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2023.10.05 NEW

米国株式投資を始めよう!森永康平が語る米国経済の見方、銘柄の選び方、投資の考え方

米国株式投資を始めよう!森永康平が語る米国経済の見方、銘柄の選び方、投資の考え方のイメージ

撮影/藤井洋平

米国株式の株価は長期的に上昇傾向を続けてきたという歴史があります。また、日本国内に住んでいても日々の生活で米国企業のサービスに触れる機会が多いという意味で、米国企業の株式は日本人にとって親しみがあるとも言えそうです。

ただし、経済の仕組みや企業文化など、米国と日本では差異があり、知っておくべき株式投資のルールも異なります。そこで、経済アナリストとして執筆や講演、YouTube番組を運営するマネネCEOの森永康平さんに、米国株式投資を始めるに当たっての心得をうかがいました。

株式投資をする意義とは

投資経験が従業員持株会を通じて自社株式を購入したことがある程度だと、「株式投資はハイリスク投資」と言われることもあり、これから始めるのであれば個別株式への投資よりも投資信託の方が始めやすいとの考えもあるかと思います。そうではなく、個別株式への投資を選ぶメリットをどう考えていますか。

確かに日本ではよく「株式投資はハイリスク投資」と言われがちですが、それはネガティブなことばかりではないと私は考えています。リスクという言葉は本来、下振れだけではなく上振れも含めた「ブレ幅」を指す言葉です。私自身はブレ幅が大きいところも株式投資の魅力だと思っています。

もちろん思った通りの値動きにならないこともあるでしょう。日本株式とは違い、米国株式は1株から買えるので、最初は“授業料”と割り切って、自分が気になる企業の株式から買って様子を見るという考え方もあるのではないでしょうか。投資はやってみないと自分ごとにならないですし、500円や1,000円ぐらいの金額でも増えたり減ったりしたら自然と気になるものです。「こうやって変動していくんだな」という感覚を養うという意味でも、大事な一歩だと思います。

米国株式は1株から購入できるのであれば、投資初心者でも始めやすいですね。他の外国株式の中にも1株から購入できるものもあるようですが、米国株式ならではの魅力は他にどんなことがあるのでしょうか。

まず挙げられるのが、米国経済が世界最大である点です。IMF(国際通貨基金)の統計で国の経済規模を示すGDP(名目国内総生産)を見ると、米国、中国、日本という順番になっています。日本も経済大国だとは言えますが、1990年の値と比べると、2020年までの30年間で米国は3.5倍、中国は37倍も成長していることに対して、日本は1.5倍にとどまっています。労働力人口という観点でも、米国は今でも増え続けているのに対し、日本は減少傾向が予想されています。仮にこれから30年投資をするとして、どこに可能性を感じるかという話になると思います。

世界銀行の人口推計 15~64歳の労働可能人口 (注)グラフは各年代の1年間の平均変化率を示す。予測は2019年時点。
(出所)世界銀行より野村證券投資情報部作成

米国経済の大きさは魅力的ですね。米国株式自体はその他の外国株式や日本株式とはどんな違いがありますか。

日本株式に投資をする場合、株主優待が目的の人もいると思いますが、米国株式には株主優待の制度がありません。ただ、株主に対する意識は明らかに米国企業の方が強いです。つまり、高額の配当金を出したり、自社株買いをすることで株価を上げたりという発想を米国の企業は圧倒的に強く持っています。それは、「会社は誰のものか」という考え方の違いによるものだと思われます。日本では「会社は従業員のため」という意識が強い傾向がありますが、米国では「まず株主がいて、経営の代理を企業経営者がしている」という考え方をしている傾向があります。だから米国企業は株価の上昇をシビアに追求していきます。

また、よく言われる投資の格言として「知らないものには投資をしない」ことが挙げられます。日本に住む日本人からすると、外国企業については容易に日々ニュースをチェックできるわけではなく、名前すら聞いたことがない企業も多いでしょう。つまり、「知らないもの」に分類されるということです。しかし私たちの生活を見返してみると、例えばGoogleで検索し、X(旧Twitter)に投稿し、YouTubeで動画を観て、コカ・コーラを飲み、Amazonで買い物をするなど、知らず知らずのうちに米国企業の商品やサービスを使っていることが多いものです。結果的に外国企業の中でも米国企業については「知っているもの」に分類されやすく、投資対象として視野に入れやすくなると考えることもできます。

加えて、米国企業の多くはグローバル展開をしており、売り上げや利益は国際的に分散されているということも、米国株式の特徴と言えます。

米国株式市場の動向を表す代表的な株価指数の特徴

米国市場と米国株式の特徴を理解しました。実際にこれから米国株式への投資を考えてみたいと思っています。具体的に銘柄を選ぶ前に、米国株式が今どうなっているのかを知りたいです。何をチェックしたらいいのでしょうか。

米国株式市場の動向を表す代表的な株価指数として、「ダウ工業株30種平均(NYダウ)」「スタンダード・アンド・プアーズ500種指数(S&P500)」「ナスダック総合指数(ナスダック)」が知られています。

NYダウは主要業種を代表するような30銘柄の株価を株数で割った単純平均型の株価指数であり、日本における日経平均株価のような位置づけです。NYダウは随時銘柄を入れ替えながら、時勢に合った株価指数になるように調整されています。一方で、米国全体の株価の推移を見たいのであれば、S&P500を参照しましょう。S&P500は米国における代表的な約500銘柄で構成され、時価総額で加重して平均化した株価指数です。このS&P500は市場時価総額の約80%を網羅しています。最後のナスダック総合指数は、ハイテク企業やIT関連の企業など新興企業が占める割合が大きいという特徴があります。米ナスダック市場に上場する全銘柄で構成され、時価総額で加重して平均化した株価指数です。

指数名 構成銘柄数 特徴
NYダウ 30 主要業種を代表するような30銘柄の株価を単純に株数で割って平均化した株価指数
S&P500 約500 米国における代表的な約500銘柄で構成され、時価総額で加重して平均化した株価指数
ナスダック総合指数 約3,000 ハイテク企業やIT関連の企業など新興企業が占める割合が大きく、時価総額で加重して平均化した株価指数。米ナスダック市場に上場する全銘柄で構成

銘柄をセクターで分け、情報をキャッチアップする

米国株式のトレンドを知りたいならNYダウ、米国株式全体の推移を知りたいならS&P500、特にIT・ハイテク株に興味があるならナスダック総合指標という考え方ですね。米国の株式市場がどういうものなのか、とりあえず理解できたとして、そこからどうやって銘柄を選べばいいのでしょうか。

前述の通り、投資においては「知らないものには投資をしない」が鉄則のため、自分が使っているサービスの企業が米国で上場しているかどうか、最初の一歩はそれでいいのではと私は思っています。1銘柄だけだとリスクが大きいので、投資先は3~5銘柄に分散させた方がいいでしょう。

まず知っている企業を並べてみて、明らかにIT・ハイテク株に偏っているのであれば、その他のセクターで知っている企業がないかを調べてみましょう。P&GやGAP、マクドナルド、ボーイングなど、意外と知っている米国企業は多いものです。セクター分けは、IT業界、金融業界、ヘルスケア業界、飲食業界、小売業界あたりが基本になると思います。

株式投資については、「知っている」「気になる」というのが大事です。購入して終わりではなく、毎日ではなくてもいいですが、定期的に情報をキャッチアップすることが株式投資では欠かせません。例えば日本人にあまりなじみがない企業だと、英語を十分理解した上で、自分で情報を取りにいく必要があります。米国市場には日本市場のように制限値幅(ストップ高・ストップ安)に該当する制度がなく、気がついたら破産していたということもあり得ます。だからこそ、特に初心者は「知っている」ことが王道だと言えます。

もう一つ、米国株式ファンドの運用報告書を見て、組み入れ銘柄ランキングを参照するという方法もあります。ランキングを見ながら「この企業知らなかったけど、人気ならちょっと調べてみよう」などというように、新しい銘柄に出会うきっかけにもなると思います。日本人投資家の傾向として、人が買っているものを買いたいという心理が働きやすいようで、各証券会社はランキング情報をよく出しています。

ただ、米国と日本の経済の違いで理解しておくべきことがあります。米国は非常にイノベーションが起こりやすい国である一方で、旬を過ぎたときの反応も早いです。一方で、日本は基本的にモノづくりの国と言えるでしょうし、何十年も人気が続くような銘柄もあります。その意味で、米国と日本の銘柄には違いがあることを頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。

投資は思い立ったら吉日

そうした旬をちゃんと見定められるか、という難しさがありますよね。

投資先を分散させるだけではなくこまめに情報を管理できるかという意味でも、投資先は3~5銘柄がいいと思います。その企業がどういう企業なのかだけではなく、その企業が所属しているセクターがどういうものなのか分析が必要になりますし、さらに言うと米国のマクロ経済や金融政策、大統領の発言なども気にしなければいけません。金融メディアなどを見ながら自分で調べるほか、大手証券会社に口座を持っている人であれば、大手証券会社では米国株式などの調査レポート(※)を出しているところもあるでしょうから、活用してみるといいでしょう。私も調査レポートを参考にしています。
※野村證券の場合、お取引部店、パートナー(担当者)を介して米国株式の情報を提供しています。

米国株式ならではの難しさを考えると、株価が下振れするリスクが怖いと思う人もいると思います。

株価の変動だけではなく、米国株式のような外国株式だと為替の変動もあります。そうした変動ゆえに、投資初心者向けのセミナーなどで「いつ始めたらいいか分からない」という質問をよく受けるのですが、私は「思い立ったら吉日。やってみたいと思った時に始めたらいい」とお伝えしています。株価がこれからどうなるかは誰にも分かりません。もしかしたら今日が株価の最安値になることだって絶対にないとは言い切れないです。

また、利益または不利益が何%出たら株式を売却するというような自分の中で売却ルールを決めることは大事なポイントだと言えます。特に下がったときほど、人は「もう少し上がるまで待ってみよう」などと塩漬けして売却できないものです。損切り(購入時よりも価格が下落した銘柄を売却して損失を確定させること)をして、他の銘柄で仕切り直した方が早いこともあるかもしれません。

投資経験を重ねると勝率が上がるとまでは言い切れませんが、好きになって色々と調べられるようになれば、ブレ幅の大きな投資の醍醐味を感じられるようになると思います。米国株式が好調で、今後も成長性が見込めるのであれば、ちょっと踏み込んでみて、またそこからどうポートフォリオを作るかを考えてみるでもいいのではないでしょうか。

森永康平が語る米国株式投資の心得

マネネCEO/経済アナリスト
森永康平
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。日本証券アナリスト協会検定会員。経済産業省「物価高における流通業のあり方検討会」委員。著書は『親子ゼニ問答』(角川新書)、『スタグフレーションの時代』 (宝島社新書)など多数。

※本コラムで取り上げられた米国株式等、投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。

手数料等およびリスクについて

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詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

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