2024.07.26 NEW
野村證券投資情報部が検証 株式市場の「夏枯れ」は本当にあるのか?
個人投資家の方の中には「夏枯れ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。夏場は株価が下落しやすいという株式市場のアノマリー(規則性)の一つです。株式市場のチャートの分析を担当する野村證券投資情報部のストラテジスト・岩本竜太郎が、実際の株価指数のデータを用いて夏枯れについて検証しました。
「夏枯れ」はあるのか?
- 株式投資をしているとよく「夏枯れ」という言葉を聞きますが、本当なのでしょうか。
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岩本竜太郎(以下、同)
長期の株価指数のデータを見ると、株式市場に夏枯れの傾向があるというのは正しいようです。下の図は、米国のダウ平均株価と日経平均株価の第二次世界大戦後の月ごとの平均騰落率を示したものです。ダウ平均株価は8~9月、日経平均株価は9月に下落する傾向が明確に見て取れます。日米とも11月以降に株価が本格的に回復しています。
(注1) 2024年分は6月までの値を算出対象としている。
(注2) 日経平均株価は戦後の東京証券取引所営業再開日(1949年5月16日)以降の株価を対象に算出されている。
(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社、日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成
- これほどはっきりとデータが出ているということは、何か明確な要因があるのではないでしょうか。
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一つの仮説ではありますが、特に米国では夏場、機関投資家でも長期休暇を取る人が多いためではないでしょうか。株式市場全体の参加者が減って取引が減少し、相場があまり動かなくなります。流動性が低下して価格変動リスクが上昇しやすく、多少売られただけで株価が大きく下落してしまう傾向があるのかもしれません。
日経平均株価も夏から秋にかけて弱含んでいるのは、夏休みが影響しているのかもしれませんね。
- ダウ平均株価は夏に下げ、秋から冬にかけて一気にパフォーマンスが改善しています。なぜでしょうか。
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米国は12月期決算の企業が多いため、通期業績予想の確度がより高くなる秋から冬にかけ、業績への期待から買いが先行しやすくなる可能性はあると考えています。米国で冬場に株価が上がりやすいというアノマリーは「ウインターラリー」と呼ばれます。
「セル・イン・メイ」(株は5月に売り抜けろ)の格言もありますが、株価の動きには一定の季節性があるといえそうです。セル・イン・メイに続く言葉に「ただし9月にはマーケットに戻ってこい」とあるそうです。夏枯れの話とも符合しているように思えますね。
日本と米国は同じなのか?
- 日本も9月には株価が下落する傾向があるようですが、同じ傾向があるといえるのでしょうか。
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下の表は、日経平均株価の年代別月間平均騰落率を示したものです。オレンジがプラス、ブルーがマイナスです。
(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成
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年代別に詳細に見ても、長期で見ても8月から9月は下落率が大きくなり、11月以降に上昇する傾向はあるといえそうです。
なお、2023年は月間騰落率が7月から10月にかけてマイナスとなりましたが、11月はプラス8.5%と大幅上昇となりました。米国長期金利がピークアウトし、米国株が上昇に転じたことが主因とみられますが、結果的には夏枯れアノマリー通りの動きとなりました。
- 個人投資家は「夏枯れ」にどういった心理で臨むべきだと思いますか。
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夏枯れが今年もあるとすれば、8月から9月にかけ日米ともに株価が下落する局面が訪れるかもしれません。しかし、アノマリーに即していえば、10月以降に株価が回復する可能性は高いといえます。
一時的に株価は下落しても「中長期で株価が上昇していく」というトレンド自体は変わらないと見ています。さらに、下落局面は一時的に株価が安くなる「押し目」ともいえます。つまり、夏枯れは投資の大きなチャンスともいえるのではないでしょうか。
- 野村證券投資情報部 ストラテジスト 岩本竜太郎
- 2005年野村證券入社、北九州支店を経て、2008年より投資情報部。以降、テクニカルアナリストとして国内外のチャート分析を手掛け、お客様向けの冊子「週刊チャート展望」などの制作を担当している。日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。
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