2025.10.06 NEW
高市新総裁誕生で日経平均株価一時48,000円台突破 「サナエノミクス相場」は続くか 野村證券・池田雄之輔
撮影/タナカヨシトモ(人物)
自民党は10月4日投開票の総裁選で、高市早苗前経済安全保障相を第29代総裁に選出しました。日経平均株価は大幅に上昇し、上げ幅は2,100円を超え、一時48,000円台を突破する場面も見られました。一方、東京外国為替市場では円相場が下落し、1ドル=150円台での推移となっています(10月6日15:30時点)。高市氏の経済政策「サナエノミクス」によって日本株の上昇相場は続くのでしょうか。野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔が解説します。
総裁選サプライズ 高市氏の政策を強く反映した株式市場の反応
自民党総裁選(10月4日)は高市早苗氏が勝利し、「小泉進次郎農相優勢」と見ていた市場にはサプライズとなりました。週明けの日本市場では、「積極財政、積極緩和」の「サナエノミクス」を念頭に、初期反応としては円金利スティープ化(利上げ期待は低下、長期金利は上昇)、為替は円安、株は上昇、という展開になっています。とくに株価は、最高値を更新したことで勢いがついている状況です。
セクター別の反応を見ると、高市氏の政策効果への期待が強く表れているように見えます。具体的には、機械、電機・精密、自動車といった円安恩恵セクター、不動産やグロース株全般という低金利恩恵セクターが上昇率のトップに並んでいます。電力株も強く、これは高市氏が原発再稼働の推進派であることを材料視しているとみられます。一方、「日本銀行の利上げは遠のく」という見方から銀行株は逆行安になっています。
高市新総裁は財政については「責任ある積極財政」を打ち出してきました。消費税率についても部分的な引き下げを訴えていた時期もあります。また金融政策についても「方向性を決める責任は政府にある」と、関与を強めたい意向を示しました。当面、財政・金融政策についての高市氏の発言に、市場は一喜一憂する可能性があります。
高市氏の消費税率引き下げ論や日銀批判は封印される?
ただし、高市氏の政策姿勢が安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」のような息の長いテーマになるかというと、疑問が残ります。今回、総裁選のキャスティングボートを握ったとみられる麻生太郎最高顧問は、もとより消費税引き下げに反対姿勢を明確にしていました。高市氏への支持にあたっても、政策主張の修正を条件付きとした可能性が高いと思います。実際、総裁選を通じて、高市氏の消費税率引き下げ論は封印され、昨年のような過激な日銀批判も鳴りを潜めています。
自民党幹事長候補には、麻生派の鈴木俊一総務会長が取り沙汰されていることも重要です。幹事長ポストは、少数与党下では野党との連携交渉を担うことになるため、政策決定に大きな影響を与える可能性が高いと考えられます。鈴木氏は父の善幸氏と同じく、宏池会の系譜にあり、岸田文雄政権では財務大臣を務めました。この先の連立交渉にあたっては、「麻生-鈴木」の元財務大臣コンビが、高市氏の積極財政スタンスに歯止めをかけることがあり得ると思います。
「サナエノミクス」とアベノミクスは異なる
金融政策については、そもそも「アベノミクス再来」には非現実的な面があります。以下の3点が、第2次安倍政権誕生時と大きく異なります。すなわち、
(1)行き過ぎた円安(2025年)vs行き過ぎた円高(2012年)
(2)国民が求めるのは物価高対策(2025年)vsデフレ克服(2012年)
(3)日銀は植田和男総裁が2028年4月まで任期が続く(現在)vs次の総裁に交代するタイミング(2013年4月)
このような経済環境の違いです。
総裁選の「高市シナリオ」を予想できた投資家は報われる結果となりました。一方、ここから先も一直線で「サナエノミクス=上昇相場」となるかというと、慎重に見極める必要があるということです。
ただし、野村證券では中長期的な日本株のポテンシャルには強気の見方をしていることに変わりがありません。高成長実現のシナリオでは2035年に日経平均が83,000円に達すると試算しています。

- 野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔 - 1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。
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