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“不毛な会議”もこれで解消!「具体と抽象」の思考術

“不毛な会議”もこれで解消!「具体と抽象」の思考術のイメージ

「言うことがコロコロ変わる上司」や「延々とまとまらない会議」――働く上で、コミュニケーションギャップや無用な軋轢に悩まされるシーンは数多くある。

しかし、こうした問題の多くは、「具体と抽象」を往復する思考を身に付けることで、容易に解決できる。また、この思考法は、円滑なコミュニケーションを築くだけではなく、柔軟にアイデアを出すことにも有効だ。

具体化と抽象化の思考法と、その身に付け方について、『「具体⇄抽象」トレーニング』(PHPビジネス新書)の著者である、ビジネスコンサルタントの細谷功(ほそや いさお)さんにお話を伺った。

物事を考えるとき、頭の中では何が起きているのか?

まず、「具体と抽象」とはそれぞれ何かというイメージを掴むために、次の問いに答えてほしい。

Q1.「コンビニで売っているもの」を30秒間で思いつくだけ挙げてください

Q2.「コンビニで売っていないもの」を30秒間で思いつくだけ挙げてください

さて、どれだけの回答を挙げられただろうか。2問目は1問目より若干難しく感じた人もいるかもしれない。ここで振り返ってみてほしいのは、この2つの問いに答えるとき、頭の中でどのように考え、答えをアウトプットしていたかだ。

Q1の「コンビニで売っているもの」を思い出す作業は、比較的簡単だったはずだ。おそらく多くの人が、普段行き慣れたコンビニの店内を思い浮かべ、記憶を頼りに品名をつらつらと挙げることができただろう。

だが、Q2はどうだろうか。「コンビニで売っていないもの」を、なかなか挙げられなかった人も少なくないだろう。「売っていないもの」を目にする機会はそもそもないのだから、そう簡単に品名を思い浮かべることができないのだ。

ではどうやって、「売っていないもの」の答えを探せばいいのか。細谷さんは、「一段階、大きな概念で考えるといい」と言う。

「『コンビニ』を『お店』というカテゴリーへ一段階引き上げて考えてみましょう。そうすると、家電量販店やデパート、魚屋、八百屋、書店など、さまざまな種類の店が思い浮かびます。あとは、『カジュアル』『値段が安い』などの特徴がある『コンビニ』とは対照的な特徴を持つ店を考え、その店で『売っているもの』の記憶を遡っていくと、簡単に『コンビニで売っていないもの』を挙げることができるでしょう。

これが『具体と抽象』を往復する思考です。一段階カテゴリーを引き上げて(=抽象化)、そこから再び具体的なものに落とし込んで考えると(=具体化)、これまで見えなかったものが見えてきます」

具体と抽象の視点で捉えると、世の中の物事は、すべてピラミッドの構造で表すことができる。

図1:「具体と抽象」の関係図
図1:「具体と抽象」の関係図

抽象化されるほどその一単語に包括される概念が多くなり、具体化されるほど、一つひとつの情報は固有性を持つ。このピラミッドの中を、まるでエレベーターで行き来するかのように視点を切り替えることが、「具体と抽象」を往復する思考なのである。

話が噛み合わないときには、「抽象化」が有効

「コンビニで売っているもの」の方が思い浮かびやすいように人間の思考には癖があり、「具体化」の視点で考えることが多い。しかし、具体化で考えるアイデアは「自分固有の経験や記憶」に基づいていることが多いため、他者と共有することが難しいというデメリットがある。

「たとえば、『人にアドバイスするとき、最も重要だと思うことを3つ』を挙げてみてください。そこで自分が誰かにアドバイスされたときのことを思い返して答えを考えると、他者の回答と見比べたとき、『どれが最も重要な3点なのか』を判断することが難しい。要するに、具体化だけで発想したアイデアは比較ができないのです」

そこで、視点を一段階引き上げて考えることで、他者の理解や共感を得やすくなるだけでなく、アイデアが浮かんできやすいのだという。抽象化の視点で考える方法のひとつとして、細谷さんはこう語る。

『5W1H』は、抽象的に思考する際のヒントになります。たとえば、『When(タイミング)』の観点で、アドバイスをするときの重要点について考えてみると、『他人が本当に困っていて、意見を求められるときにアドバイスすることが重要』などと、具体的に落とし込むことができる。

こんなふうに、5W1Hを基準にして考えると、思考の偏りがなくなって複数の関係者の間で議論がしやすくなりますし、アイデアを出しやすくなります」

図2:「具体化」と「抽象化」のアウトプットイメージ
図2:「具体化」と「抽象化」のアウトプットイメージ

出典:細谷功さん著書より編集部作成

つまり、「抽象化」の視点を持つことは、思考の「軸」を設ける行為。その「軸」があるからこそ、コミュニケーションが円滑に進むのである。

「よく、上司と部下で話が噛み合わないといったケースが見られますが、その原因は多くの場合、『軸』が欠けているから。話し合いが空中戦を続けるだけで、当人同士も何が噛み合っていないのか、全くわかっていないのです。

そんなときは、話の抽象度を上げると共有可能な軸が生まれ、議論がしやすくなります。あとはその軸を起点に『具体と抽象』の思考を繰り返し、アイデアを深めていけば良いのです」

変化の時代にも「具体と抽象」の思考法が役立つ

では、「具体と抽象」を自在に往復する思考力はどうやって身に付けたら良いのだろうか。

細谷さんは、日常生活でも実践できるトレーニング方法として、「最も役立つのはアナロジーだ」と指南する。「アナロジー」とはすなわち類推や類比で、深く知らない分野へ自分の知っている知識を応用し、違うもの同士の共通点を探すことだ。

「一例として、『不動産業界』と『広告業界』の共通点を探してみましょう。一見、求められる人材もビジネス構造も全く違いますが、たとえば、『良い場所を見つけて高く売る』という点が共通していますよね。不動産はいい物件を見つけて高く売ることが商売ですし、広告業界もインターネットや雑誌、テレビなどの広告枠(=場所)を見つけて高く売ることが商売です。

このように、何の類似性もなさそうなものの中に共通点を見つけていき、その共通点を起点に、次のアイデアを連想していく。こうやってアナロジーで考えてみると、意外なところにビジネスのヒントが落ちていることに気づくものです」

アナロジーを「具体と抽象」の思考にあてはめて考えると、「抽象化」とは物事の共通点を探すことで、「具体化」とは個別のアイデアだと言い換えることができるだろう。そのため、この思考を繰り返すことで、「具体と抽象」を往復する思考力が身に付いていくのだ。

「『具体と抽象』の思考力が身に付けば、おのずと好奇心が膨らみ、新しいことを経験するのが楽しくなるはず。あまり気が乗らない中、友達に連れていかれた個展でも、『この画家の作風が年齢とともに変わっていく様子は、僕の人生に例えられるかもしれない』『この画家は徐々に正統派から道がそれ、40歳から斬新なものを描き始めている。私も若いうちは企業でビジネスを学び、その後に力試しをしてみたい』など、違うものの中に共通点を見つけて、ひらめくこともあるかもしれません」

特にこのコロナ禍では、こうした柔軟な思考力が大きくものをいうと細谷さんは話す。

「現在は変化を起こすのに、これ以上ないチャンスです。実際、『ハンコ廃止』や『テレワークの普及』など、これまで長く課題と思われていたことが、意外とあっさり実現されています。先にも述べましたが、『具体と抽象』の思考を持つと、『自分の知らない経験や、違う考えを知りたい』という好奇心が出てくるはずなので、変化や多様性を積極的に受け入れる姿勢になっていきます

見方を変えれば、日常や時代の変化を楽しいと受け入れることでも、自然と『具体と抽象』のトレーニングになるでしょう。この時代をチャンスと捉えるか、それとも『厄介な時代になった』と捉えるか。そこで多くの人は二分されますし、数年後には、もっと大きな差になるはずです」

物事の見方が「具体」に偏っていると、物事を自分自身の知識の枠でしか捉えることができず、思考が狭まってしまう。そうした狭小な思考が、不毛な会議の原因になるなど、コミュニケーションの軋轢を生むだけでなく、アイデアをこれまでの常識に押し留めてしまうのだ。

日常生活で実践できる「具体と抽象」のトレーニングは、数をこなせばこなすだけ確実に身になっていくだろう。仕事の時間だけでなく、さまざまなシチュエーションでこの思考法を取り入れていくことで、変化の時代においてあなたを前進させる武器になるはずだ。

【お話をお伺いした方】
細谷 功(ほそや いさお)
ビジネスコンサルタント。1964年、神奈川県に生まれる。東京大学工学部を卒業後、東芝を経てビジネスコンサルティングの世界へ。アーンスト&ヤング、キャップジェミニなどの米仏日系コンサルティング会社を経て、2009年よりクニエのマネージングディレクターとなる。2012年より同社コンサルティングフェローに。専門領域は、製品開発、営業、マーケティング領域を中心とした戦略策定や業務/IT改革に関するコンサルティング。著書に『具体⇄抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法』(東洋経済新報社)、『メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問』(PHPビジネス新書)などがある。

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