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2022.12.15 NEW

カナブンやネズミが人を救助する未来?「レスキューロボット」とは

カナブンやネズミが人を救助する未来?「レスキューロボット」とはのイメージ

1匹のカナブンが、地震や豪雨によって崩れたがれきや土砂の中にいる人間を見つけて救い出す。こんな未来が実現するかもしれない。

近年、被災した人間の捜索・救助活動を行うレスキューロボットの開発が進んでいる。中でも注目されているのは、生きている昆虫に電子部品を取り付けて動きを制御した「昆虫サイボーグ」や、ネズミなどの小動物を模した「小型ロボット」だ。小型かつ軽量で機敏な動きができるため、人間が立ち入れない危険な災害現場での活躍を期待されているという。

米国の調査会社のレポートによると、こうしたレスキューロボットの世界市場は2027年までに年平均20%もの成長が見込まれている。このまま開発が進んでいけば、レスキューロボットの技術を活用した家庭用ロボットが登場する可能性もある。

そこで本記事では、災害現場をはじめ私たちの日常生活にも影響を及ぼすレスキューロボットの現状を解説する。

世界の災害現場での活躍が期待されている「レスキューロボット」とは

地震や津波、テロといった大規模被害時には迅速な調査と行方不明者の捜索、人命救助が求められる。一方で、危険な現場での作業には二次災害の恐れがある。そこで、人間が立ち入ることのできない危険な現場での作業や調査を行うために開発されたのがレスキューロボットだ

<レスキューロボットの活動事例>

  • 倒壊したビルや家屋など、がれきの山から行方不明者を捜索・救助
  • 土砂災害により土砂に埋もれた建物内部の調査、行方不明者を捜索・救助
  • 救助に時間のかかる地下や狭い閉鎖空間に支援物資を送り届ける
  • 化学物質が蔓延している工場・漏洩が疑われる現場での調査
  • 爆発事故の現場や、爆破予告のあった現場の調査・危険物特定

実際に2011年の東日本大震災では、被害を受けた福島第一原子力発電所内部の探査にレスキューロボットが活用された。カメラや線量計を搭載し、全身を移動用クローラーベルトで覆ったレスキューロボットが放射線量を測定したのだ。このように、レスキューロボットは化学物質・有害物質の拡散が疑われる災害現場での調査にも活用できる。

世界各地で自然災害やテロ被害が発生する中、レスキューロボット市場は今後数年で飛躍的な成長を遂げると予想されている。産業用ロボットの稼働台数が世界で2番目に多く、世界有数の“ロボット大国”である日本でも、レスキューロボットの研究開発は日夜進んでいるのだ。

レスキューロボットの最前線!「小型ロボット」「昆虫サイボーグ」とは

レスキューロボットには、大きめの無線操縦機のような陸上タイプからドローンのような飛行タイプまで、さまざまな形がある。中でも注目を集めているのは、マウスやラットなどの小動物を模した「小型ロボット」や、生きている昆虫に電子部品や機械を取り付けた「昆虫サイボーグ」の開発だ。

なぜ小動物や昆虫なのか。その理由は、救助隊が入れないわずかなすき間でも容易に入り込めて、過酷な環境でも機敏かつ柔軟に動ける身体特性があるからだ。また、小型で軽量なロボット・サイボーグであれば複数用意しやすい。被害が広範囲に及ぶ災害でも、同時多角的な救助作業ができるだろう。
では、小型ロボットと昆虫サイボーグは何が違うのだろうか。

マウスやラットなどの小動物を模した「小型ロボット」とは
現在開発されている小型ロボットは、マウスやラットなどのネズミを模したものが主流だ。

ネズミは運動能力が高く、尻尾と四肢を利用して縦横無尽に動き回ることができる。小さめのハツカネズミになると、1cm以下のすき間でも通り抜けてしまうほどだ。

わずかなすき間でも侵入し、障害物がある場所でも柔軟に動き回るネズミの特性があれば、広範囲に及ぶがれきの山に潜り、被災者がどこにいるのかを即座に見つけ出し、センサーを通じて救助隊員に知らせることができる。救助に時間がかかる場合は、すき間から非常食を届けることも可能になるだろう。

また、ネズミは身体のバランス感覚が優れているため、万が一転倒してもすぐに起き上がることができる。こうした点から、マウスやラットなどのネズミを模した小動物ロボットの開発が進められているのだ。

レスキューロボットの先端をいく「昆虫サイボーグ」。なぜ昆虫なのか
小型ロボットの開発と並行して、昆虫サイボーグの開発も進んでいる。

ただ、昆虫サイボーグについては「なぜ生きている昆虫を利用するのか」と疑問に思うかもしれない。

実は、小型ロボットに搭載できる小型電池は数分しか動作しないものが多く、電力供給をどう確保するかが大きな課題になっている。100%機械でできているロボットを長時間駆動させるには多量の電力が必要なため、電力供給は小型ロボット実用化の障壁になっているのだ。

そこで白羽の矢が立ったのが昆虫だ。生きている昆虫を電子部品などで制御すれば、ロボットよりも省エネかつスムーズに動かすことができる。昆虫は外気温の変動に適応できるうえ、数日間食料がなくても生存できる種類もある。電力供給の課題をクリアするだけではなく、過酷な災害現場での活動に適した生き物なのだ。

すでに、国内外でカナブンやマダガスカルゴキブリといった昆虫に、電子部品や機械を取り付けて動作を制御する研究開発が発表されている。今後さらに改良を重ねて長時間駆動できるようになれば、小型カメラやセンサーを組み合わせることで災害現場での実用化が可能になるだろう。

レスキューロボットの技術が私たちの日常に活かされる可能性も

レスキューロボットの技術開発が進めば、将来的に災害現場で昆虫や小型ロボットが活躍する姿が当たり前になるかもしれない。

もちろん、生きている昆虫を使うことやロボットに頼ることに否定的な意見はあるだろう。しかし、被害が広範囲に及ぶ大規模災害の現場では、迅速な調査や捜索活動が何より重要だ。ただでさえ人材不足が叫ばれる中、貴重な救助隊員を二次災害の危険にさらすこともできない。いつ起こるかわからない突発的な災害に備えるには、昆虫やロボットとうまく共存していく方法を考える必要があるのだ。

また、レスキューロボットの技術が実用化レベルになれば、いずれ私たちの日常生活でその技術が応用されるという期待もある。昆虫サイボーグの日常利用については議論が紛糾するだろうが、ネズミ型の小型ロボットであればペットロボットと外見が似ているため、平時に活用しやすいだろう。

現在開発されているネズミ型レスキューロボットは小型ながら四足歩行が可能で、ネズミのようにしなやかな動きができる。この特性を活かしてロボットにカメラやセンサーを取り付ければ、家の中を自由自在に動き回る「見守りロボット」ができるかもしれない。普段は気軽なコミュニケーションを取れるペットロボットでありながら、時には見守りロボットとして離れた場所から自宅内の様子を詳細に確認できる。現時点では一つの想像にすぎないが、そんなロボットが誕生する未来があるかもしれないと思えば、レスキューロボットの技術開発に期待が膨らむ。

レスキューロボットの開発者である東北大学の田所諭教授も、「レスキューロボットの技術は平時に運用するロボットにも積極展開をはかるべきだ」と述べている(注)災害のために開発された技術を平時にも展開していくことで技術促進をはかり、実用化のハードルを下げることが必要なのだという。

(注)出典:国立研究開発法人 科学技術振興機構「2つの大震災を超えて―「タフ」なロボットで目指す災害に強い国づくり《東北大学・田所諭先生インタビュー》」

多くの家庭に普及しているロボット型掃除機が証明するように、人間の代わりを務めるロボットは非常に便利な存在だ。レスキューロボットの技術開発が進み、家庭用としても普及する未来に期待したい。

これからの時代に必要なレスキューロボットの技術開発と、市場の成長

地球温暖化に起因した異常気象の増加、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック。さらに、日本は地震を含む自然災害が起こりやすい国だ。

災害はいつどこで起きるかわからない。しかし、災害は防げなくとも備えることはできる。レスキューロボットは、被害が広範囲に及ぶ災害時に救世主となり得るのではないか。

今回解説した昆虫サイボーグや小型ロボットは開発・研究途中で、実用化にはまだ時間がかかる。しかし今後レスキューロボット市場が成長し技術開発が進んでいけば、昆虫サイボーグや小型ロボットが災害現場で活躍し、その技術が家庭用ロボットに応用される可能性もある

いつの時代も、科学技術の発展の先にあるのは何気ない日常だ。日常の延長線上にあるロボット研究について、注目してみてはどうだろうか。

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