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2018.12.20 NEW

【石川善樹】現代のリーダーに「ユーモア」が求められる理由

【石川善樹】現代のリーダーに「ユーモア」が求められる理由のイメージ

今、現場の中心となって働く80年代生まれのビジネスリーダーは、人生において、ビジネスにおいてどんなことを大切にしているのだろうか。
予防医学博士の石川善樹氏が「大切にしていること」から、生き方のヒントを見つけよう。

オリジナリティがない、というコンプレックス

昔から、良くも悪くも他人から影響を受けやすい性質で、「いいな」と感じた他人の思考パターンを真似するのが好きでした。

誰にでも多少は経験があると思いますが、たとえば本で読んだ「アイデアを生み出すルール」などを真似すると、面白いようにうまくいったりする。これはすごいな、使えるなと嬉しくなって、褒められたりもするのですが、残念ながら自分には「これはあの人のコピーなんだよな……」とわかっている。

そういうわけで僕は、30代前半まで、「オリジナリティがないこと」がコンプレックスでした。一見面白いものができても、まったく自信が持てなかった。

そんな自分に踏ん切りをつけ、赤ん坊のようでもいいから、自ら歩もうと思い立ったのが30代後半です。いくら正しい道でも、自分に自信が持てなくては意味がない。他人からの評価を気にせず、100%自分の考えで行動するようになってから、何をしても俄然面白くなりました。

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80年代生まれの僕たちは、日本という国が成熟しつつあるタイミングで生まれ、「いい学校に行って、いい会社に入れば、いい人生が送れる」という定説が疑問視されはじめた世代です。「正解を効率よく」ではなく、「独自性があること」が評価されるようになった世代だとも言えるでしょう。

たとえば、1世代、2世代前の先人たちは「インターネット」というとんでもない発明を活かして、どんどん自分流に世界を変えていきました。その反面、自分は「誰かが考えた正解」をなぞっているだけ。僕の「オリジナリティ」に対するコンプレックスは、そんなところから来ていたのかもしれません。

変化の時代を歩むために必要な3つのこと

僕は生きる上で大切にしたい信条が3つあります。それは「勝手な責任感」「強烈なエゴ」「ユーモア」です。

ひとつずつ説明していきましょう。まず「勝手な責任感」について。最近、僕と同年代の政治家とよく交流します。彼らと話していると、なぜこんなに視座が高く、当事者として主体的に問題に取り組めるのか不思議だったのですが、おそらく「自分がいないとこの国はダメになる」と思っているから。誰も「この国を率いてくれ」なんて頼んでいないのに、彼らは勝手な責任感を感じて、自分がこの国をリードすることに決めている。だから、そのときに必要になる力を身につけようと、動き回ることができる。
与えられた仕事をこなす人と、自ら道を切り拓く人の間には大きな違いがあります。それはビジネスでも政治でも同じこと。きっと「自分が会社や社会を変えるんだ」という勝手な責任感を持って行動していれば、仕事との向き合い方どころか、人生すらまったく違うものになるはず。

ふたつめは「強烈なエゴ」です。そもそも、なぜ勝手な責任感を持てるかというと、「実現したいこと」があるからです。それは必ずしも世間で「常識」とされていることではないかもしれません。

常識はみんな知っているし、大抵の人はその常識に従って生きている。でも、人々に大きなインパクトを与え、世の中を変えてきたのは、いつも常識から外れた人たちです。常識的な正しそうなことは誰でも考えつくから、結果も似たようなことにしかならない。正しいかどうかはわからないけれど、これをしたいんだという強烈なエゴが、責任感を生み、世の中を変えるんではないかと思っています。

今の時代に求められる「楽観的なリーダー」という仮説

最後は「ユーモア」です。小学校で人気者になるのは、成績がいい子や正しいことを言うだけの子ではなく、面白い子ですよね。大人もそれは同じで、正しさだけでは周りはついてきてくれません。

特に今のような変化の時代、つまり「右肩上がりの成長」が困難な時代には、いわばチャーチルのような強さより、ユーモアのある、楽観的なリーダーが求められるのではないでしょうか。

石川 善樹のイメージ

先日、日本電産の創業者である永守重信さんと会食させていただいた際、すべての話にオチをつけるという驚異的な話術を目の当たりにしました(笑)。僕のような30代の小僧に、そこまでサービス精神を発揮する義理は何もありません。それでも永守さんはユーモアを大事にしてらっしゃっていて、そんな話し方をする。

また、これは聞いた話ですが、ソフトバンクの孫正義さんは「1会議・1笑い」と決め、どんなシリアスな会議でも必ず1回は笑いをとるそうです。「孫さんのような立場だからできることだ」と断じるのは簡単ですが、逆に、孫さんの立場なら笑いをとる必要もないはずです。

ユーモアを実践するには勇気がいるし、TPOを見誤らないためにも相当慎重に空気を読まなければいけない。それでも周りを笑わせようとするのは、ユーモアのある人間でありたい、場を和ませたいと、永守さんや孫さんが強く思っているからでしょう。

もちろん、面白いことを言えるかどうかはまた別の話になりますが、少なくとも「笑わせねば」という使命感を持って、どれだけ場数を踏めたかが重要だと思っています。

これは言うまでもありませんが、一緒に笑うと幸せな気持ちになり、少し親密さが増します。何が面白かったのか、内容までは思い出せなくても、そのときの幸せな気持ちは記憶として残る。きっと永守さんも孫さんも、変化が激しい時代のリーダーたるべく、本能的にそれを実践しているのかもしれません。

整理すると、何をするにもまずは「強烈なエゴ」が必要ですし、そこから「勝手な責任感」が生まれてくると思います。しかし、それだけで人がついてくるわけではありません。

本当に社会にインパクトを与えようと思えば、その旅路は困難なものになるでしょう。だからこそ、日々を歩んでいく原動力として、ユーモアが大事になるのだと思います。

石川 善樹(いしかわ よしき)
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業。ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きる(Well-Being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。

(制作:NewsPicks Brand Design 執筆:唐仁原俊博 編集:大高志帆 撮影:小池彩子)

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