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2021.01.14 NEW

「伝わる文章」を書ける人が有利な時代――敏腕編集者から学ぶ文章術【実践例あり】

「伝わる文章」を書ける人が有利な時代――敏腕編集者から学ぶ文章術【実践例あり】のイメージ

インターネットやSNSの発達により、誰もが情報発信できる世の中になって久しいが、昨今は一般のビジネスパーソンにとっても「書く」ことが仕事の成果に直結すると言われることが増えてきた。

文章を書くノウハウやそのスキルの重要性を説いた書籍『書くのがしんどい』(PHP研究所)の著者であり、数々のベストセラー本を手掛けた編集者の竹村俊助(たけむら しゅんすけ)さんは、「書く力を鍛えることで、誰でもいますぐ仕事や人生を変えられる」と説く。

なぜいまビジネスパーソンに書くスキルの重要性が高まっているのか、仕事で成果を出すにはどのように書けばいいのかを聞いた。

リモートワークの浸透で「書く」ことがコミュニケーションの主軸になった

竹村さんは、コロナのパンデミック以降、ビジネスパーソンにとっての文章力の重要性が増していると言う。

「リモートワークが浸透し、オフィスに行かない人が増えたことで、仕事でのコミュニケーションのあり方が変わりつつあります。

たとえば、これまでは隣の席の上司に『これやっといて』と言って渡されていた仕事が、いまはメールやチャットなどのコミュニケーションツールを通じて文字で依頼されるようになりました。社外の人とのやりとりもメールのみになった人が多いのではないでしょうか」

人と直接接する機会が激減した結果、従来のコミュニケーションが文字によるコミュニケーションに取って代わられるようになった。竹村さんの言葉を借りると、「伝わる文章を書ける人にこれほど有利な時代はない」のだ。

「伝わる文章」を書くための4つのポイント

では、どうすれば「伝わる文章」を書けるようになれるのか。竹村さんの著書『書くのがしんどい』によると、ポイントは主に以下の4つ。

  1. 自分がわからない文章を書いてはいけない
  2. 一文は短いほうがいい
  3. いちばん伝えたいことは先頭に
  4. 受け手がどう思うかを想像する

どういうことなのか、順番に見ていこう。

1:自分がわからない文章を書いてはいけない

プライベートのメールなど、業務外のメッセージではシンプルな言葉でやりとりしているのに、ことビジネス文章となると肩に力が入り、難しい言葉や言い回しを使おうとする人は少なくない。竹村さんは「理想は、読みながらすーっと脳に染み込んでいくような文章──“読む速度と理解する速度が一致する文章”だというのが僕の持論です」と語る。

「個人的には受験戦争を突破してきた人ほど『小難しい文章を書ける人=デキる人』といった刷り込みがある気がします。だけど、ビジネス文書は論文ではないのだから、わかりやすく書くに越したことはありません」

2:一文は短いほうがいい

一文は短いほうが理解しやすく、リズムができて読みやすい。ひとつの文で一気にすべての情報を伝えようとするのではなく、いくつかの文章に分ければいいのだ。

「基本的にひとつの文でひとつのことが伝わればいいと思っています。たとえば『猫は動物であり哺乳類でもある一方で犬も動物であり哺乳類である』という長い一文は、『猫は動物です。哺乳類でもあります。犬も動物です。哺乳類です』と4つの短い文に分けられます。どう考えても後者の文章のほうが伝わりやすいですよね?」

3:いちばん伝えたいことは先頭に

特に多忙な上司やクライアントになにかを伝える場合、“エレベーターピッチ”などという言葉もあるように、要旨は20~30秒ほどで説明したほうが良い。端的にまとめるという点では文章も同じだという。

『要するになにが言いたいのか』を2、3行にまとめたら、いちばん伝えたいことを先頭にもってくる。推理小説をプロローグからじっくり読み進めていく暇がない人に、いきなり犯人の名前を教えてネタばらしするイメージでしょうか(笑)。メールを書くときも、メーラーのワンスクロール内で要件がわかるようにするのがポイントだと思います」

4:受け手がどう思うかを想像する

あなたの文章を受け取った相手が、どう思うかを想像して書く。ここまで紹介してきた「簡易な文章を心がける」「分けて書く」「結論を先に書く」といったポイントも、要するにすべて相手への配慮だ。当然、相手の立場や状況によって優先すべき要素は異なる。

「たとえば相手が合理性を重視する多忙なビジネスパーソンの場合、短く簡潔な文章で要件を伝えたほうがいいですよね。逆に、相手が感情を大事にする人なら、簡易な文章はむしろ失礼にあたるかもしれない。

その意味で、僕はチームメンバーとコミュニケーションツールでやりとりをする際などに、その伝わり方にも注意を払っています。『了解です。』みたいなひと言では冷たい印象を与えて気を使わせてしまうかもしれない。相手との関係性にもよりますが、できるだけ絵文字や『!』を使ったりして、気持ちよく会話してもらえるよう心がけています」

竹村俊助さんが添削! 「伝わる文章」の実践例

ここまで紹介したポイントを、普段のビジネス文書に反映するとどうなるか。実際に、竹村さんにメールとチャットの例文を添削してもらった。

1つめのメール(図1)は、とある分野の専門家へ講演を依頼するメール。依頼主は、過去に行われたトークイベントで依頼相手と名刺を交換したことがあるという想定だ。

図1:架空のメール文章(Before)
図1:架空のメール文章(Before)

「情報を詰め込んだ長い一文が目につく」「本題が冒頭になくわかりづらい」など、一見しただけで前述した“伝わる文章のポイント”に反する箇所が多い。それらに加え、さらに竹村さんが指摘したA~Gの7点を修正した文面が以下だ。

図2:架空のメール文章(After)
図2:架空のメール文章(After)

A)件名はそれだけで概要がわかるようにする

B)知り合って間もない相手にはフルネームが基本

C)自分はどこで会った誰なのかを具体的に書く

D)相手に尊敬の念を伝える

E)先に本題を伝える

F)一通目には多くの要望を詰め込まない

G)文章に「思い」や「エモさ」を混ぜる

「まず、件名はそれだけでメールの概要がわかる内容に。件名は自社名・自分の名前の順にしましょう(A)。相手の名前は、知り合って間もない人であればフルネームが基本(B)。

また、整理して内容を伝えた上で、相手を思う視点が重要です。相手との関係性にもよりますが、いきなり打ち合わせの日程調整は唐突すぎる感がある。一通目のメールは依頼についての可否を伺うのみにとどめるべきです(F)。『業界を盛り上げたい』などの『思い』『エモさ』を混ぜると、向こうも断りづらいしテンションを上げてもらえるかもしれません(G)」

2つめのチャット(図3)は、納期の迫った案件について進捗を確認するという例だ。ダイレクトにメッセージをやりとりするだけあり、送り主と受け手は一定の人間関係を築いている。同じシチュエーションを想定して、竹村さんが書いた文章が右の図。

図3:架空のチャットの文章(Before→After)
図3:架空のチャットの文章(Before→After)

「ひとつのメッセージで一気に伝えると唐突感があるので、僕なら『挨拶』と『要件』を2つに分けますね。元気よくご機嫌伺いをしてから要件を伝えます。

進捗を確認するにも『やってますか?』ではなく『状況はどうでしょうか?』で和らげる。『遅れると私が困る』というより『お客さんが困る』と伝えることで、ポジティブに受け取ってもらえます。

さらに、『楽しみです!』というひと言を添えることで、やる気を出してもらえるはずです」

「書く」ことで日々の仕事とキャリアが変わる

メールやチャットに限らず、ビジネスに関するあらゆる文章を相手に伝わりやすいように書く。わかりやすい企画書をつくれば評価されるし、ご機嫌な自分を文字で演出すればコミュニケーションがスムーズになる。相手に配慮して「書く」ことは、結果的に業務の円滑化につながる。

「結局のところ、なにを書くにも自分の能力を誇示したりカッコつけたりせずに、どうすれば相手が気持ちよく読めるかを考えるのが大事なんだと思います。コミュニケーションツールの言葉遣いなんてどうでもいいと軽視する人もいるかもしれませんが、こちらの機嫌が悪いと思われるだけで、相手にとっては機嫌取りという無駄なコストが発生する。

その意味では機嫌の良さもビジネススキルのひとつです。実際には機嫌が悪くても、文字だけで機嫌が偽装できるならば、やらない手はないですよね?」

竹村さんは日頃SNSなどで「あらゆる人が息をするように文字を書く時代」になったと主張している。一般のビジネスパーソンを含め、誰にとっても書く機会があふれかえっているのは、それだけ自分自身がアピールしたいことを伝えられる機会も多いということ。「書く」ことは日々の仕事を変え、キャリアを変え、人生を変えるのだ。

【お話をお伺いした方】
竹村 俊助(たけむら しゅんすけ)
1980年生まれ。星海社、ダイヤモンド社などを経て独立し、2017年に株式会社WORDS代表取締役に就任。編集者として『ぼくらの仮説が世界をつくる』(佐渡島庸平/ダイヤモンド社)『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(水野学/ダイヤモンド社)、ライターとして『メモの魔力』(前田裕二/幻冬舎)『実験思考』(光本勇介/幻冬舎)などのベストセラーを担当。2020年7月、自身の著書『書くのがしんどい』(PHP研究所)を上梓した。Twitter、noteの投稿も話題に。

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