
ファイナンシャル・
ウェルネス研究会 Financial Wellness Research Institute
有識者:山梨大学 西久保浩二名誉教授、一橋大学 円谷昭一教授、慶應義塾大学 森戸英幸教授、
ウェルスペント 横田健一代表、一橋大学 伊丹敬之名誉教授
アドバイザー:フィンウェル研究所 野尻哲史代表
参加企業:伊藤忠商事、オリックス、住友林業、東京エレクトロン、豊田自動織機、ニチレイ、
日本ガイシ、三井化学
※五十音順、「株式会社」は省略しております。
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1.ファイナンシャル・ウェルネスと企業の福利厚生制度
労働市場で人手不足が続く中、企業においては優秀な人材に「選ばれる存在」になるための施策が重要課題であり、従業員のファイナンシャル・ウェルネス支援もその中に位置付けられる。実証研究により、福利厚生制度が、従業員のファイナンシャル・ウェルネス、さらには定着性、勤勉性、貢献意欲、エンゲージメントへのプラスの効果を有することが確認されている。独自色を打ち出し、他社との差別化が可能な点も、福利厚生制度の特徴と言える。
第一章
ファイナンシャル・
ウェルネスと
企業の福利厚生制度View Report -
2.株式報酬と人的資本開示
近年、株式報酬の付与対象を、役員や幹部職員だけでなく幅広い従業員に拡張する動きも散見される。企業価値のうち従業員という人的資本により生み出された部分は従業員に帰属させるのが望ましいという考え方があるが、その一つの方法として株式報酬を位置付けることも検討の余地があろう。株式報酬の対象範囲は、実施目的に基づき、オペレーションの側面にも留意しつつ、企業毎に設定するのが適当となろう。
第二章
株式報酬と
人的資本開示View Report -
3.企業年金改革の行方
2024年は5年に1度の公的年金財政検証と併せて私的年金改革が議論され、確定拠出年金の拠出限度額引き上げ、企業年金の「見える化」(運用状況等の情報開示の強化)の施策などが改革事項として打ち出された。月額7,000円の引き上げは有意義であり、今後物価上昇が継続して老後の必要資金が増加する場合は、限度額の更なる引上げが望ましいと言える。また、企業としては「見える化」に当たり、従業員と株主等のステークホルダーの両方を意識して、戦略的に情報開示することが重要となろう。
第三章
企業年金改革の行方View Report -
4.ファイナンシャル・ウェルネスの実現に必要な金融リテラシー
従業員は、しばしば公的な制度や職場の福利厚生制度について十分認知・理解しないまま、年金や医療費などについて漠然とした不安を抱えている。企業としては、継続的に情報提供し、従業員の認知度や理解度向上に努めることにより、結果として満足度やロイヤリティが高まることが期待できる。さらに、例えば健康経営銘柄やなでしこ銘柄のように、ファイナンシャル・ウェルネス支援に関する表彰の仕組みや認定制度があれば、会社としてリソースを投入しやすくなる可能性もあろう。
第四章
ファイナンシャル・
ウェルネスの
実現に必要な
金融リテラシーView Report -
5.ファイナンシャル・ウェルネスの源泉
企業の競争力の源泉は働く人々の知恵とエネルギーであり、ファイナンシャル・ウェルネスの源泉は従業員に対する十分な分配と言える。企業は、バブル崩壊以降の、設備投資と人件費を抑制して株主への分配を強化するトレンドを修正すると共に、魅力ある職場作りを行い、仕事の場で人が育つように細かい工夫を重ねることが求められる。なお、従業員が過度なリスクを負わないことを前提に、株式報酬を通じて従業員イコール株主とすることも一つの方策と言える。
第五章
ファイナンシャル・
ウェルネスの
源泉View Report