2025.10.07 NEW

高市氏の過去の発言・寄稿に基づくサナエノミクス関連銘柄 野村證券ストラテジストが解説

高市氏の過去の発言・寄稿に基づくサナエノミクス関連銘柄 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

まずは「G>R」の持続性と政策実現性、次いで経済安保・エネルギー分野の各論に注目

高市早苗氏の過去の発言、著書「国力研究」(2024年)、選挙中に公開された生成AIツール「AIサナエ」を参考に、同氏に即した注目投資分野と関連銘柄を検討しました。経済安全保障からエネルギーまで多岐にわたり、サイバーセキュリティー、量子、防衛、地下シェルター、宇宙、原子力、核融合、ペロブスカイト太陽電池などが浮かび上がります。

高市氏のマクロ観を踏まえると、「名目成長率>名目金利(G>R)」への期待の高まりは、基本的に株式にポジティブです。「G>R」の持続性が焦点になります。初動の株高後は、人事や連立交渉を通じた政策の実現可能性が吟味される見通しです。

自民党総裁選ではありませんが、2005年9月総選挙後の郵政改革、2012年12月総選挙後のアベノミクスのように、レジーム転換を伴う政策実行期待が高まれば、息の長い株高となり、海外投資家の買いも継続しやすいと考えます。一方、政策面で独自性が薄れたり、金利急騰を招く場合は、株高の勢いが早期に失速する可能性があります。2001年4月の小泉純一郎氏のサプライズ勝利後は、1週間でTOPIX(東証株価指数)が急騰しましたが、その後の人事が評価されず、上げ幅は帳消しとなりました。

高市氏の株式・投資信託保有は確認できず

過去の閣僚在任時(2023年10月時点)の資産公開によると、高市氏の金融資産残高は閣僚中で下位に位置し、株式・投資信託を保有していませんでした。過去の発言ではコーポレートガバナンス(企業統治)やNISA(少額投資非課税制度)、資産所得倍増に関連する言及は多くありませんが、今後組閣を行う場合に公表される資産公開では、リスク資産の保有を開始しているか注目されます。

高市氏の過去の発言・寄稿に基づく注目産業分野

10月1日のハドソン研究所への寄稿において、高市氏は「成長が期待される分野」として、AI・半導体、ペロブスカイト、デジタル、量子、核融合、マテリアル、バイオ、航空・宇宙、造船、創薬・先端医療、防災関連産業、防衛産業などを挙げました。また、2021年の総裁選挙立候補時に述べた「日本が強みを持つ分野」は概ね重なり、ロボット、マテリアル、半導体、量子(基礎理論・基盤技術)、電磁波、電子顕微鏡、核磁気共鳴装置、アニメ・ゲームなどが挙げられました。

高市氏は総務大臣在任期間も長く(2014~2017年)、統計のほか、郵便・通信に関する知見も有します。郵便局については、全国ネットワークを維持しつつ効率化を進める考えのようです。通信については、過度な値下げ圧力に慎重で、インフラ投資などの費用に見合う価格転嫁を容認する姿勢のようです。このほか、量子コンピューター、コンテンツの海外展開、自動車ではガソリン車の生き残りなどに焦点を当てた発言が確認できます。

経済安全保障分野は多岐にわたる

高市氏が掲げる経済安全保障分野は多岐にわたり、医薬・創薬、半導体、サイバーセキュリティー、AI、クラウド、防衛、地下シェルター、宇宙などが該当します。高市氏は自民党サイバーセキュリティー対策本部の初代本部長を務めるなど、サイバーセキュリティー強化を長年訴えており、2025年5月可決の能動的サイバー防御法の成立にも尽力しました。民間部門も、セキュリティーソフトのこまめな更新やサイバー訓練が重要と主張するほか、追加策としてスパイ防止法の必要性にも言及しています。宇宙政策は著書『国力研究』でも担当のパートを自身で執筆するなど思い入れが強く、自身の動画サイトでも準天頂衛星やスペースデブリ(宇宙ごみ)に関する投稿を行い、スタートアップ企業への支援姿勢が目立ちます。

AIについては、総務大臣時代の2016年から言及するなど古くからの接点があり、2025年の総裁選でも「AIサナエ(教えて!? AIサナエさん)」を公開しました。クラウドについては国産に限定せず、2021年にAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)との政府契約を容認した一方、半導体では国産のラピダスを支援する姿勢に映ります。

防衛分野については、最新鋭装備の取得などを背景に、2027年度の防衛費のGDP(国内総生産)比2%という政府目標を上振れることも容認する姿勢に見えます。著書「国力研究」では、直ちに防衛費の増額が必要と記述しています。地下シェルターについては、主要駅や大規模建築物の建設時に設置を義務付ける「地下シェルター設置法」を掲げています。東京都は、地下鉄にある防災倉庫をシェルターに改装する構想を打ち出しています。

エネルギー分野では短期的には原発再稼働が進むか

高市氏はエネルギー分野で、短期的には原子力発電所の再稼働を進めつつ、中長期的には次世代小型原子炉(SMR:小型モジュール炉)や核融合の実現に向けた研究開発を加速し、諸外国に対する技術的優位性の確保を掲げます。核融合とSMRに関する動画や投稿も多い印象です。

また、高市氏は外国製の太陽光パネルに強く反対する一方、日本発のペロブスカイト太陽電池の開発・普及を推進する立場です。2025年の総裁選では、国産資源開発と国際資源共同開発も掲げました。これはレアアース(希土類)を念頭に置いた脱中国依存の狙いとみられます。足元では、南鳥島近辺での試掘事業が現実的と考えられます。

金融関連分野では利上げ期待が後退する可能性

高市氏は金融緩和論者であり、利上げ期待が後退する可能性がありますが、財政拡張期待を背景にイールドカーブ(利回り曲線)は高止まりしやすく、中期的に銀行株にポジティブな環境は崩れにくいでしょう。

高市氏の対日投資に関する厳格審査の構想は留意点で、アクティビスト(物言う株主)や対日M&A(企業の合併・買収)への風当たりが強まる可能性もあります。2024年9月には、大手コンビニへのカナダ企業による買収提案に対して否定的なコメントを述べていました。また、市場に対して課税強化という印象を与える可能性もあります。2024年9月には、給与増につながるような内部留保課税を提案したことがあり、2021年9月には、インフレ目標達成後に年間50万円以上の金融所得に課す税率を20%から30%へ引き上げる案を掲げていました。

高市氏の過去の発言・寄稿に基づく注目産業分野と代表銘柄
注目産業分野 代表銘柄
銘柄コード 銘柄名
サイバーセキュリティー 6501 日立製作所
6701 日本電気
4704 トレンドマイクロ
量子 6702 富士通
9432 NTT
防衛 7011 三菱重工業
7012 川崎重工業
7013 IHI
7721 東京計器
地下シェルター 7972 イトーキ
7246 プレス工業
宇宙 7011 三菱重工業
9412 スカパーJSATホールディングス
5595 QPS研究所
290A Synspective
原子力発電 7011 三菱重工業
6501 日立製作所
9503 関西電力
核融合 6965 浜松ホトニクス
6971 京セラ
5803 フジクラ
ペロブスカイト太陽電池 4204 積水化学工業
4118 カネカ

(注)QPS研究所、Synspectiveは継続企業の前提に関する重要事象等の記載あり。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株メモ:サナエノミクス関連銘柄モニター – 過去の発言、書籍やAIサナエを踏まえて(2025年10月6日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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