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2022.04.14 NEW

東証上場企業の約3割が導入するストックオプションとは。従業員持株会などとともに解説

東証上場企業の約3割が導入するストックオプションとは。従業員持株会などとともに解説のイメージ

友人や知り合いから「会社でストックオプションをもらった」という話を聞いたことがある人もいるのではないか。ストックオプションとは一般的に、会社が役員や従業員に報酬または賞与として与えるもので、あらかじめ決められた価格で自社株を買うことができる権利だ。株価の上昇で、想定以上の報酬を得る可能性がある。そのため、勤務先が株式市場に上場していたり、上場を目指していたりする場合には、その仕組みはぜひ知っておきたいもの。

そこで今回は、ビジネスマンとしておさえておきたいストックオプションの基本的な仕組みについて紹介する。あわせて、従業員持株会や譲渡制限付株式(RS)との違いについても見ていこう。

東証上場企業の約3割が導入するストックオプションとは

ストックオプションは株式報酬制度のひとつで、stock(=株式)option(=選択肢)という言葉通り、株式会社の役員や従業員が、「権利を行使できる期間(権利行使期間)内に、あらかじめ定められた価格(権利行使価額)で自社株を購入できる権利」のこと。

権利行使価額で購入した株式を、株価が上昇したタイミングで売却すれば、通常の株式投資より大きな利益を得ることができる。株価が上昇するとその分、実質的な報酬が増える仕組みになっているため、企業側にとっては、役員や従業員のモチベーションアップや優秀な人材確保に繋がったり、「ストックオプションを使う前に辞めるのはもったいない」と考える人材の流出を防いだりする効果が期待できる制度だ。日本では、1997年5月の改正商法で導入が可能になった。

では、どのくらいの企業がストックオプションを導入しているのか。日本取引所グループの2021年の資料によると、東京証券取引所に上場していた企業の31.7%が導入しており、中でも旧マザーズ市場が85%と突出して高かった(図1)。

東京証券取引所は、2022年4月4日、「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQ」の4つの市場区分から、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの新しい市場区分へと再編。

図1:市場区分別ストックオプションの実施状況

図1:市場区分別ストックオプションの実施状況

出典:株式会社日本取引所グループ「東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2021」をもとに編集部作成

ストックオプションの仕組み

ストックオプションの付与から、株式を購入・売却するまでの流れは以下の通りだ(図2)。

権利をもらった役員や従業員(1)が、期間内に権利を行使して、時価ではなくあらかじめ定められた価格で株式を購入し(2)、株式が交付される(3)。自社株を取得した役員や従業員は、自社株を保有し続けたり、タイミングを見計らって売却したりすることができる(4)。

図2:ストックオプションの仕組み

図2:ストックオプションの仕組み

では、ストックオプションを行使して株式を購入・売却するまでのイメージを具体的に見てみよう。

「あらかじめ定められた価格・1株500円、権利を行使できる期間・5年」のストックオプションを付与されたとする。期間中に株価が1株2,000円まで上昇したため、ストックオプションの権利を行使して、1株500円で1,000株購入し、時価が1株2,500円に上がった時に売却した場合はどうだろうか。

購入した時点では、購入時の時価・1株2,000円と、決められた購入価格・1株500円との差額である、1株1,500円が含み益となる。利益が確定するのは売却時で、購入価格・1株500円と、売却時の時価・1株2,500円との差額、1株2,000円が利益になる(図3)。購入できる株式の上限数(付与株式数)は事前に定められているが、この例で1,000株購入・売却した場合は200万円の売却益になる。

図3:ストックオプションで株式を購入し、利益を得られた場合のイメージ

図3:ストックオプションで株式を購入し、利益を得られた場合のイメージ

ストックオプションは税務上の取り扱いにより、税制適格と税制非適格に分けられ、その要件や課税されるタイミングが異なります。

通常の株式投資として、同じタイミングで購入・売却した場合、購入時の時価・1株2,000円と、売却時の時価・1株2,500円との差額、1株500円が利益となり、1,000株購入した場合の利益は50万円だ。売却時に株価が低迷すると利益が出なかったり、むしろ損失になってしまう可能性もあるが、このように通常の株式投資より大きな利益を得られる可能性がストックオプションの魅力と言える。

従業員持株会・譲渡制限付株式(RS)との違い

自社株を取得する制度には、従業員持株会や譲渡制限付株式(RS)もある。それぞれの違いを見ていこう。

従業員持株会は、役員や従業員などが自社株を積立で購入できる制度だ。持株会という組織が窓口になり、会員の給与や賞与から定期的に天引きされるお金(1)で、共同購入(2)する。各会員の持ち分は、売却できる最低株数に達すると、持株会に申請して個人口座に引出し(3)、好きなタイミングで売却(4)することができる(図4)。

ストックオプションは権利を付与された一部の人しか利用できない制度であるのに対し、従業員持株会は勤務先に制度があれば誰でも加入できるという違いがある。会社から奨励金の支給があるケースもあるなど、資産形成を支援する福利厚生制度のひとつとして位置付けられている。

図4:従業員持株会の仕組み

図4:従業員持株会の仕組み

一方、譲渡制限付株式(RS)は、ストックオプションと同様に株式報酬制度のひとつだが、対象者に給与の一部として株式が無償で支給(1)される。大きな違いは、株式の譲渡(売却)が制限される点で、譲渡制限を解除するには勤続年数などの条件がある。条件を満たした後は好きなタイミングで売却でき(2–1)、条件を満たさなかった場合には権利が没収(2–2)されてしまう(図5)。

無償で支給されるということは株価=報酬となるため、譲渡制限付株式(RS)を付与された役員や従業員にとって、株価が0円にならない限り最低限の利益があるほか、譲渡制限が付いている状態であっても株主と同様に「配当請求権」や「議決権」を持つことができる。企業にとっては、株式の譲渡が一定期間制限されるため、優秀な人材をつなぎとめる効果が期待できる。

図5:譲渡制限付株式の仕組み

図5:譲渡制限付株式の仕組み

自社株に注目する習慣を

ストックオプションを付与された場合に気をつけたいのは、権利を行使できる期間(権利行使期間)だ。あらかじめ決められた期間を過ぎてしまうと、ストックオプションの行使ができなくなってしまうので、「せっかく付与された権利を使い忘れた」ということがないように注意したい。また、株価が低迷している場合は、権利を行使しないで放棄するという選択肢もある。

現金以外の報酬制度と聞くと違和感を覚えるかもしれないが、特に米国のCEOの場合、基本報酬よりも株式報酬などの長期インセンティブの割合が高い(図6)。日本でも現金以外の報酬制度は、「攻めの経営」として中長期的な企業価値向上に有効だと考えられており、米国並みとはいかないまでも、日本でも長期インセンティブの割合が高まっていく可能性があるだろう。

図6:CEO報酬比較

図6:CEO報酬比較

出典:ウイリス・タワーズワトソン「日米欧CEOおよび社外取締役報酬比較」(2021年調査結果)をもとに編集部作成

業績連動の指標として測る期間がおおよそ1年以内のものは年次インセンティブ、1年超のものは長期インセンティブ。

自身の仕事の成果が、すぐに自社の業績や株価に反映されることは少ないかもしれない。しかし、仕事で成果を上げることは、ストックオプションや譲渡制限付株式(RS)など、株式報酬を受け取る可能性を高めてくれる。また、自社の株価が値上がりすることは、ストックオプションの権利や譲渡制限付株式(RS)を保有する人だけでなく、従業員持株会で自社株を購入している人にとっても重要だ。自社株を取得する制度を活用しているのに、自社の株価を確認していないという人は、まず、自社の株価に注目することから始めてみてはいかがだろうか。

株式の手数料等およびリスクについて

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詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

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