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2019.04.04 NEW読み方の角度

ドラッカーの予見した時代―なぜ今こそ『プロフェッショナルの条件』を読むべきなのか

ドラッカーの予見した時代―なぜ今こそ『プロフェッショナルの条件』を読むべきなのかのイメージ

これからは個人の時代だ――。近年、ビジネスの現場やメディア上で、このようなフレーズを見聞きする機会が増えた。ややもすると、雇用形態の観点にのみフォーカスされがちなトピックではあるが、この言葉の本質はそこではない。

重要なのは、組織に属するか否かを問わず、誰もが「個人としての専門性や生産性の向上」を求められるようになっている、ということ(それも、かつてないほど強く)だ。

技術発達によりスキルの陳腐化が加速する中で、あるいは優秀なプレーヤーたちとのグローバルなレベルでの競争が不可避となりゆく中で、私たちビジネスパーソンは、プロフェッショナルとして卓越し続けていかなくてはならない時代を迎えているといえる。

「現代社会では、すべての者がエグゼクティブである」

これは、四半世紀以上も前にピーター・F・ドラッカー(1909〜2005年)が綴った言葉だ。広範な知識と深く鋭い洞察力から新しい時代の到来を予見し、そこにおける組織や個人のあるべき姿とそれを実現するための方法論を説いた同氏の言葉は、歳月の流れの中で古びるどころか、ますますのリアリティをもって響く。

“ドラッカーが予見した時代”を生きるにあたって、彼の記した言葉に立ち返ってみる。そうすることで、私たちはプロフェッショナルであり続けるための大きな気づき、あるいは知識を得ることができるはずだ。

知識社会はいかに到来したか

今回紹介する『プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社)は、ドラッカーが成功や自己実現のための方法論、知識について論じたテキストを、著作10点と論文1点から抜粋し、ドラッカー自身が加筆・削除・修正を加えたもの。

言わば「ドラッカーによるドラッカー入門書」であり、絶えざる自己研磨を志すビジネスパーソンが「はじめて読むドラッカー」としてふさわしい一冊だと言えるだろう。

本書は巨視的・通史的な視点から社会の変化を論じた「ポスト資本主義社会への転換」という章から幕を開ける。自らがどのような時代を生きているのか——。それを知ることなくして、成果をあげることや自己実現することなどできはしない、というのがその理由だ。

「ポスト資本主義社会への転換」を論じるにあたって、ドラッカーは「知識の役割の変化」を軸として社会のありようの変化を紐解いていく。

ドラッカーによると、知識はかつて「自己認識」や「一般教養」を意味するものであり、人間の行為に関わるもの・人間に効用をもたらすものではなかったという。つまり、知識=「テクネ(技能)」の領域にあったわけだ。また、「テクネ(技能)」は属人的・非言語的なものであり、それを習得するためには徒弟となって経験を積むほかなかった。

しかし、18世紀にその風景は一変する。「テクネ(技能)」は「テクノロジー(技術)」として体系化され、それまでの徒弟制や秘伝として継承されてきたものは、知識として誰しもが学び、身につけることができるようになった。知識は効用をもたらすものへとその意味を変えたのだ。そして、それこそが産業革命の本質であり、その後の資本主義社会を必然としたのだとドラッカーは説く。

さらに時を経て、現代は知識こそが経済の中心となった。「知識社会」の到来である。

「今日では、知識だけが意味ある資源である。もちろん伝統的な生産要素、すなわち土地(天然資源)、労働、資本がなくなったわけではない。だが、それらは二義的な要素となった。それらの生産要素は、知識さえあれば入手可能である。しかも簡単に手に入れられる」(p.24)

ドラッカーのこの言葉は、世界各国におけるテック系企業やスタートアップの隆盛・成功を目の当たりにしている私たちにとって、多いに頷くところがある。

プロフェッショナルなビジネスパーソンとして、知識という資源・生産手段を自ら有する「知識労働者」であるという自覚を持つこと。また、組織に隷属するのではなく、「エグゼクティブ」として組織を道具として使う視点を持つこと。それが、自己の卓越性を高めていくための第一歩となるわけだ。

生産性を高めていくための具体的な方法論や知識

こうした時代において、私たち一人一人は「知識労働者」して成果を上げ、生産性を向上させていくために成長し続けていくことが求められている。では、どうすればよいのか。

本書には前述したような分析の後、そうした問いに対する具体的な方法論や知識が綴られている。詳しくは書籍を読んでいただくとして、ここではそこから、成長するために自らをマネジメントする方法としてドラッカーが述べている3つのポイントを紹介したい。

「強みを知る」

知識労働の生産性を向上させるため不可欠なのは、「自らの強みを知ること」であるとドラッカーはいう。「そんなことはとっくに知っているよ」との声が聞こえてきそうだが、果たして本当にそうだろうか?「誰でも、自分の強みについてはよくわかっていると思っている。だが、たいていは間違っている」というのがドラッカーの主張なのである。

とはいえ、知識労働の生産性を向上ためには、自らの強みを知ることは不可欠。どうすればいいのか。ドラッカーによれば、それを可能にする方法はただ一つ。「フィードバック分析」しかないという。

やり方は次の通り。(1)何かをすることに決めたときに、そのことによって何を期待するかということを書き留めておき、(2)9カ月後、1年後に実際の結果と照合してみる。(3)それを2、3年繰り返していく中で自己の強みを明らかにし、伸ばしていく。結果として、それが卓越性につながっていくのだそうだ。

「どの組織に所属しているか」よりも「何をどの位できるのか」ということの重要性がますます増しているこの時代に、ぜひとも念頭に置いておきたい観点である。

「時間の管理からスタートする」

「もっと時間があればよかったのに……」。プロジェクトのデッドライン間際にそのような思いを抱いた経験は、誰しもが持っているのではないだろうか。だが、時間とは「もっとも欠乏した資源」であるとドラッカーは述べる。だからこそ、何かに取り掛かる際には、時間を確保することから始めなくてはならないのだ。

「私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」(p.119)

そのためには、自分の時間の使い方を把握することが肝要である。非生産的な雑務や、他の人がやっても問題がないような業務に必要以上に時間を費やしてはいないか、よく省察してみてはいかがだろうか。

「もっとも重要なことに集中する」

自らの強みを見出し、時間を確保したとして、次に自らに課すべきは「何に集中するのかを決定すること」である。重要な仕事とそうではない仕事を判別し、前者にリソースを集中させてゆくこと。それこそが成果をあげるための秘訣であるとドラッカーは説く。

「成果をあげるための秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である。成果をあげる人は、もっとも重要なことから始め、しかも、一度に一つのことしかしない」(p.137)

そこで問題となるのは、なにを「重要なこと」として優先するのか、その選択基準であるだろう。そうした問題に対してドラッカーは例えば「過去ではなく未来を選ぶこと」や「問題ではなく機会に焦点を当てること」など幾つかのアドバイスが挙げている。詳細についてはぜひとも本書を手に取りじっくりと読み進めてもらいたい。

以上、『プロフェッショナルの条件』から、いくつかのエッセンスを紹介した。もちろん本書にはほかにも、優れたコミュニケーションのあり方や意思決定の秘訣、リーダーシップの本質など、ビジネスパーソンとして成長するための論考が豊富に並んでいる。

本書が説く「理論的背景」と「実践的方法論」は、見通しの効かない中でどこに進むべきかを見極める視座を、激しい変化の波に翻弄されることなく前に進み続けるための脚力を獲得するための一助となってくれるはずだ。変革の時代の今こそ、読む価値のある一冊であるといえるだろう。

プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するかのイメージ

■書籍情報

書籍名:プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか

著者 :P・F・ドラッカー(Peter F. Drucker)

米国クレアモント大学院大学教授。1909年ウィーン生まれ。フランクフルト大学卒。ビジネス界にもっとも影響力をもつ思想家として知られる。東西冷戦の集結、転換期の到来、社会の高齢化をいち早く知らせるとともに、「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」など、おもなマネジメントの理念を生み発展させてきた。2005年11月11日、他界。
主な著書に『企業とは何か』『現代の経営』『経営者の条件』『断絶の時代』『マネジメント』『明日を支配するもの』『ネクスト・ソサエティ』など多数ある。

訳者 :上田 惇生(うえだ あつお)

ものつくり大学名誉教授、元立命館大学客員教授。1938年生まれ。ドラッカーによる主要著作のすべてを翻訳。著書に『ドラッカー入門 新版』(共著)などがある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会代初代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

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