2023.10.30 NEW
元千葉ロッテ・里崎智也さんが貫く「勝者のメンタリティー」、堅実貯蓄から始まった投資
撮影/齋藤大輔
里崎智也さんは千葉ロッテマリーンズの選手として16年間プレーし、2006ワールド・ベースボール・クラシックでは正捕手として日本代表を初代王者に導きました。2014年に現役引退後は野球解説者、千葉ロッテスペシャルアドバイザー、タレント、YouTuberとマルチに活躍する中に、投資家という一面もあります。
「僕はお金に困る人生を歩みたくないんですよ。失うことが怖いから勝ち続けないといけない。ただし現状を失わないようにするための“保険”も大事。それが勝者のメンタリティーです」
そんな里崎さんの投資の始まりは現役時代の「毎月10万円預金」でした。里崎さんにお金との向き合い方についてお話を聞きました。
人生は未確定だから
- 「毎月10万円預金」はいつからどんな目的で始めましたか。
- 里崎:1998年にプロになってすぐです。普段使うお金はいつでも引き出せるようにして、それとは口座を分けて10万円を天引きして定期預金にし、最初からないものにしておく。それで1年で120万円、仮に5年で引退となったとしても600万円貯まるとその当時に考えました。600万円あったら次のキャリアに向けてもう1回大学に通い直すこともできるし、次の仕事を探すための生活費にも充てられるかもしれないし、何か資格を取るための資金にもなるかもしれない。その用途であれば少なくない金額だと思います。
- プロ2年目には1軍出場を果たしていましたし、第一線で活躍されていたプロ野球選手としてかなり堅実な印象を受けました。
- 里崎:プロ野球で言えば、第一線と言えるのはレギュラーになった人たちだけです。1軍の層の厚さを考えると、2軍でも第五線ぐらいです。12球団の支配下登録714選手の平均年俸は4,468万円(日本プロ野球選手会が発表した2023年シーズンの年俸調査結果より)なので、それ以上もらっている人たちが第一線。僕は16年プレーできましたが、それは結果論であって人生は未確定ですから。アスリートに限らず言えることですが、労働は一生ではなく、会社が倒産した、病気になった、怪我をしたなど、有限なものでいつ何が起こるか分からない。だから貯金をするわけです。
- 毎月10万円貯金は2014年に引退するまで、金額もずっと変わらず続けたのでしょうか。
- 里崎:16年やったので、2,000万円ぐらいで終わりました。最後は用途が変わります。個人事業者のプロ野球選手は、前年分の年俸の税金を翌年申告するため、引退翌年の納税が問題となりますが、引退しているので年俸はもらえません。なので、貯めていたお金をその税金に充てようと考えていました。結局、税金は他のお金でまかなったので、2,000万円ぐらいがそのまま残りました。元々ないつもりで貯めていたお金だし、他に使う用途がない。だったら、勉強がてら投資でもやってみようかと思ったわけです。
- 現役時代に投資をやってみようとは考えませんでしたか。
- 里崎:やっていたのは保険商品だけでした。目の前の一戦一戦に全てを注いでいるような野球界、スポーツ界にいる人間からすると、アナリストのような投資のプロが手にするような情報をいつでも仕入れられるような環境ではないから、投資を本格的に考えるのは今ではないなと当時の僕は考えていました。命の次に大事なお金ですからね。お金があればなんでも買えるわけじゃないですが、限りなく不幸を回避できます。
日本株式の売却益で米国株式へ、投資信託へ
- 里崎さんご自身の投資経験についてうかがいます。ソフトバンクが2018年12月19日に東京証券取引所1部へ上場したタイミングで、里崎さんは初めて株式を購入したと聞きました。その時の印象はいかがでしたか。
- 里崎:案外、自分にもできるものなのだなと。ある証券会社の担当者から「ソフトバンクが上場するから投資をしてみませんか」と何度か勧誘を受けていました。ソフトバンクだったら身近な通信事業をやっている会社だし、親会社はプロ野球チームも持っているし、倒産する可能性も低いだろうし、ならいいかと思って買いました。すると初値は公募価格を下回り、初日は15%安と急落。初めての投資だったし、いったん利益を確定したくて「手数料を差し引いた上で、どこまでいけばプラスになりますか」と担当者に売り時を相談し、株価が購入時の1,500円を超えたタイミングで売りました。
- 最初の株式投資に続く次の一手はどう考えましたか。
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里崎:ソフトバンクの株式は配当もあって数十万円のプラスになりましたが、でもそれほどは増えていないなと。そんな時にさきほどの証券会社の担当者からアメリカ株式の提案を受けました。何社か候補を挙げてもらった中で、Amazon.comなら僕もサービスを使っているし、ありかなと思いました。それで2019年後半に購入したら、コロナ禍の影響で一時急落したものの、その後はビビるぐらい一気に株価が上がりました。その後、担当者から「大統領選挙(2020年11月)の結果次第では変動するかもしれません」と電話を受けたので、下がり始める前に売り切りました。
じゃあ次どうしようかなと思った時に、担当者からAlphabet(アルファベット、Googleの持ち株会社)の提案を受けました。僕自身もYouTubeをやっていてなじみがあったので買ったのですが、これも結果的には成功しました。
投資を始めて約3年は担当者を信頼して個別銘柄投資をやっていましたが、忙しいと担当者からの電話に出られない時もあるじゃないですか。株式だと買い時と売り時があるので、タイミングを逃すことなく判断しないといけないのに。だから「里崎さんの生活スタイルにマッチすることを考えたら、長期運用できる投資信託がいいのでは」とアドバイスをもらい、そっちの方が面倒じゃなくていいなと考え、今は投資信託を運用しています。長期運用という意味では、銀行や証券会社が実施しているキャンペーンも活用しながら、国債や社債なども買っています。
- これまでの投資は証券会社の担当者との信頼関係が大きかったようですね。
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里崎:基本的に担当者のことを信頼していますが、一方で、僕自身の考えも正直に言うようにしています。例えば、下がっている株式について「今チャンスだから買い増ししましょう」とアドバイスを受けたとしても、「今のままでも配当金は十分あるし、そんな慌てず長い目で見ればいいんじゃないですか? だから今は追加したくない」などと伝えることもありました。
投資を始めた頃に比べて運用資金は着実に増えていますが、投資を始めて10倍になったら夢がありますよね。
手数料はサービスの一環
- 里崎さんの場合、現役時代に毎月貯金していた資金で投資を始めました。今だったらどんな方法でお金を準備すると思いますか。
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里崎:自分が若い頃は預金しか知らなかったし、投資する知識もなかったので預金一択でした。今だったらNISAという制度もあるし、金融知識も色々なところで昔より簡単に得られるようになったから、NISAを使うのも一つの手だと思います。売却益などが非課税になるというメリットは大きいです。
月1万円を積み立てると投資元本は20年で240万円、月2万円を積み立てると投資元本は20年で480万円、月3万円を積み立てると投資元本は20年で720万円。2024年から始まる新NISA制度では上限1,800万円なので、20年やったとしてもまだ枠が使えますよね。20代から始めたとして、20年後だったら40代。元本は変動すると思いますが、うまく運用できていれば40代になった頃にはある程度まとまった金額になっているはず。引き出して家を買うでもいいし、緊急性がないなら継続して運用するでも、それを元手にしてまた別の投資をしてもいいじゃないですか。
- 投資を始めてから里崎さんご自身も勉強をするようになりましたか。
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里崎:ほぼしていないです。そもそも投資先は自分が知っているところ、使っているところだけなので、勉強しようとしなくても日常生活の中で情報が入っているところばかりです。自分が勉強しなくても担当者が情報を仕入れてくれ、経過報告をしてくれ、決算報告を送ってくれる。
僕の場合は担当者にサポートしてもらっている部分が大きいですが、それが自分でできる人なら自分でやればいい。手数料はサービスの一環だと僕は考えていますし、僕の場合はそのサービスを活用して成果を積み上げられています。あくまでも元アスリートの僕の感覚ですが、手数料を払ってもプラスになるなら勝ち、手数料が低くてもマイナスになるなら負けです。自分に合った勝つ選択をした方がいいです。
要はどうやってお金を増やすかという話です。お金を増やす方法は基本的に、自分が働いてお金を増やす「労働」かお金に働いてもらってお金を増やす「投資」かしかないですよね。でも労働は一生ではなく、いつ何が起こるか分かりません。労働だけだと何かが起きて働けなくなってしまうとお金を増やす手段がなくなってしまいますが、もし投資をしていたらお金を増やす手段が他にもある状況になります。逆も言えます。だから両方の手段を用意しておくことは、「勝者のメンタリティー」として大事なポイントだと思います。
- 今、学校現場では金融教育への取り組みも増えてきましたが、里崎さんがご自身の経験も踏まえてお子さんに伝えていることはありますか。
- 里崎:投資について、僕自身は自分の子ども対して積極的に伝えることはないですね。もし学生のうちからアルバイトで得たお金で投資を始めると言い出したとしても、自分の経験からあれこれ口を出すことはしないと思います。まずはしっかり自分でお金を得る知識と能力を身に着けてほしいと願っています。
- でも里崎さんの姿に、お子さんも自然と投資を含めたお金との向き合い方を学んでいるかもしれませんね。
- 里崎:世間では「子は親の背中を見て育つ」と言いますが、そもそも、僕の背中を超えるのは生半可ではないんでね(笑)。
- 里崎智也
- 徳島県鳴門市出身。鳴門工高校(現・鳴門渦潮高校)から帝京大学を経て、1998年に千葉ロッテマリーンズを逆指名し、ドラフト2位で入団。2005年にリーグ優勝と日本一、2006年にはワールド・ベースボール・クラシック優勝に貢献。以降は不動の正捕手としてチームを支え、2010年にはリーグ3位から日本一を成し遂げている。2014年に現役を引退し、2015年に千葉ロッテのスペシャルアドバイザーに就任。野球評論家として活躍するほか、2019年にはYouTubeチャンネル「Satozaki Channel」を開設し、人気を博している。
※本コラムで取り上げられた投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。
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