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大槻奈那が新NISAの市場インパクトを試算、日本株式市場を押し上げる可能性も

大槻奈那が新NISAの市場インパクトを試算、日本株式市場を押し上げる可能性ものイメージ

撮影/齋藤大輔

日経平均株価は2024年の幕開けから上昇基調となり、3万6,000円台とバブル期以来、約33年11カ月の水準となりました。様々な要因がある中で、その一つに新NISAの開始も挙げられそうです。金融市場に対する新NISAのインパクトについて、ピクテ・ジャパンのシニア・フェローである大槻奈那さんにお話をうかがいました(2024年1月11日取材)。

日本市場への資金流入増が海外投資家を呼び込む

大槻さんは日本経済新聞電子版2023年12月5日掲載の日経ヴェリタスの記事「新NISA、投資マネーの流れ変えるか(大槻奈那)」内で、日本株式が新NISAの影響で上がる可能性があると言及していました。当時はどのように試算していたのでしょうか。
大槻:NISAの買付額を踏まえて考えていました。NISAの買付額は2023年9月末時点で約34兆円(出典:金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」)となっています。日本国内には個人が保有する1,000万円以上の預金口座が2023年3月末時点で約1,166万口座(出典:日本銀行「預金者別預金」)あります。1人で平均2口座保有すると仮定します。これらの口座の5割が新NISAのつみたて投資枠(年間120万円)にシフトするならば、今後5年間で約17.5兆円が加わると試算しました。

5年間の買付額

仮に年間の買付額である3.5兆円の3割が投資信託を通じて、新たに国内株式に流入すると考えると、日本市場では毎年約1.1兆円の買い付けになります(既存のNISAを売却して入れ替える金額を除く)。新NISAを通じて個人から日本市場への資金流入が増えることは、それまで「日本人が買わない日本株式」と感じていた海外投資家にとってプラス要因となり、日本株式への投資に弾みが出てくる可能性もあると考えています。

日本市場への1年間の買付額

日本市場に毎年約1.1兆円の流入は保守的に見た試算

新NISAが始まった今はどう試算をしていますか。

大槻:現在は試算当時とは二つ、違ったかなと思っている点があります。一つは当時の試算はつみたて投資枠だけで考えていた点です。新NISAには成長投資枠もありますし、成長投資枠を活用した投資は買付額を大きく下支えすると考えられます。また、個人が保有する1,000万円未満の預金口座が約7億4,097万口座(出典:日本銀行「預金者別預金」)あることを踏まえると、より幅広い投資家層が新NISAを活用することが期待され、将来的には数兆円の買付規模になっていく可能性もあります。そうした意味で、5年間で約17.5兆円というのはかなり保守的に見た数字と言えるでしょう。

もう一つは、投資信託を通じて米国株式を中心に予想していたよりも多くの外国証券が買われている点です。複数の証券会社によると、新NISAのつみたて投資枠による投資先は、海外投信が8~9割程度に上る可能性があるようです。米国株式の上昇率の高さゆえの人気であり、相場から見た判断なので否定をするわけではありませんが、海外企業に比べて日本企業の方が日々情報に触れられるという意味で、もう少し日本株式の比率が高くてもいいのではとも思います。特に、景気サイクルや業績の見通しなどを考えると、上昇率は日本株式の方が高いとも考えられます。

ただ、良くない投資かというとそうではありません。日本人の大半は給料が円なので、米ドルなど外貨での投資を加える、つまり収入源を分散させることは大事な視点です。成長投資枠はその時の相場を見ながら個別株式に投資をするというスタイルになるでしょうから、より情報にアクセスしやすい日本株式を中心にする一方で、つみたて投資枠はこうした収入源の分散の観点から米国株式などを加えると、合理的な資産運用になると思われます。

米ドル建て資産人気の影響は為替にも

当初の試算よりも外国証券が買われていることを踏まえると、大槻さんはどのような影響が想定されると考えていますか。

大槻:当初は年間買付額の3.5兆円の5割が米ドル建ての資産に投資された場合、毎年約1.8兆円程度の買付額になるだろうと試算していました。仮に8割が米ドル建ての資産だとすると、毎年約2.8兆円程度になります。また、日本からコンスタントな円売り・米ドル買いが入るということを見越して、海外投資家にも円を売る動きも出るかもしれません。投資信託以外にも様々な有価証券を対象にした居住者による対外証券投資の年間純投資額は過去10年の平均(2014~2023年)で12.2兆円(出典:財務省「統計表一覧(対外及び対内証券売買契約等の状況)」)ということを考えると、大きなインパクトではないかと思います。

米ドル建て資産の買い付けの増加は、為替にも影響する可能性があります。為替は日本だけの事情で決定されるものではないので一概には言えませんが、米ドル買いがドル高・円安の一つの要因になるという考え方もあるかもしれません。理論的には、円高よりも円安の方が日本株式に対して有利に働くことを考えると、日本株式にとっても好材料と言えるでしょう。2024年は米国の政策金利引き下げや日本の政策金利引き上げ予想でドル安・円高圧力が高まる可能性がある中で、新NISAは一定程度ドルを下支えする、つまり、円安をサポートする道になり得るとも考えられます。

ドル建て資産への1年間の買付額

新しい投資家層が大型株式の株価を押し上げる

日本株式も含めると、他にはどんな影響があり得ると考えられますか。
大槻:新NISAではやはり、新しい投資家層の増加による影響が挙げられます。長年デイトレーダーをしてきたような投資家が小型株式だけで運用するような世界観だけではなく、成長投資枠を活用して初めて個別銘柄に投資をするという投資家も出てきます。そうした新しい投資家層は分かりやすさという意味で、まずは日本株式の中でも大型株式に当たる各業界のトップスリーまでを選ぶ傾向があるかと思われます。その結果が大型株式の株価上昇につながるという動きも考えられるでしょう。
新NISAが始まったばかりということもあり、多くの人々が投資に目が向いているのが現状ですが、投資を一時のブームで終わらせないためにはどんな取り組みが必要だと考えていますか。

大槻:今から2~3年後が勝負どころだと思っています。2024年の年始から日経平均が上昇基調ということもあり、安易に「投資=もうかる」と考えるような投資家も少なからずいるでしょう。そうした時期には投資詐欺が増えるものです。今は多くの方々の関心が投資に向かっている時ですし、分かりやすい情報発信は有効だと思いますが、本来、投資は難しいものであり、アナリスト予想などを通じて投資リテラシーを高めていくことが欠かせません。そのために金融庁などが機構を作りながらガイドラインを定めていますが、そこは証券会社など民間の力が求められるところだと思います。

また、企業運営においては、東京証券取引所が要請する「資本コストや株価を意識した経営」で言及されている、「PBR(株価純資産倍率)1倍割れの改善」をやみくもに目指すのではなく、自社の資本コストをしっかり把握した上で部門ごとに成長戦略を議論して組み合わせていくことが重要になります。そのため投資家は、その企業が掲げるミッションやパーパスが価値創造プロセスにしっかり結びついているかどうか、判断する目を養うことも必要になります。

ピクテ・ジャパン シニア・フェロー
大槻奈那
東京大学文学部卒業後にロンドン・ビジネス・スクールでMBAを取得し、一橋大学大学院経営管理研究科博士(経営学)取得。S&P、UBS証券、メリルリンチ日本証券、マネックス証券等の金融機関でリサーチ業務に従事し、アナリスト・ランキング等でトップクラスの評価を得てきた。2022年9月よりピクテ・ジャパンのシニア・フェローとして国内外の金融市場やマクロ環境を分析する。名古屋商科大学大学院マネジメント研究科教授、財政制度等審議会委員、中小企業庁金融小委員会委員、ロンドン証券取引所グループのアドバイザー等を勤める。

※本コラムで取り上げられた日本株式・米国株式等、投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。

手数料等およびリスクについて

当社で取扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は、2,860円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、年金保険・終身保険・養老保険・終身医療保険の場合は商品ごとに設定された契約時・運用期間中にご負担いただく費用および一定期間内の解約時の解約控除、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引をご利用いただく場合は、所定の委託保証金または委託証拠金をいただきます。信用取引、先物・オプション取引には元本を超える損失が生じるおそれがあります。証券保管振替機構を通じて他の証券会社等へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、移管する銘柄ごとに11,000円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。有価証券や金銭のお預かりについては、料金をいただきません。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

株式の手数料等およびリスクについて

国内株式(国内REIT、国内ETF、国内ETN、国内インフラファンドを含む)の売買取引には、約定代金に対し最大1.43%(税込み)(20万円以下の場合は2,860円(税込み))の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。国内REITは運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内ETFおよび国内ETNは連動する指数等の変動により損失が生じるおそれがあります。国内インフラファンドは運用するインフラ資産等の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。
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詳しくは、契約締結前交付書面や上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。

NISAのご利用にあたり、ご留意いただきたい事項
  1. 日本にお住まいの18歳以上の方(NISAをご利用になる年の1月1日現在で18歳以上の方)が対象です。
  2. すべての金融機関を通じて、同一年内におひとり様1口座に限り利用することができます。
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  4. NISA預りとして保有している上場株式等をNISA預りのまま、他社に移管することはできません。
  5. 年間投資枠はつみたて投資枠は120万円、成長投資枠は240万円です。また非課税保有限度額(総枠)は、成長投資枠・つみたて投資枠合わせて1,800万円、そのうち成長投資枠は最大で1,200万円までとなります。なお、非課税保有限度額については、NISA口座で上場株式等を売却した場合、当該売却した上場株式等が費消していた分だけ非課税保有額(NISA口座で保有する上場株式等の残高)が減少し、その翌年以降の年間投資枠の範囲内で再利用することができます。
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成長投資枠のご利用にあたり、特にご留意いただきたい事項
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  3. つみたて投資枠に係る積立契約(累積投資契約)により買付けた投資信託について、原則として年1回、信託報酬等の概算値を通知いたします。
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つみたて投資枠を利用した投資信託のお取引について

購入時手数料はございません。なお、換金時には基準価額に対して最大2.0%の信託財産留保額を、投資信託の保有期間中には信託財産の純資産総額に対する運用管理費用(信託報酬)(最大1.65%(税込み・年率))等の諸経費をご負担いただく場合があります。
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