儲かればサービスのクオリティが高まるため、ユーザーも集まる。そうしたサイクルを回すことで成長しているのがTMDだといえるでしょう

また、BATが2000年代初頭に立ち上がった企業群であるのに対し、TMDは2010年代に立ち上がった企業ばかり。経営者全員が80年代生まれと、ITリテラシーが高い世代が中心となっている点も特徴だ。

全体感を持って予想せよ!

気になるのは、こうした中国プラットフォーマーが国外に進出する可能性があるのかということだ。岡野氏は、プラットフォームビジネスは、各国の国内産業やセキュリティにもかかわるため、中国モデルの輸出は容易ではないであろうと予測する。

「東南アジアなど新興国でも、中国プラットフォーマーが自国のデジタルインフラに強い影響力を持つことを警戒する国は少なくないでしょう。しかし一方で、誰もが良いサービスは活用したいと考えている。我々だって、日本の企業を応援するためにGAFAを使わずに国産のアプリを使うかといえばそんなことはない(笑)。既にティックトックなどは市民権を得ていますし、競争の激しい中国市場で磨かれた、個別のサービスが受け入れられる可能性は十分にあるといえるでしょう」

とはいえ、アメリカと中国以外の国においても、近年は巨大プラットフォームの勃興が目覚ましい。たとえば中南米などでは、BATが成長した頃の中国と同様に、さまざまな社会課題を背景としてスタートアップが圧倒的な速度で成長を遂げている最中だ。

図5:中南米向けベンチャーキャピタル投資額の推移

図5:中南米向けベンチャーキャピタル投資額の推移

出典:「NOMURA FUND21 vol.137」

また、TMDが4G導入のタイミングで成長したように、これから本格的に導入がはじまる「5G」など、通信環境が拡大・進化するタイミングにあわせて、各国から「ネクストGAFA」といえる企業が現れてくることは想像にかたくない。

こうした海外のベンチャー事情を把握するためには、どのような点に着目すべきなのか。岡野氏は次のように語る。

大切なことは“全体感”を持って眺めることです。たとえばTMDの場合も突如現れたわけではなく、先に説明した技術の進化や、“困りごと”などの社会的背景、政府の政策などが融合して登場したという経緯があります。メディアは1つの伸びている企業だけを取り上げて“〇〇現象”のような表現を用いがちですが、なぜその現象が起こったのか、その要因の構造を分析する意識を常に持っておきたいですね」

5Gの導入や、新型ウイルスによる経済変動など、社会は今まさに大きな変革期にあるといえる。そうした中で、各国からあらわれるであろう多様なベンチャー企業群。こうした波をとらえることができるかどうかは、日々の情報収集や深い文脈理解に左右されると言えそうだ。

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