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2021.12.09 NEW

午後4時に仕事が終わる!? ――フィンランド人から学ぶ効率的で幸福な生き方

午後4時に仕事が終わる!? ――フィンランド人から学ぶ効率的で幸福な生き方のイメージ

日本では「働き方改革」が叫ばれるようになり、ワーク・ライフ・バランスがより重視されつつあるが、まだ改革の成果を実感していない人も多いのではないだろうか。

今回紹介する『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社)を読めば、働き方や生き方に対して新たな気づきを得られるだろう。

フィンランドでは、16時を過ぎるとオフィスから人がいなくなり、夏には1カ月以上の休みをとる。さらに1人当たりのGDPは日本の1.25倍(2019年、IMF)で、スタートアップ企業が増え、ヨーロッパのシリコンバレーと呼ばれるほど盛り上がっている。世界幸福度ランキングは2018年から4年連続で1位だ。日本人からすると「そんなことできるの?」と思わずにいられないことばかりだ。

日本では長時間労働や有給休暇消化率の低さなどが問題視されているが、新型コロナウイルスのパンデミックにより、ニューノーマル時代が到来し、さらに働き方の変化を迫られている。そんな日本がフィンランドの働き方やライフスタイルから学ぶことは多いはずだ。

フィンランドの「働き方」

同僚や上司が残業をしていると、自分だけ定時で帰るのは気が引けてしまうという人も多いだろう。だが、フィンランドでは「残業しないのが、できる人の証拠」と考えているため、誰かの顔色をうかがう様子は見られない。そうしたフィンランドの働き方を支えるのは、環境づくりやオン・オフの切り替え、効率性の追求だ。

では、フィンランドの働き方の5つの特徴を見ていこう。

(1)在宅勤務の採用

コロナ禍以前から週に1度以上、在宅勤務をしている人は3割ほどいる。職場から家が遠い、幼い子どもがいる、家の静かな環境で集中したい、など、それぞれのライフスタイルに合わせて働くことができる。

(2)フリーアドレスの導入

席が自由というだけでなく、パーテーションで区切られたエリアや電話ボックスのようなエリア、ビデオ会議用の会議室、ソファエリアなど、業務内容や気分に合わせて選べるように、さまざまな席を設けている企業が増えている。

(3)休憩やオフの時間を重視

エクササイズ休憩、10分~15分のコーヒー休憩、職場を離れて社員が交流するレクリエーションデイなど、休息やコミュニケーションの場を設けることで、仕事の能力ややる気の維持、改善を図っている。

(4)生産性の高い会議の開催

「会議のはじめに目標を確認する」「会議の議論と決定に全員を巻き込む」といった、「良い会議」のためのルールを設けたり、創造性を高めるためにサウナで会議を行ったりしている。

(5)男性も8割が育休を取得

子どもが3歳になるまで育休が認められている。休む人に代わって代理の人を雇うため、周りにしわ寄せが生じづらい。

このように、フィンランドでは従業員の働きやすさを追求することで生産性をあげていることがうかがえる。

日本でもフリーアドレスを導入する企業が増えていたり、コロナ禍で在宅勤務が以前より浸透したりなど、職場環境は変化しつつある。また、男性も育休を取得しやすいように、2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行される予定だ。

少しずつ働きやすい環境が整いつつあるが、会議の目的を明確化し、生産性向上を目指すなど、個人で始められる改善点は積極的に取り入れていきたい。

フィンランドの「休み方」

フィンランドでは働くことと同じくらい、休むことを大切にする。フィンランド流の休み方について、4つ紹介する。

(1)自分の時間を大切にする

平日の定時後や週末は、趣味、スポーツ、友人に会う、生涯学習など、人それぞれ自分の時間を大切にしている。共働き世帯の親も例外ではなく、家族の時間を楽しむ。フィンランドには身近に自然があるため、ベリー摘みやきのこ狩りなど、自然の中で余暇を楽しむ人もいる。

(2)睡眠時間は十分に取る

日本人の睡眠時間は6時間以上~7時間未満が最も多いとされているが(注)、フィンランド人の睡眠時間は平均7時間半以上。帰宅が早い分、睡眠時間も長い。

(注)出典:厚生労働省「令和2年度 健康実態調査結果の報告」

(3)サウナで英気を養う

ほとんどの家にサウナがあり、土曜日は伝統的に「サウナの日」とし、9割以上のフィンランド人が定期的にサウナに入っている。体をきれいにし、リラックスする場所でありながら、コミュニケーションの場でもある点は、日本のお風呂と共通する。職場や学校に設置されていることも珍しくなく、フィンランドの文化の一つだ。

(4)夏休みや有給休暇はしっかり取る

1年は11カ月と割り切り、6~8月末までに1カ月の長期休暇を取得する人が多い。計画を早めに立て、休みを交代で取得したり、代わりの担当者を指名したりすることで、互いに仕事をカバーする体制を整える。緊急時も「携帯に電話して」という人はほとんどいない。

仕事と休みをきっぱり区別し、心身ともにしっかり休む。そしてリフレッシュした分、また仕事に精を出すことができるのだ。

日本では、休暇中でも電話に出たりメールチェックしたりする人もいるのではないだろうか。定時で帰宅したり、休日は仕事関係の連絡を受けない体制を整えたりするなど、自分の時間を大切にする工夫は見習いたい。

また、昨今日本でもサウナブームが到来し、サウナへの注目度が高まっている。サウナを利用して1日の終わりに脳をリフレッシュさせるのもいいかもしれない。サウナ以外でも、自分に適したリフレッシュ方法やコミュニケーションの場を探してみてはいかがだろうか。

フィンランドの「考え方」「学び方」

フィンランド人が仕事にも休みにも全力なのは、ある2つの考え方が根付いているからだ。

1つめは「ウェルビーイング」(well-being)だ。ウェルビーイングとは「身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」だ。これは仕事でも学校生活でも日常でも、さまざまなところで使われ、フィンランドでは常に大切に考えられている概念である。

たとえば、仕事におけるウェルビーイングとは「心身の健康的な状態」をベースに、従業員のモチベーションや人間関係、会社へのいい意味での忠誠心などを保つために使われる。前述した「働き方」や「休み方」はすべて社員や職場のウェルビーイングにつながるのだ。

2つめは「シス」(SISU)だ。フィンランド語で「困難に耐えうる力、努力してあきらめずにやり遂げる力、不屈の精神、ガッツ」といった意味合いがある。シスは自分の強い決意や気持ちであり、自分が望む形のために努力することだ。「~だから、しない」ではなく、「~をしたいから、する」というポジティブな考え方のもと、仕事、家庭、趣味、勉強、すべてにおいて貪欲で、自分のやりたいことには全力で取り組む。

この貪欲な姿勢が学び方にもあらわれている。フィンランドは年齢・性別に関係なく、学びに積極的で、仕事や資格を得た後でも、専門性を高めたり、新たな資格を取ったり、転職や昇進に役立てるために勉強する人も多い。また、語学や音楽、教養など多彩な内容の講座や、社会人向けの短期から長期の安価な講座も多く、幅広い年齢層の人が通っている。総合大学に行く場合は、授業料が無料で住居費や生活費が支援されることもあるという。

このような恵まれた学習環境が整っていることもあるが、社会人になっても学習を続けられるのは、16時に仕事を終えられるがゆえに生み出されている好循環だろう。

まずは自分の生活や意識から変革を

日本とフィンランドでは人口規模も、制度も文化も違う。しかし、仕事も人生も充実させたいという気持ちは共通しているはずだ。

日本も現在大きな転換期を迎えており、コロナ禍で在宅勤務が普及したことで、よりワーク・ライフ・バランスが求められている。法律や制度を変えるには時間がかかるが、自分の生活や意識を変えることはできる。本記事で紹介したフィンランドのライフスタイルを参考に、まずは自分のできることから少しずつ改善することが、幸せに生きる近道になるかもしれない。

フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか

■書籍情報

書籍名:フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか

著者 :堀内 都喜子(ほりうち ときこ)
長野県生まれ。フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院で修士号を取得。フィンランド系企業を経て、現在はフィンランド大使館で広報の仕事に携わる。著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』がある。

出版社:ポプラ社

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

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