2021.04.15 NEW
【解説】2021年注目の「ビヨンド副業」―そのメリットや求められる人物像とは?
2018年、働き方改革の一環としての副業解禁が掲げられて以降、副業は以前に増して注目を集めている。加えて、新型コロナウイルス感染症拡大によるワークスタイルの変化は、その動きにますます拍車をかけている。
そうした中で、現在、注目を集めているキーワードが「地方」と「オンライン」の組み合わせだ。首都圏で暮らし本業を持ちながら、地方の仕事をオンラインで請け負う。従来の副業と異なり、「首都圏~地方」という距離のハードルを大きく飛び越える(Beyond)、いわゆる「ビヨンド副業」と呼ばれる新しいワークスタイルが、今後の主流になるのではと見られている。
「自分の働き方を見直したい」「スキルをもっと活用したい」「収入をアップさせたい」「もっと人脈を広げ、将来につなげたい」と考えている人にとって、「ビヨンド副業」はそれらの希望を叶える絶好の手段である。その理由やメリット、求められる人物像を紹介していこう。
2021年、新しい副業時代の到来
2021年は、副業がいよいよ本格化すると言われている。その中で、副業のあり方もますます多様化が進んでおり、従来のように、「本業=主となる仕事」と「副業=サブとなる仕事」だけでは単純に定義しきれない、さまざまなスタイルの副業が増えてきた。本業で培った知識や技術を他方面で活かしたり、趣味を活かして新しい生産活動を始めたり、それぞれのライフスタイルや得意分野に応じて、副業を選べる時代が到来しつつあるのだ。
そしていま、もっとも注目を集めているのが「ビヨンド副業」。これは簡単に言えば、「首都圏と地方の物理的な距離を“越えて”、副業をする新しいワークスタイル」のこと。
ビヨンド副業の働き方としては、たとえば「週に数回はオンラインで仕事をして、月に1回現地に赴いて働く」といったスタイルがある。普段はオンラインで地方とつながり、時々現地へ出向き、リアルなコミュニケーションをとる、というのがビヨンド副業の特徴だ。
ビヨンド副業が注目されている背景と、その現状
現在、このビヨンド副業が注目を集めている背景として見逃せないのが、若手社会人を中心に「リモートワーク」や「地方都市の暮らし」への意欲である。リモートワークが普及したことにより、極論を言えば、インターネットがつながる限り、世界中どこにいても仕事ができるようになった。つまり、通勤可能な場所への居住が必須条件ではなくなり、仕事の拠点も居住地も、選択の自由度が広がる。そのため、地方都市への転居を考える人が増え始めている。
また、多くの場合、求められている人材の年齢は不問だが、基本的に能力重視の募集が多い。求人をする地方企業の目的が「首都圏で働いている人の実績を勘案し、その知恵と知識を借りたい」であるからだ。
2021年4月現在では、ビヨンド副業を始めるためのマッチングサービスも多く提供されている。ビヨンド副業と同じように、オンラインを介してスキルをシェアする副業と言えば、クラウドソーシングが知られているが、これとビヨンド副業が違うのは、業務を受注する契約のスタイルである。
クラウドソーシングの場合は、クラウドソーシングを展開するサービス会社を通して仕事が発注され、報酬の支払いもサービス会社が仲介する。そのため、働き手は自分で仕事を見つける必要はなく、また、報酬の請求や支払いもサービス会社が代行してくれるため、仕事に専念することができる。
だがビヨンド副業の場合、仕事探しはクラウドソーシング同様、マッチングサービスを通して行うが、あくまでも企業と働き手は直接契約が基本である。そのため、働き手は仲介業者にマージンを取られることなく、比較的高額な賃金を期待することができるが、その代わり、報酬額や働き方などの交渉は、企業と働き手が直接行うことになる。その点ではクラウドソーシングに比べ、ビヨンド副業のほうが、働き手の自主性や主体性が求められることになる。
ビヨンド副業で働くメリット
ビヨンド副業は、働く人にとってどんなメリットがあるのか。一般的には以下のような特徴が挙げられる。
(1)報酬額が高い
先述したように、地方企業は経験や知識が豊富な即戦力を求めている。スキルと結果を求められるからこそ、高額な報酬が期待できる。マッチングサービスなどを見てみると、月払いの場合は1件数万円~数十万円というケースが多いため、工夫次第では本業に遜色ない収入を得られる可能性がある。
(2)自分のスキルを広く還元できる
本業で培ったスキルを、社会へ広く還元できることは、仕事のやりがいやモチベーションアップにもつながる。さらに、ビヨンド副業で新しい人脈やスキルが得られたり、地方企業での経験を本業に役立てることができたりと、好循環を生み出すことも期待できる。
(3)副業の選択肢が広がる
ビヨンド副業はオンラインによるリモートワークが基本であるため、場所に縛られずに仕事を選ぶことができる。
(4)地方企業の核として働くことができる
地方企業が求める人材は、多くの場合、事業やプロジェクトの中核となる人材である。加えて働き手を求める地方企業は、地場産業の中小企業であることが多い。企業規模がそれほど大きくない分、副業者に委ねられる仕事の裁量が大きく、企業の核として働く経験が得られる。
(5)地方移住のイメージを持つことができる
ビヨンド副業は、オンラインで日々の仕事をしながら、時々地方へ赴くという2拠点生活が基本。そのため、すぐに地方移住をするのは難しくても、将来的に移住を考える人には、地方暮らしのイメージを持つことができ、良いシミュレーションになる。
このようにビヨンド副業には、働き手にとって大きなメリットがある。
経験豊富な中堅~ベテラン人材へのニーズが高い
それでは一体、ビヨンド副業ではどういった人材が求められるのか。現在、ビヨンド副業のマッチングサービスで募集要項を覗くと、以下のような仕事内容が多いようだ。
- 経営企画
- 新規事業創出のサポート
- 新商品開発、およびマーケティング
- デジタルマーケティングのWEB戦略、およびSNSプロモーション
- ECサイトの販売ツール構築、およびマーケティング
- WEBサイトのコンサルティング
ほかにもニッチな専門技術を活かした職種や、資金調達、経理・財務などもあり、求人情報はかなり広範囲にわたっている。つまり、誰でもビヨンド副業で能力を発揮できるチャンスがあるということだ。
だが、ここで注意しておきたいのが、地方企業が求める人物像だ。先述のとおり、ビヨンド副業の求人では、それなりの経験とスキル、結果を求められる。そのため、ビヨンド副業のメイン層となるのは、本業である程度経験を積んだ中堅からベテランまで、およそ30代~40代あたりだ。
こうした層を地方企業が雇用できるというのは、企業側にとっても大きなメリットである。一般に、人材紹介サービスを使って人を雇う場合、紹介手数料は理論年収の30%~35%が相場だ。ハイクラスな人材になればなるほど、採用に要する経費はますます増える。しかし、ビヨンド副業の仕組みを利用すれば、優秀な人材を月数万円程度から確保することができるのだ。
加えて、プロジェクト単位で必要な人材を確保することができるため、ピンポイントで経費を抑えられる。さらに、都内で働く優秀な人材のナレッジやスキルを吸収できるのも、地方の中小企業にとっては大きな魅力だ。こうした点を考慮すれば、今後、ますます多くの地方企業がビヨンド副業に乗り出してくることが予想される。
だが忘れてはならないのが、あくまでも「地方企業の仕事を体験させてもらう」のではなく、「自分の持っているナレッジやスキルを地方企業に還元しながら、両者がwin-winの関係となる」ということだ。
今後、ますます多くの企業が副業を奨励し、リモートワークを推進することが予想される現在。「自分の働き方を見直したい」「スキルをもっと活用したい」「収入をアップさせたい」「人脈を広げたい」と考えている人は、ぜひチャレンジしてはいかがだろうか。