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2021.04.22 NEW

いまさら聞けない「GDP」の読み解き方――アフターコロナの世界経済はどうなる?

いまさら聞けない「GDP」の読み解き方――アフターコロナの世界経済はどうなる?のイメージ

日本語で「国内総生産」を意味するGDPは、ビジネスパーソンなら押さえておきたい経済指標の一つだ。ほとんどの人が聞いたことがあるワードであるものの、「GDPを説明してください」と言われたときに説明できる人はどれくらいいるだろうか?

GDPをしっかり理解することで、国内の経済状況はもちろん、世界各国の経済状況の比較もできるようになる。この機会に、ぜひ押さえておこう。

米国と中国が世界全体GDPの約4割を占める

そもそもGDP(Gross Domestic Product)とは「国内総生産」のことで、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額。ちなみに、日本企業が海外支店などの国外で生み出した付加価値は、GDPに含まれない。

GDPには2種類あり、単純に価値の総額で算出した「名目GDP」と、名目GDPから物価変動の影響を取り除いて算出した「実質GDP」がある。名目GDPはその時点の経済規模を知るのに適していて、実質GDPは成長の度合いを時系列で比較するのに適している。

まずは、外務省経済局国際経済課が2月に公表した主要経済指標をもとに、世界各国の名目GDPを見てみよう。

2019年の世界全体の名目GDPは87兆7,346億ドルと推計され、国別では米国が世界全体の24.4%を占めた。次いで中国が16.3%で、日本が5.8%の順になっている(図1)。米国、中国が世界経済に多大な影響を及ぼしていることは周知の事実だが、この2国だけで約40%を占めている数字を見れば、より理解が深まるだろう。

図1:2019年 各国の名目GDPの割合
図1:2019年 各国の名目GDPの割合

出典:外務省経済局国際経済課「主要経済指標」(2021年)より編集部作成

「名目GDP」と「実質GDP」は何が違う!?

前述した通り、GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類がある。ここでは、それぞれの違いを理解するために、以下の例をもとに解説しよう。

以下は、それぞれの年に販売されたおにぎりの個数と市場価格で、それらをもとに名目GDPと実質GDPを計算してみる(図2)。

※ 本来GDPは「モノやサービスの付加価値の合計額」であるため、市場価格に含まれる中間投入額(原材料、光熱燃料、間接費など)を差し引く必要があるが、ここでは単純化のために市場価格そのものをGDPとして計算した。

図2:名目GDPと実質GDPの計算例
売れたおにぎりの個数 おにぎり1個の価格
2019年 10万個 100円
2020年 12万個 120円
2021年 12万個 150円

名目GDP…販売個数に市場価格を乗じて算出する

  • 2019年の名目GDP … 1,000万円(10万個×100円)
  • 2020年の名目GDP … 1,440万円(12万個×120円)
  • 2021年の名目GDP … 1,800万円(12万個×150円)

実質GDP…名目GDPから価格の変化による影響を取り除いて算出する(実質GDP算出の基準年:2019年)

  • 2019年の実質GDP … 1,000万円(10万個×100円)
  • 2020年の実質GDP … 1,200万円(12万個×100円)
  • 2021年の実質GDP … 1,200万円(12万個×100円)

そして、おにぎりの販売個数と市場価格をもとに計算した名目GDPと実質GDPは、以下グラフのような結果になる(図3)。

図3:名目GDPと実質GDPの数値
図3:名目GDPと実質GDPの数値

おにぎりの販売個数と市場価格をもとに名目GDPと実質GDPを試算すると、おにぎりの価格上昇(物価上昇)の影響を受けている名目GDPは、物価変動の影響を取り除いて算出した実質GDPよりもその規模が大きく見えてしまう。

特に注目してほしいのは2020年と2021年で、名目GDPで比較すると、おにぎりの価格が上昇した分、2021年は経済規模が拡大しているように見える。しかし、販売数量はどちらも12万個で変わらないため、物価変動の影響を取り除いて算出した実質GDPでは、経済成長がまったく見られないことになる。

このように、モノやサービスの価格変動の影響でGDPの数値が変化してしまうことを避けるため、経済の成長力を知る上では「実質GDP」の方が重視されている。

他にも、GDPに関する用語を以下で説明しているため、参考にしてみてほしい。

これから世界経済をけん引していく国はどこ?

IMF(国際通貨基金)は2021年4月に「世界経済見通し(WEO)」を発表し、2020年の世界の経済成長率(実質GDPの伸び率)をマイナス3.3%と推計、そして2021年をプラス6.0%と予測した(図4)。

国・地域別では、2020年の経済成長率は日本、米国、ユーロ圏、インドが軒並みマイナス成長となる中、中国だけがプラス2.3%で、主要国では唯一プラス成長を維持したようだ。

図4:各国の実質GDP成長率予測
世界全体 日本 米国 ユーロ圏 中国 インド
2020年(推計) -3.3% -4.8% -3.5% -6.6% 2.3% -8.0%
2021年(予測) 6.0% 3.3% 6.4% 4.4% 8.4% 12.5%
2022年(予測) 4.4% 2.5% 3.5% 3.8% 5.6% 6.9%
2020年(推計) 2021年(予測) 2022年(予測)
世界全体 -3.3% 6.0% 4.4%
日本 -4.8% 3.3% 2.5%
米国 -3.5% 6.4% 3.5%
ユーロ圏 -6.6% 4.4% 3.8%
中国 2.3% 8.4% 5.6%
インド -8.0% 12.5% 6.9%

出典:IMF(国際通貨基金)「世界経済見通し(WEO)」(2021年4月)より編集部作成
※ インドは各財政年度。

コロナ後の世界経済のけん引役は、コロナ禍でもプラス成長を維持した中国と、景気回復が見込まれる米国・ユーロ圏、そして2021年に10%以上のプラス成長率が見込まれているインドといった国々になりそうだ。

GDPを理解した上で、世界経済の見通しに触れると、普段のニュースや新聞の内容の理解が深まり、今までとは違った気付きを得ることができるだろう。GDPは、経済を予測する指標の一例だが、こうした経済用語を理解することで、今までとは違った世界が見えてくるかもしれない。

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