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2023.11.13 NEW

米国株がまだ値上がりすると考えるのは「幻想」だ エミン・ユルマズの投資講座

米国株がまだ値上がりすると考えるのは「幻想」だ エミン・ユルマズの投資講座のイメージ

撮影/藤井洋平

2022年3月に著書「エブリシング・バブルの崩壊」(集英社刊)で、米国市場について「株式だけでなく、あらゆる資産でバブルが発生し、崩壊しうる状態」だと指摘、それを「エブリシングバブル」と称して問題提起したエコノミストのエミン・ユルマズさん。「エブリシング・バブル」の詳細や、今後の行方などについて見解を語ってもらった。(※情報は9月下旬時点のものです)

エブリシング・バブルとは何か

私が提唱したエブリシング・バブルというのは、米国のあらゆるアセットクラス(資産種別)でバブルが発生し、弾けていくというものです。私が考える限り、バブルの7~8割はすでに弾けたんですよ。製薬会社など、コロナ関連株のバブルも弾けたのではないかと考えています。ほかにも、さまざまな商品のバブルが弾けているのではないでしょうか。

テスラの株式も大幅に値下がりしましたよね。2021年11月に407ドルを付けた後、今年の1月には113ドルまで下げました。今はやや回復したとはいえ、250ドル前後で推移しています。

株式以外でもさまざまな資産のバブルが弾けています。高級時計や一部の暗号資産のバブルも弾けたと言えるかもしれません。

巨大化しすぎたGAFAM

残った大きなバブルが、生成系AIによって盛り上がっている「AIバブル」だと考えています。代表的なAI関連株はGAFAM(グーグル〈Google、現アルファベット傘下〉、アップル〈Apple〉、メタ〈Meta、旧Facebook〉、アマゾン・ドット・コム〈Amazon.com〉、マイクロソフト〈Microsoft〉)や半導体大手の米エヌビディアなどです。

例えばアップルの時価総額は2023年9月の時点で3兆ドルに迫っています。すでに、一つの国のような規模になっているのです。各国の上場企業の時価総額を足した総額ベースでみると、9月時点で1位は米国、2位は日本、3位は英国ですが、アップル1社の時価総額は、なんと英国を超えています。

これまでの米国の株式市場では、先ほど述べたようないわゆる「ビッグ・テック」銘柄に投資資金が集中し、S&P500指数をけん引していたといってもよいでしょう。これでは「米国の株式市場全体が盛り上がっている」とは言えないのではないかと思います。

また、私はこれらの巨大テック系銘柄や関連の銘柄が今後も成長するという意見を疑問視しています。例えば世界最大規模の半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)のTSMC(台湾積体電路製造)の2023年4〜6月期の業績は約4年ぶりの減収減益となっています。TSMCのようなファウンドリー(半導体チップの製造を専門に行う企業・サービスの総称)の業績が悪いのに、米半導体株のパフォーマンスはいい……これがすなわちバブルの末期症状なのではないかと思うのです。

GAFAMやエヌビディアの株価はまだ高値圏にありますが、最近下落気味になっている点を鑑みても、私はいずれ「AIバブル」も弾けると思っています。

外国株に投資する日本人は最近増えているようですが、GAFAMのような米国の最大手企業にあたる銘柄以外の米国株に詳しいという人は少ないのではないでしょうか。

「米国株を買っています」という人に聞いても、保有銘柄はアップルなどのGAFAMかテスラ、エヌビディアなど巨大テック系企業だけという人が多いと感じます。

GAFAMなどの企業が研究開発に多大な投資をしていることは知られていますし、また新たな技術が誕生して、中にはさらに株価が上がる企業もあるかもしれません。しかし、やはり私は米国株に投資する際、GAFAMなど一部の銘柄にのみ集中的に投資することは避けたほうがよいのではないかと思うのです。

「米国株投資」は間違いでない

強調しますが、私は必ずしもすべての米国株投資が危ないと言い切るつもりはまったくありません。一部の企業だけに集中投資するのではなく、より広い視野を持って米国株を売買すべきということです。

米国の市場に上場している企業は5,000社を超えています。その中にたくさんの優良企業、魅力的な企業がありますが、日本人はあまり注目していないように感じます。情報収集が難しいので仕方がない面もあると思いますが、もう少し主要銘柄以外の米国株にも目を移したほうがよいのではないかと思うのです。

私の靴は米国の上場企業の製品です。とてもよい製品だと思っています。米国の上場企業の中には、日本人が知っているメーカーもたくさん含まれます。私たちは日々、米国企業の製品を使っています。そういった自分と身近な米国企業に投資してみてもよいのではないでしょうか。

米国の銀行金利、驚きの低さ

話は変わりますが、市場に関連して米国の銀行金利について解説します。米国の国債発行残高は2023年4月末時点で24兆ドル(約3600兆円)と日本の3倍近くになります。そして米国では急激なインフレを抑制するため高金利政策をとっており、例えば米国の10年国債の利回りは4%を超えています。一方で米国の普通預金金利は日本ほどではないですがかなり低く、0.45%です。

米10年国債の金利は昨年以降急上昇している (注)データは月次で、直近の値は2023年9月29日時点。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

米国民はより高い金利を求め、銀行預金を引き出し、米国債やMMF(国債などを組み入れた公社債投資信託)を買い続けました。米国の銀行から大量の資金が流出したわけです。預金流出を食い止めるためには、預金の金利を引き上げる必要がありますが、それは難しい。なぜなら、預金金利を大幅に引き上げれば、利払いのため銀行の収益が圧迫されます。結果的に経営の安定性の指標である自己資本比率の引き上げが難しくなってしまいます。

また、預金が減れば銀行の貸出能力も低下しますので、これも銀行の収益を減らす要因になってしまいます。そうなると、ますます米国民は経営状況が悪化する銀行から資金を引き出すようになり、より安全で利回りも高い米国債やMMFへ資金を流入させます。

さらに米国では、政策金利に影響される30年固定の住宅ローンの金利はなんと7%を超えています。今後も高金利政策が続けば、いずれ住宅ローンを返済できなくなる人が続出して、これも銀行の経営状態を悪化させる要因となる可能性があります。

米国債は「買い」なのか

仮に、日本国債の利回りが5%あれば、株式ほどリスクが高くないので、日本の多くの人が国債を買うでしょう。単に、日本では国債と預金の金利がそれほど変わらないので、わざわざ国債を買う人が少ないというだけです。

一方、高利回りの米国債は「買い」だと思います。アメリカの金融システムは限界が近づいているといえますが、国債は「安全資産」とされるので、リスクの高いイベントが発生すれば債券が買われるのは自然な流れです。他のアセットと比べ、デフォルト(債務不履行)を起こす可能性は低いと思います。現在、米国債は利回りの高さを考えると投資対象として魅力的だと思います。

世の中には、何か起きた時の「お金の逃げ場」がなければいけないのですが、それほど逃げ場は多くない。そうした観点では、米国債はお金の逃げ場にはかなり適しているといえそうです。

第3回では、日本株式の中から優良な中小型株を探す方法についてお話しします。

エコノミスト エミン・ユルマズ
1996年国際生物学オリンピック(ウクライナ・アルテク)優勝。2004年、東京大学工学部化学生命工学科卒業。2006年、東京大学新領域創成学科修士課程修了。同年、野村證券入社。企業情報部に配属、M&Aアドバイザリー業務に従事。2009年、同社・機関投資家営業部配属。2010年、同社・外国株式営業部配属。2014年、野村證券退社。2015年、四季リサーチ入社。2016年、複眼経済塾取締役・塾頭就任。

※本コラムで取り上げられた投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。
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