2025.05.12 NEW

2025年末の日経平均株価予想を38,000円に引き上げ 関税想定を見直し 野村證券ストラテジストが解説

2025年末の日経平均株価予想を38,000円に引き上げ 関税想定を見直し 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

関税ショック前からのEPS下振れ幅を10%と試算

野村證券では、2025年度のTOPIX(東証株価指数)のEPS(1株当たり利益)について、2025年3月時点、すなわち関税ショック前には、国内景気の回復や鉱工業生産の正常化、値上げ効果により前年度比7%増益と予想していました。そして、関税ショック後には、相互関税が10%、対日関税が24%、自動車関税が25%となる前提で、同6.8%減益と試算しました。

その後、中国以外の相互関税の上乗せ分が90日間猶予され、7月9日の期限以降も上乗せ関税を回避できる可能性への期待が高まりました。一方で、自動車や鉄鋼・アルミ関税は25%が継続するとの見方も根強くあります。これらを踏まえて、野村證券は、日本からの輸出にかかる実効税率を従来前提の24.4%から15%に引き下げました。さらに、日本企業の現地法人が第3国から輸入する際のコスト増加や、世界経済の減速による影響も考慮した結果、2025年度のTOPIX EPSについて前年度比3.1%減益に修正しました。関税ショック前との比較では、関税の直接的な影響で-3%、間接的な影響(マクロ影響)で-7%、合計10%の押し下げがあると試算しています。

EPSの下振れ幅が10%という試算は、各社が示した2025年度ガイダンスにおける関税影響とも整合的です。ただし、影響を明確に示す企業が限られることや、前提条件が企業ごとに異なる点には注意が必要です。なお、相互関税が10%、自動車関税が25%、価格転嫁が約5割、米国経済成長率の下振れが1%強といったケースが比較的多く見られます。

次回4-6月期決算発表時の失望リスクは警戒すべき要因

日米の株価指数は「ベアマーケット」寸前から脱「調整局面」まで回復しましたが、さらなる株価上昇のシナリオとしては、関税の撤廃や減税の進展、FRB(米連邦準備理事会)による利下げの実施、そして米国の景気や企業業績が無傷であることへの期待が挙げられます。ただし、これらが同時に実現する可能性は低いでしょう。加えて、4月上旬に安値で売りを仕掛けた先物勢が高値で買いを仕掛ける展開も考えられますが、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)とバリュエーション(投資尺度)を踏まえれば、先物勢主導の相場は長続きしにくいと予想されます。

精度が低いものの下方修正含みのEPSベースで見ても、PER(株価収益率)の割安感が薄れています。そのため、ファンダメンタルズやバリュエーションを重視する投資家にとっては、利益確定が進みやすい状況と言えます。

関税や世界経済・米国経済の減速により、EPS予想の下振れは避けられない状況ですが、アナリスト予想の下方修正はまだ始まったばかりです。最大のリスクは、「国難」と称しながらも補正予算を組まず、「too little, too late(少なすぎる、遅すぎる)」といえるマクロ政策に終始する可能性です。その場合、2011年春の東日本大震災から2012年秋にかけて見られたような株安の傾向が意識されるでしょう。

足元では、自社株買いや増配など株主還元を強化する企業が増え、財務基盤の強さが株価を下支えする要因となっています。また、株主還元の効果もあり、関税の影響を開示しない企業も市場から評価される一方で、関税影響を正直に開示した企業は評価されにくい状況にあります。

一方、4-6月期の決算発表では、本決算時よりも自社株買いの発表が少ない傾向があります。その中で、企業が関税影響を織り込んだ慎重な見通しを示すことが注目されるでしょう。関税影響を正直に開示した企業は市場から評価される一方、開示していない企業の評価が剥落する可能性があります。

2025年末の日経平均株価予想を38,000円に引き上げ

EPSを軸に、景気拡大期の中央値であるPER15倍を目安にしたTOPIX水準が妥当と考えています。この場合、2025・2026年度のEPS×15倍の2,700前後の水準を意識しつつ、景気や業績の正常化が本格化すれば、2027年度のEPS×15倍の2,900超、ひいては3,000に到達する可能性が高まるでしょう。

野村證券では、5月8日付で2025年末のTOPIX予想は2,800、日経平均株価予想は38,000円とし、従来予想からのEPSの見直し分(+4%)を反映して引き上げました。また、2026年末のTOPIX予想は3,000、日経平均株価予想は40,500円としています。今後もマクロ前提の変化に応じて予想を修正する可能性があります。

野村證券では、現時点で日米の景気後退をベースシナリオとしてはいません。ただし、景気後退リスクが意識されやすい状況を踏まえ、レンジの下限は下振れシナリオを想定したものとしています。一方で、上振れシナリオとしては、関税の適用除外が大幅に広がることや、大規模な減税の実施が挙げられます。もし2025年3月以前の景気や企業業績の見通しに近づくことがあれば、2025年内にTOPIXが3,000、日経平均株価が40,500円に到達する可能性があるため、これをレンジ上限としています。

TOPIX・日経平均株価見通し概要(5月8日付)
シナリオ 株価指数 2025年6月 2025年12月 2026年6月 2026年12月 2027年6月
メインシナリオ:25年度減益も日米景気後退は回避、相互関税10%(自動車等は25%)、26年度以降にEPS拡大 TOPIX 2,650 2,800 2,900 3,000 3,050
日経平均株価 36,500 38,000 39,250 40,500 41,000
上振れ:関税の適用除外大幅拡大や大規模減税実施で3月以前の景気・業績見通しに近づく TOPIX 2,850 3,000 3,100 3,200 3,300
日経平均株価 39,000 40,500 41,500 42,250 43,750
下振れ:米国景気後退局面入り、政策対応が後手に回る TOPIX 2,200 2,200 2,300 2,300 2,400
日経平均株価 30,000 30,000 31,500 31,500 33,000
従来のメインシナリオ(4/4付け「日本株見通し」、4/18付「日本株投資戦略(2025年4月)」) TOPIX 2,500 2,700 2,800 2,900 3,000
日経平均株価 34,000 36,000 37,500 39,000 40,000

(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株見通し:目先は小休止、年末高へ – 25年末のTOPIX予想を2,800に小幅引き上げ(2025年5月8日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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