2025.05.29 NEW
エヌビディア好決算、時間外で株価上昇 他の半導体関連銘柄に買いが波及 野村證券・村山誠
写真/竹井俊晴
2025年5月28日引け後(日本時間29日早朝)、米半導体大手エヌビディアの2025年2-4月期決算が発表されました。今回の決算内容について、どのように捉えたらよいのでしょうか。米国株式市場への影響も含め、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの村山誠が解説します。
エヌビディア決算の結果と市場予想との比較
一言でいえば好決算だったと言えます。まず、2025年2-4月期の売上高は前年同期比+69.2%の440.62億ドルとなり、ファクトセット集計による市場予想平均の433.40億ドルを上回りました。期初に会社は430±2%億ドル(421.40~438.60億ドル)との見通しを示していましたが、この会社予想レンジも上回る結果となっています。
続いて、売上高調整後総利益率は61.0%となり、前年同期の78.9%から低下しました。しかし、市場予想平均である57.7%は上回る結果となっています。一方、期初に会社が示した見通しである71.0%からは下回る結果となりました。これは、4月9日の米国政府による規制により、中国向けに開発した製品H20の輸出ができなくなったことに伴う過剰在庫等が要因です。
調整後EPS(1株当たり利益)は前年同期比+32.8%の0.81ドルとなり、市場予想平均の0.73ドルを上回りました。なお、調整後EPSについては、会社は期初予想を示していませんでした。
決算発表後の市場反応
エヌビディアの株価は、28日の通常取引を前日比-0.50%の134.81ドルで引けた後、決算発表を受けて、時間外取引で上昇しました。NY時間20:00時点では、終値比+4.88%の141.40ドルとなっています。決算実績で売上高や調整後EPSが市場予想平均を上回ったことを好感したと推察されます。
また、決算資料の中で、ジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は、推論専用に設計された「思考する機械」であるBlackwell(ブラックウェル) NVL72 AIスーパーコンピューターが、システムメーカーやクラウドサービスプロバイダーを通じて、本格的な量産体制に入っているとコメントし、加えてAIインフラに対する世界的な需要が非常に強いとコメントしました。
エヌビディアの製品に対する需要の強さが示されたことに、株式市場はポジティブに反応していると推察されます。
米国関税を巡る不透明感の中でも製品需要の堅調さを確認
市場別の売上高をみると、データセンター向けが前年同期比+73.3%、前四半期(2024年11月-25年1月期)比+9.9%の391.12億ドルとなりました。ファクトセット集計による市場予想平均は393.60億ドルだったので、若干これを下回りましたが、引き続き高い伸び率となっています。
会社によれば、大規模言語モデルや、推奨エンジン(インターネット・サービスなどで、ユーザーに関連性の高いコンテンツや製品、サービスを提案するためのアルゴリズムやシステム)、生成AIアプリケーションなどでの需要が牽引したとのことです。
ゲーム向けは前年同期比+42.2%、前四半期比+47.9%の37.63億ドルとなりました。米国政府による対中技術規制に加え、関税政策に伴う不透明感がある中、AI向けを中心にエヌビディアの製品への需要は引き続き非常に強いことが確認できたと思います。
決算発表後、他の半導体関連銘柄に買いが波及
エヌビディアの決算発表後、時間外取引で、ブロードコムやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ、アーム・ホールディングスなどの半導体銘柄、アプライド・マテリアルズやラムリサーチなどの半導体製造装置銘柄も上昇しています。
先述の通り、会社がAIインフラに対する世界的な需要が非常に強いとコメントしたことから、AI関連のデータセンターなどへの設備投資は拡大基調を維持しているとの見方が広がり、他の半導体関連銘柄に買いが波及していると推察されます。
今後、テクノロジー株に影響を与えるイベント
6月3日に、世界の主要半導体メーカーで構成される業界団体、WSTS(世界半導体市場統計)が、2025年春季の半導体市場の見通しを発表する予定です。
前回、2024年12月3日に発表した2024年秋季の見通しでは、2024年については、AI関連投資が好調で、これに伴って需要が拡大しているメモリー製品やGPUなどのロジック製品が好調な一方、AI関連を除くと、自動車向けや産業用途は不振とされていました。
2025年については、データセンター投資の継続に加え、AI機能搭載端末の増加など裾野の広がりが期待され、AI関連の半導体需要は引き続き拡大が予想されるとしていました。加えて、2024年には不振であった自動車向けや産業用途の製品群でも、前年比プラス成長に回帰すると予測していました。発表された際には、この方向に変わりはないか、チェックしたいと思います。
また、例年WSTSの春季予測では、翌年の分が示されます。今回について言えば2026年の予測が新たに示されるとみられ、製品別の動向など、その内容が注目されます。半導体ではありませんが、6月9~13日には、アップルが同社の開発者会議、WWDC(World-wide Developer Conference)を開催する予定です。
アップルの株価は、5月21日にOpenAIが、アップルの初代iPhoneのデザインを統括したジョニー・アイブス氏が設立したAI端末開発の新興企業io Productsを買収すると発表したことをきっかけに下落しました。OpenAIは、従来のスマートフォンやパソコンに代わる新しいデバイスやサービスの投入を目指すとしていて、アップルのビジネスモデルが、脅威にさらされる可能性が意識されているとみられます。 WWDCでは例年、ソフトウエア戦略を中心に、関連するデバイスや技術開発の方針が説明されており、内容が注目されます。

- 野村證券 投資情報部 シニア・ストラテジスト
村山 誠 - 1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。
※記事の中で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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