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2020.06.11 NEWエッジな視点

リモート普及後もトレンドは続くか――3畳ワンルームの超狭小物件が人気の理由

リモート普及後もトレンドは続くか――3畳ワンルームの超狭小物件が人気の理由のイメージ

若者が一人暮らしをする部屋として、これまでの常識とは異なった物件が人気を集めはじめている。

国土交通省が公表している「住生活基本計画」によると、人が健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な「最低居住面積水準」は、単身者で25m²。たとえば、キッチンやユニットバスなどが付いたワンルームや1K。賃貸物件数が多く、“一人暮らし”と聞いて多くの人が第一にイメージしそうなこうした間取りの部屋を見ると、水準に近い20m²前後というのが一般的な広さ。

ところが、ここ数年で東京都心を中心に増えてきているのが、その約半分の広さしかない、面積10m²ほどの「狭小賃貸」物件だ。設備は整っていて、キッチンと、風呂とトイレが別についた3畳ほどの居室に加え、ベッドスペースとしてロフトが付いているのが、スタンダードな狭小賃貸の間取り。

「われわれが狭小賃貸のトレンドを実感し始めたのは2017~2018年のこと。そうした物件が増加してきた背景としては、住まい手側に“立地を重視する”人が増えてきたことが挙げられます」

そう話すのは、住まいの最新トレンド事情に詳しい株式会社リクルート住まいカンパニー「SUUMO(スーモ)」編集長の池本洋一(いけもと よういち)さん。狭小賃貸のトレンド事情について伺った。

広さを諦めて立地を重視する理由

都心の好立地な場所に部屋を借りるとなると、当然ながら家賃は高くなる。「そこで以前なら、立地重視の人たちはまず“築年数”にこだわることを諦めて古い物件を探しました。しかし、最近では“築年数”ではなく“広さ”を諦めるようになってきたのです」と池本さんは説明を続ける。

「立地を重視する人の中には、勤務先へのアクセスの良さだけでなく、自分が住む地域のコミュニティに価値を見出す人が増えています。たとえば私が以前に取材したパーソナルトレーナーの方は、自分の顧客になる人たちと同じエリアに住みたいからと、家賃を予算内で抑えるために狭小賃貸を選んでいました。

つまり、自分のキャリアや、ネットワークなどを切り拓いていくうえで、住む場所が重要だと考える人がここ数年で増えているのです」

“朝活”のためのコミュニティやコワーキングスペースの流行など、近年みられるコミュニティの価値を評価する流れが、こうした立地を重視する価値観を加速させているのかもしれない。

また、池本さんによると、立地を重視する意識が高い人たちは情報感度が高く、通信環境や設備については新しいものを求める傾向があるという。その結果、広さよりも立地と最新の設備を重視する住まい手のニーズに応じた、狭小賃貸が増えているというのが池本さんの分析だ。

一方、貸し手側の状況にも変化がある。この5年間で都内の新築マンションの分譲価格は約1.4倍に上昇。「価格上昇局面においては価格や設定家賃を抑えるために、供給者側は物件の狭小化を考える傾向がある」という。供給側の事情による狭小化の流れも、狭小賃貸が増えているひとつの理由かもしれない。

3畳のワンルームに暮らせる人の共通点

しかし、ベッドスペースとしてのロフトがあったとしても、居室部分はたったの3畳ほどと、大人一人が足を伸ばすのにも慎重になってしまうような狭さ。狭小賃貸は、どのような人が暮らすのに適しているのか?

「狭小賃貸には『首都圏の実家から一度くらいは出て、一人暮らしがしたい』というような人たちのニーズもあります。そうした人なら実家に荷物を置いておけばいいですが、そうでない場合は断捨離ができる人でないと3畳の部屋には住めません。

私が取材した例でいうと、必要なものだけを部屋に置き、不要なものはメルカリなどですぐに売却する。あるいはスマホで管理できるサマリーポケットのような収納サービスを利用して、とにかく手元のモノを最小化する工夫をしていました」

他には、衣類なども最小限で、テレビを置かないことはもちろん、なかにはコインランドリーが近くにあるから洗濯機は置かないという人もいるのだとか。外部のシェアサービスなどを上手く使い、とにかくモノを所有せずに無駄なく暮らす。立地を重視する意識に加え、そうしたミニマリスト的な価値観と親和性が高いことも、池本さんが見てきた狭小賃貸を選ぶ人の共通点だ。

2020年、狭小賃貸のトレンドは継続するか

狭小賃貸の需要は増加傾向にあり、物件数も確実に増えている。しかし、2020年はリモートワークが一気に浸透するなど、ライフスタイルや生活の行動が一変した人が多い年であった。そうした変化を鑑みても、現在の狭小賃貸のトレンドは続くと予想できるのか。

「SUUMOでは以前から、リモートワークの普及を予測し、今年の住まい領域のトレンドワードとして“職住融合”に注目していました」と前置きしたうえで、池本さんは次のように続ける。

「われわれの調査によると、100%のリモートワークを望んでいる人はあまり多くなく、会社と自宅でバランスを取りながら仕事がしたいと考えている人が多いようです。しかし、あまりにも狭い部屋ではワークスペースの確保が難しい。

それを配慮するなら、立地よりも広さに軸足を置く人が一定数は残ることが予想されますが、一方で狭小賃貸にも底堅いニーズがあると思っています」

そう予想するのは、日本の賃料事情には特徴があるからだ。今回の感染拡大の影響で、一部では東京の地価や物件価格に悪影響があると予想する人もいるが、「たとえどれだけ物件価格が上がり下がりしても、借り主の権利が強い日本では賃料に粘着性があるため、それほど大きな値動きにはなりません」と池本さんは言う。

「実際に5月(取材時)もSUUMOのお問い合わせ件数は減っていませんし、これから先も都内の賃貸物件の家賃が一気に下落するということはないでしょう。

そういった理由から、相場よりも安い賃料で都心の好立地な場所に住みたい人にとっては、狭小賃貸が依然として有力な選択肢になると思います」

住みたい街に住みながら、毎月の住居費を抑えることができる狭小賃貸。特に若い世代であれば、暮らしをできる限りシンプルにして浪費を抑え、その分を自分の将来や趣味への投資にまわすことは合理的な選択とも言えるだろう。

住まいは、キャリアプランや関わる人間関係など、人生計画全般に大きく関わる選択だ。これからのプランを考えるとき、新たな住まいの選択肢も候補に、柔軟に検討してみてはいかがだろうか。

【お話をお伺いした方】
池本 洋一(いけもと よういち)
株式会社リクルート住まいカンパニー「SUUMO」編集長。1972年滋賀県生まれ。1995年上智大学新聞学科卒業。同年株式会社リクルートに入社。住宅情報誌の編集、広告に携わったのち、住宅情報タウンズ編集長などを経て、2011年より現職。住まいの専門家としてテレビ・新聞・雑誌などのメディア出演、講演や、執筆を行う。

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