2021.06.24 NEW
効率よく“成果を出す人”の5つの共通点――AI分析でわかったトップ5%社員の習慣
「働き方改革」が進み、以前に比べて「労働時間が減った」「早く帰れるようになった」という人もいるだろう。だが一方、「仕事が終わらない」「休みたいけれど休める状況ではない」という人も多いのでは?
「働き方改革」の目的は、単純に「働く時間を短くすること」ではなく、「働く時間を短くしても一定の成果を上げること」。企業が取り組むのはもちろん、個人も働き方を見直し、効率化を図ることが重要だ。そこで、仕事の無駄を省き、最短距離でゴールに到達するための力が必要なのだ。
今回紹介する書籍『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、ビジネスパーソン1万8000人をAIで分析し、各社の人事評価「トップ5%」の社員(以後、「5%社員」)とその他95%の社員を比較し、5%社員に共通する習慣を指摘している。
効率が良く、成果を出している「トップ5%」の人たちは、一体どのように仕事を効率化しているのか、ポイントをおさえていきたい。
AIで計1万8000人のデータを分析
遅くまで残業している社員ほど、やる気があると高く評価されていたかつての日本とは異なり、現在は、「労働時間は少なく」「成果は大きく」という社員が高く評価される時代だ。
そんな中、人事評価でトップ5%に入る社員たちは、まさに「働き方改革」の理想型とも言うべき存在。彼らに共通する要素を見つけ出し、そこに再現性の高いルールを見つけて一般化できれば、誰もが5%社員と同じような働き方ができるはず。著者であり、マイクロソフトの元業務執行役員の越川慎司(こしかわ しんじ)氏はそう考えた。
越川氏は、自社のクライアント企業25社の協力を得て、各社の5%社員と、そうではない95%の一般社員の働き方をリサーチ。計1万8000人のデータをAIと専門家によって詳しく分析し、5%社員の共通点や、95%の社員との違いを抽出した。その結果、5%社員には5つの共通点があることがわかった。
トップ5%社員からわかった5原則
著者が独自調査をした結果見つけた、5%社員に共通する5つの要素は次の通りだ。
トップ5%社員からわかった5原則
(1)「目的」のことだけを考える
(2)「弱み」を見せる
(3)「挑戦」を「実験」と捉える
(4)「意識変革」はしない
(5)常に「ギャップ」から考える
(1)「目的」のことだけを考える
5%社員に対してアンケートやヒアリングを行ったところ、高い頻度で出現するのは「結果」「目標」という名詞や、「達成する」「成し遂げる」「認められる」などの動詞だった。これらの言葉は、95%の一般社員よりも3倍以上、使用されていたという。この調査結果から、5%社員は経緯よりも目的に対する“結果”を重視していることがわかる。
また、5%社員は時間をとても大事にして、設定した目標をクリアするために人一倍の行動力を発揮する。しかもその目標は、今の背丈に見合ったほどほどのものではなく、背伸びをしてギリギリ届くような高いものだ。それを達成するための努力を自主的に行い、実際にクリアしてみせるのが、5%社員なのだ。
追加ヒアリングをしたところ、彼らはビジョンや方針が明確だったという。つまり彼らは「仕事をすること」自体が目的なのではなく、その仕事によって生まれた成果を重視しているということだ。
実験によれば、このように目的思考を徹底させたグループは、そうではないグループより作業時間、アウトプットの質ともに、明らかに優れていたという結果も出ている。
(2)「弱み」を見せる
5%社員は仕事に関する知識を十分持っているが、それをひけらかしたり、他の人を下に見たりすることはない。むしろ謙虚でさらに質の高い知識を習得しようと貪欲な姿勢を見せている。
自分がわからないことは、積極的に先輩や上司に教えてもらう。時には相手に腹を割って話をしてもらうため、まずは自分が弱みを見せ、腹を割る。行動心理学ではこれを「返報性の原理」といい、相手に多くの意見や情報を出させる上で有効である。5%社員は意識しているいないにかかわらず、この「返報性の原理」をよく活用している。すなわち、自分の「弱い部分を見せる」という手段を通じて、相手がどんな人物であろうと、すんなり相手の懐に入るという難技を実行しているのだ。
こうして円滑な人間関係を築き、強いチームを作ることに長けているのも、5%社員の共通点だ。彼らは仕事の効率を上げ、優れた成果を出すためには、信頼を築くことが極めて重要だと知っている。
良好な信頼関係を築くためには、先に相手に何かをやってあげること(Give)が重要です。そして、困ったときにその相手から支援を得る(Get)のです。
そのため、5%社員は一生懸命、他人をサポートする。これも「返報性の原理」であり、相手が何かをしてくれると、お返しに何かしたくなるという心理効果を活用しているのだ。「一方的にお願いをするのではなく、Give&Getでスマートに関係を構築する」「社内では得意な仕事を率先して引き受ける」などは、すぐにでも真似したい行動だ。
(3)「挑戦」を「実験」と捉える
成果を出し続けて高い評価を得る人材は、共通して行動の量が多い。会話やチャット、会議での発言頻度は総じて高く、社内での移動距離も95%の社員よりも長かった。
行動量の多い5%社員は、時々失敗もする。しかし失敗してもネガティブに捉えず、失敗した理由を明らかにして次に活かすのが、彼らの特徴だ。彼らは失敗することよりも、むしろ、成功しても学びがないことを嫌うのだ。
「5%社員」は、失敗の先に成功があることを知っています。一般社員の発言を聞くと、成功は失敗との二者択一の片方であるように思えます。しかし「5%社員」は、成功は失敗との積み重ねの先にあることを理解しています。
新しいことを始めたり、前例のないことに挑戦したりすることは、少なからずリスクを伴う。とはいえ、現状維持のまま行動を起こさずにいれば、もっと多くのリスクを生む時代だ。5%社員は、「デメリットのない挑戦はない」ということを知っている。そして、デメリットよりメリットの方が大きければ行動する習慣を持っている。見えないリスクをどれだけ論じても、決して先には進めない。
自分は一体なぜ、その挑戦をするのか。目的を明確にすれば、実現するためにはどのように行動すべきか、思考が前向きに変わるはずだ。そしてまずは小さなことから始め、軌道修正しながらリスクを最小化していくことで、成功は近づいてくる。
(4)「意識変革」はしない
行動を変えるためには、意識を変えることが必要だと多くの自己啓発本が主張しているが、5%社員はそのように考えない。意識を変えることは必要だが、それをじっと待っているだけでは何も起こらないことを、彼らは理解しているからだ。
意識を変えて行動するのではなく、行動を変えることによって意識が変わるのです。行動をしてみたら変化が起きたことを自覚し、「行動を起こすことに価値がある」という意識に変わるのです。そうやって行動を継続していくと、行動変容が習慣に変わります。意識せずに行動を変えようとしていくのです。
越川氏は、5%社員が行動を習慣化する仕組みを分析した。その結果、習慣化する際には行動をやめない仕組みを考えていることがわかった。つまり彼らは、「どう始めるか」ではなく「どう継続させるか」を考えて行動しているのである。そこで浮かび上がってきたのが、「プレマックの原理」だ。
「プレマックの原理」とは、習慣化された行動の前に、新たな行動をセットすると、それを実行しやすくなるという法則だ。たとえば、「読書が嫌いでゲームが好き」という人は、「読書が終わったらゲームをする」というルールを自分で作れば、無理なく読書時間が増えるだろう。
このように、いつもやっていることを新しく身に付けたい習慣のあとに行うことは、行動を習慣化させるために非常に有効であり、すぐにでも取り入れられるアイデアだ。
(5)常に「ギャップ」から考える
5%社員は目標を達成することを、山登りに例える。はじめに山の頂上を意識し、今、自分がどの位置にいて、どれくらいの時間とコストをかけて頂上に到達するかを逆算し、そこに対して行動を起こすのだ。
95%社員のなかにもそのような逆算を行う人もいるが、概して彼らは準備に多くの時間を要し、スタートが遅れてしまう。しかし5%社員はまず最低限の計画を立てて動き始め、途中で適宜振り返りながら、道を誤ったと思えばすぐに戻る。こうした内省こそ、5%社員に共通する習慣であり、「ゴール」と「現状」のギャップを速やかに埋めるために欠かせない作業なのである。
越川氏によれば、「5%社員はそうでない社員よりも、振り返りの時間をとる人が8倍もいる」という。なぜ忙しいのか。何かやめるべきものはないか。何に無駄な時間を費やしてしまったのか。そうした内省を定期的に行い、その気づきや学びを次の行動に活かしていく。そうした「セルフPDCA」を率先して実践すれば、自らの意思のもとで自立した社員として、確かな成果を上げ続けることができるはずだ。
「働き方改革」とは「儲け方改革・稼ぎ方改革」である
ここまでが1章目の内容だが、2章以降では、5%社員が会得したコツや習慣が詳しく具体的に述べられている。
本書で越川氏が一貫して語っていることは、「今、目指すべきなのは『働き方改革』ではなく、『会社の儲け方改革』と『個人の稼ぎ方改革』だ」ということだ。労働時間を減らし、その分を新しい事業開発やスキルアップに充てれば、変化に対する適応力は上がり、会社の業績も上がる。この成功パターンを個人で実践しているのが5%社員なのだ。
2018年に「働き方改革」関連法が成立し、3年以上が経過している。だが、残業を削減したり有給休暇の取得を義務付けたりする企業が大半であり、成果として形になっている企業はいまだ少ない。その原因は、「働き方改革」の意味を取り違えている企業や社員が多いからだ。
5%社員のシンプルなルールを日常に取り入れれば、一人一人の働き方は確実に改革の道を歩むだろう。それはすなわち「稼ぎ方改革」となり、真の意味での「働き方改革」につながっていく。自分の働き方を改めて見直したい人や、今の働き方に惰性や悩みを感じている人は、書籍で紹介されているルールを取り入れて行動してみてはいかがだろうか。
■書籍情報
書籍名:AI分析でわかったトップ5%社員の習慣
著者 :越川 慎司(こしかわ しんじ)
国内外通信会社勤務、ITベンチャー起業を経て、2005年に米マイクロソフトに入社。日本マイクロソフト 業務執行役員としてPowerPointやExcelなどOfficeビジネスの責任者等を務めた後、2017年に株式会社クロスリバーを設立。メディア出演、講演多数。講演の受講者満足度は平均94%、自発的に行動を起こす受講者が続出している。『科学的に正しいずるい資料作成術』、『超・会議術~テレワーク時代の新しい働き方』などの著書がある。
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。