2024.12.06 update

2024.10.28 NEW

衆院選 自公過半数割れでも日本株は反発 今後の市場を見通す3つのポイント

衆院選 自公過半数割れでも日本株は反発 今後の市場を見通す3つのポイントのイメージ

今回の衆議院議員総選挙の結果は、株式や為替の市場にどのような影響をもたらすのでしょうか。野村證券 市場戦略リサーチ部の池田雄之輔部長が今後の見通しを解説します。

今回の衆議院選挙では、自民・公明連立の議席数は215議席にとどまり、2009年以来の与党過半数(今回は233議席)割れとなりました。一般的に、与党の勢力が後退すると経済政策の推進が弱まり、株式市場にはネガティブと見なされがちですが、今回は第一党の交代には至りませんでした。最大野党の立憲民主党は、選挙前の98議席から148議席へ大きく伸びたものの、自民党の191議席を下回っています。

与党の過半数割れは事前に意識されており、ある程度市場に織り込まれていたと見ています。日経平均株価は10月15日に終値39,910円をつけたのち、徐々に下落し、選挙直前の10月25日には終値37,913円まで下落しました。

選挙の結果、やはり与党過半数割れとなったものの、自公連立を軸とする政権が継続する可能性が高いことへの安心感が広がりました。また、新たな連立のパートナーとして有力視されている国民民主党が減税などによる景気刺激を重視していることも、株高材料と受け止められている可能性があります。立憲民主党が掲げた法人税引き上げや日本銀行のインフレ目標の引き下げなど、経済政策の激変は回避される見込みと考えられます。

衆院選後の動き、3つの注目点

ここから日本株の今後を予測するうえで、衆院選後の政局への注目点は3つあります。

① 石破首相の進退

石破首相は、「総理としての職責を続ける」と続投の意向を示しましたが、自民党内で退陣に向けた圧力が高まる可能性は完全には否定できません。石破首相辞任のリスクが消えない場合、市場では経済政策面でハト派(景気重視)的な高市早苗前経済安全保障相の首相就任の可能性が意識されるでしょう。

② どの政党が新たな連立・閣外協力パートナーとなるか

次に、自公にプラスして連立に協力する政党がどこになるかが大きなポイントとなります。国民民主党(国民)なのか日本維新の会(維新)なのか。いずれも現時点では党首が連立の可能性を否定していますが、今後の自公との交渉次第でしょう。

連立拡大の場合、国民の「高圧経済によって為替、物価を適切に安定」や維新の「雇用の最大化の日銀の目的への明記」、といったハト派姿勢が注目を集めるでしょう。首相退陣、連立拡大のいずれも、日銀利上げの遅れを通じた円安・株高材料と見なされやすいと思います。

③ 連立拡大により政権が安定化するか

① ②のいずれも成立せずに連立交渉が進展しない場合、自公政権が閣外協力などにより少数与党として維持されることになります。その場合は、経済政策の遂行能力の観点で疑問符が付き、株安要因と見做される可能性もあります。

では① ②の場合、円安株高が大幅に進むのかと言われると、そうではないと思います。1ドル=160円を再度超えるような円安が進むと世論の反発も強まり、首相が誰であっても放置させるとは考えにくいからです。また、日本銀行の植田総裁の任期が2028年4月まで残っていることを考慮すれば、日銀の政策方針がそう簡単には転換しないとも見ています。つまり、実際に円安促進的な金融政策運営へと姿勢が大きく変化する可能性は限られるということです。

今後、為替・株価にとって最重要なのは米大統領選

日本の選挙よりも大きな影響力を持つのは、11月5日に実施される米大統領選の動向です。民主党のハリス候補、共和党のトランプ候補の接戦が予想されますが、市場はトランプ政権の復活だけでなく、共和党が上下院も制する「トリプル・レッド」を織り込み始めています。

ホワイトハウスと議会が同じ勢力になれば、予算措置の必要な政策の実現可能性が高まります。特に注目されるのは法人税率の引き下げです。トランプ氏は大統領就任時の2017年12月に35%から21%への引き下げを実現させましたが、さらに15%への引き下げを公約に掲げています。実現見通しが高まれば、米国株のみならず、米国事業シェアの高い日本企業にも恩恵が及ぶでしょう。

トランプ氏はFRB(米連邦準備理事会)にハト派的な政策を要求し、ドル安政策を進めるという見方もありますが、市場が強く意識するにはまだ距離があります。パウエル議長の任期が2026年5月まで残っているからです。「トランプ勝利」となった場合、市場はまず関税強化によるインフレ圧力の高まり(ドル高)と減税による株高を見に行くと予想できます。もちろん、中長期的には米国の孤立主義的な外交姿勢がもたらすグローバルな地政学リスクの高まりなど、株安方向に作用しかねないマイナス要素も、トランプ氏の政策スタンスには含まれています。

野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔
1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に定期的に出演中。

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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