2025.05.16 NEW

日本企業決算、2020年以来の大幅下振れ 関税交渉への期待と下方修正懸念が交錯 野村證券ストラテジストが解説

日本企業決算、2020年以来の大幅下振れ 関税交渉への期待と下方修正懸念が交錯 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

決算が概ね出揃うが、2020年以来の「大幅下振れ」スタート

5月14日時点における2・3月本決算企業の集計値では、金融・公益を除く942社が公表しており、時価総額の96%強が出揃いました。2024年度の実績は前年度比8.7%の経常増益となり、2025年度の会社計画は同5.3%の経常減益となりました。期初計画が減益である点に加え、2025年度の会社計画における経常利益が2025年3月末時点のQUICKコンセンサスを11.7%下回るなど、2020年以来の「大幅下振れ」スタートとなっています。

業種別の2025年度の会社予想では、内需関連は増益、製造業では減益予想が多い状況です。2025年度の経常利益に関する会社計画と2025年3月末時点でのQUICKコンセンサスの乖離率を見ると、情報・通信、銀行業、建設業などの分野は相対的に堅調であるのに対して、鉄鋼、石油・石炭製品、鉱業、輸送用機器、海運業、パルプ・紙などは大幅なマイナスとなっています。また、業種別に見た2025年度の経常利益に関するQUICKコンセンサス予想の修正状況では、陸運や電気・ガスなどを除き全体的に下方修正の傾向が続いており、特に石油・石炭製品、金属製品、輸送用機器、繊維製品などでは大幅な下方修正となっています。

決算を挟んだ株価反応では、2025年度の経常利益に関する会社計画と事前のQUICKコンセンサス予想を比較した際の強弱によって、相対リターンにプラスマイナス2%ポイントの格差が生じています。また、決算から3~5営業日が経過した後には、このような決算情報に対する強弱反応が反転する傾向も見られます。

また、自社株買いを発表した企業は、1~2営業日後にかけて2~3%のアウトパフォーム傾向となっていますが、決算発表後半にかけてアウトパフォームの度合いがやや低下しているようにも見受けられます。その要因の一つとして、相対株価の分母となるTOPIX(東証株価指数)が5月上旬に堅調であった点が挙げられます。ただし、絶対リターンの観点から見ても、決算発表後半ではアナウンス効果がやや低下傾向にあります。自社株買いの発表件数が増加し、注目度が高まったことによる希少価値の低下なども影響していると言えそうです。

自社株買いの発表は小休止の局面へ

4~5月の自社株買いの発表増加は、野村の想定通りではありましたが、慎重な見方が多かった市場参加者の期待を良い意味で裏切る結果となりました。特に、取得枠総額で見ると、4月は前年同月比3倍の3.6兆円に達しました。一方、5月に入ると、1日から14日にかけての発表額は前年同期比27%減の3.5兆円となり、増加の勢いは一服している状況です。なお、特定の大手企業が発表するか否かに左右されやすい点には注意が必要です。

季節性の観点から見ると、5月後半から7月初旬にかけては自社株買い発表が少ない傾向があります。その後の7月後半から8月前半にかけては、主に4-6月期決算が発表されるタイミングですが、第1四半期決算の企業が多いため、決算期のわりには自社株買い発表が少ない状況です。ただし、取得枠の執行、すなわち主体別売買動向における事業法人の買い越し基調は今後も継続する見込みです。アナウンス効果は一服するものの、一部の市場参加者が期待する実需効果は今後も持続すると考えられます。

関税交渉への期待と下方修正懸念が交錯

関税や貿易を巡るサプライズが断続的に発生しています。日米関税交渉に対する期待も高まっており、改めてスケジュールを確認します。5月20日にはG7財務大臣・中央銀行総裁会議が開催される予定です。加藤勝信財務大臣が出席予定であり、その場で日米財務大臣会談が調整中と報じられています。また、赤沢亮正経済財政・再生大臣は5月22日に訪米予定で、関税を巡る第3回閣僚会合を調整中です。

決算発表の一巡後に、アナリストによる下方修正が増加する見込みであるほか、自社株買いの発表が一服することが見込まれます。上記を踏まえて、野村證券では当面の日本株指数は一進一退と予想しています。

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株ウィークリー – 決算後は関税交渉・政策期待vs下方修正懸念(2025年5月15日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。

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