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2018.10.15 NEW

【不機嫌対策特集:前編】職場の同僚の「不機嫌」の正体とその対策

【不機嫌対策特集:前編】職場の同僚の「不機嫌」の正体とその対策のイメージ

素っ気ない返事や仏頂面の人がまわりにいると仕事がやりづらい…という人も多いはず。不機嫌な人の正体や対応策を知り、気持ちよく仕事をしよう。

話しかけたら素っ気ない返事だったり、仏頂面だったり…。上司や同僚や部下がそんな態度だったら、誰もが不快な思いをしてしまうもの。同じ職場の人が不機嫌だと、仕事がやりにくくて当然。ましてや、その原因が自分には一切心当たりがなかったら、どのように振る舞えばよいのだろうか。

人間である以上、気分の浮き沈みは仕方がない。とはいえ、良い人間関係を継続し、職場を快適な空間に近づけるためには何か手を打ちたいもの。「なるべく近づかない?」「ご機嫌取りをする?」「『機嫌悪そうだけど、どうしたの』と声をかける?」。いろんな対処法が考えられるが、相手によって当たり外れがありそうだ。

本連載ではパターンに基づく効果的な対処法をお伝えしたい。前編では、そもそも「不機嫌」とは何か、その正体についてと、不機嫌な人に遭遇した際にどう対処すればいいかを紹介する。後編では、自分が不機嫌になることを未然に防ぐ方法を伝授する。

そもそも不機嫌とは何か?

では「不機嫌とは何か」について考えていこう。
まず、数々のベストセラーを持つ精神科医の和田秀樹さんによると、「不機嫌とは、怒りや欲求不満などの感情の不適切な表現形」だという。人によって、怒りが不機嫌という形で表れる人もいれば、大きな声で怒鳴る、という形で表われる人もいる。怒りを表に出さず、文章にして気持ちを落ち着かせる人もいる。

さらに、心理学研究者であり、臨床心理士としても職場の人間関係の相談に乗る関屋裕希さんによると、不機嫌とは「イライラや怒りが漏れ出てしまっている状態」だという。「自分の思い通りにいかなかったり、体調が悪かったり。欲求が満たされないと、舌打ちやため息、無表情などの態度に出る」。その態度を見て、周りの人は「あの人は不機嫌だ」と判断してしまう。和田さんも、「不機嫌とはあくまで周りの人が判断すること。『私はいま不機嫌です』と言う人はいませんから」と強調する。

不機嫌の正体は3つある

では不機嫌な人が周りにいる場合、どうすればいいのか。関屋さんは、「不機嫌な人が周りにいたら、まず相手の状態を理解することが大切。不機嫌の理由がわからないとモヤモヤするけれど、『こうだからかな』と少しでも理解できると、落ち着いて対処できるようになる」と説く。関屋さんによると、職場にいる不機嫌な人たちは、次の3パターンに大別できると言う。そのパターンに当てはめて、相手の状態を理解してみよう。

  1. 自分に余裕がなく、不機嫌になっている人

    特に職場で遭遇率が高いのが、このパターンではないだろうか。自分の能力では手に負えない難しい要求をされたり、時間内にはとてもさばけない大量の仕事を抱えてしまうと、周囲への思いやりを持てないばかりか、それができない自分を責めたり、それでもやらなければと焦りを抱えてしまうもの。すると、余裕がなくなって、ぶっきらぼうに返事する、キーボードのタッチが荒くなるなど行動に影響が出て、周囲にも「不機嫌」という印象を与えてしまうのだ。体調不良で機嫌が悪くなっている人も、このパターンに入る。思いどおりに事を運べず、余裕がなくなってしまうのだ。

    こうしたケースでは、本人もどう感情をコントロールすればいいかわかっていない。けれど、目の前の仕事のことしか見えていないため、カウンセリングに来るケースも少ないという。だからこそ、周囲が不機嫌な人にどう対処すればいいかが重要になる。

  2. 周りへの不平不満がたまっている人

    自身のことでなく、職場の部下や同僚など、本来ならば同じチームとして協力して仕事をこなしてくれるはずの存在が、自分の思うように動いてくれないときに、ストレスを抱いてしまう。それが「不機嫌さ」という形で、表情に出るのだ。

    自身の待遇や評価が芳しくないケースでも、自分を評価する上司への不満がたまり、「不機嫌さ」につながるものだ。さらに、職場が暑い、寒い、うるさい……。特定の個人にではなく、環境面における不満が不機嫌さにつながるケースもある。

  3. 普通にしているのに「不機嫌」に見えてしまう人

    かつて、関屋さんは研修で「部下に相談されない」と悩んでいた管理職から質問されたことがあった。関屋さんはその方に、部下が相談してこないのは、その人が不機嫌に見えているからかもしれないと投げかけ、一緒に「2週間、笑顔で挨拶をする」というプランを考えたという。すると部下から相談がくるようになったそうだ。

    このように、本人はいたって真面目に仕事をしているだけだが、ついつい険しい表情になっていてまわりに「いつも不機嫌」と誤解されてしまう――。そういうケースは意外と多いという。まずは自分の近くにいる人が、本当に不機嫌なのか、不機嫌に「見えている」だけなのかを、目を凝らして見てみよう。

不機嫌の3パターンに最適な対処法とは?

では、そうした不機嫌な人に出会ってしまったら、どう対処すればいいのか。「時間が解決してくれると思って、受け流すのも手」と和田さんは言う。「人によって、不機嫌になりやすい人、なりにくい人がいますが、一般的に一日じゅう不機嫌の人はいません。放っておけば治るものです」。

ただ、受け流そうとしても、機嫌が悪い人にはつい「不機嫌」というレッテルを貼ってしまうもの。そうして、こちらが避けたり、突っ掛かったりしてしまうと、「もっと機嫌が悪くなってしまう」(和田さん)。まったく対処しないのも、得策ではないという。

では、どのように対処すればいいのだろうか。先に説明した3パターンのように、人が不機嫌になる理由はさまざまだ。ただし、「職場の同僚が不機嫌だった場合の対処法には共通点があります」と関屋さん。次のような対処法が有効だと説く。

不機嫌な相手と接するときに重要なのは、普段と変わらず冷静に対応することだ。自分が原因かもしれないと思うと、ついおどおどしてしまうもの。そうすると関係が悪化してしまうリスクもあり、逆効果だ。そうした事態を避けるためにも、まずは「自分は関係ない」と割り切る姿勢を持つことだ。

上記の「1.自分に余裕がなく、不機嫌になっている人」に対しては、その際に余裕がないいちばんの理由まで掘り下げるように質問するとよい。回答によっては、自分が仕事でフォローできる場合もあるためだ。同じチームで仕事をしており、互いに余裕がないような場合は、「大変だよね」と気持ちを発散し合ってみるのもいいだろう。

一方で「2.周りへの不平不満がたまっている人」に対しては、理由を深掘りするような問い方は避けたほうがいい。こういう人が身近にいる場合、いちばん重要なのは、「巻き込まれない」こと。不平不満の理由が自分ではなかったとしても、他人への苛立ちが、ふとしたきっかけで自分に向いてくる可能性があるのだ。

また、「3.普通にしているのに『不機嫌』に見えてしまう人」に対しては、相手の状況を把握して本当に不機嫌かを探るためにも、話しかけてみてほしい。「大変そうだから心配。大丈夫?」「疲れて見えるけど大丈夫?」と。あくまで「不機嫌」という言葉を使わずに、話しかけることが大事だ。

大事なのは、周囲への不満が理由で不機嫌な人とは、物理的にも心理的にも距離を置き、向こうが話しかけてきても、普段通りに接することだ。その際、誰かへの不満を聞かされるかもしれないが、なるべく深入りせず、聞き流すようにすれば、巻き込まれることは防げるだろう。

もしかしたら、自分がそんな不機嫌な人になってしまっているかもしれない。自分で気づくためにはどうしたらいいのか。後編では、自分が不機嫌な状態になってしまったとき、周囲へのダメージを最小限に抑えるための対処法を探る。

監修:和田 秀樹(わだ ひでき)

精神科医。1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ、カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在、国際医療福祉大学心理学科教授(臨床心理学専攻)、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック(アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化したクリニック)院長。主な著書に『感情的にならない本』など多数。

監修:関屋 裕希(せきや ゆき)

臨床心理士。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 客員研究員。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて特任研究員として勤務。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)。業種や企業規模を問わず、ストレスマネジメントに関する講演、企業の組織的なストレス対策に関するコンサルティング、執筆活動をおこなっている。著書に『感情の問題地図』がある。

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