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2024.08.29 NEW

エヌビディア決算は悪くない 株価下落の理由を野村證券ストラテジストが解説

エヌビディア決算は悪くない 株価下落の理由を野村證券ストラテジストが解説のイメージ

写真/竹井俊晴

日本時間の8月29日未明、米半導体大手エヌビディアの2024年5-7月期決算が発表されました。AIの普及に伴う半導体需要をけん引する存在であるエヌビディアの決算は、日米の株式市場への影響が大きく注目されています。今回の決算は市場予想平均を上回る内容だったにもかかわらず、時間外取引で同社株は下落しています。どのように決算発表をとらえればいいか、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの村山誠が解説します。

村山誠(以下同)
エヌビディアの2024年5-7月期決算は、市場予想平均を上回る大幅な増収増益でした。売上高はファクトセット集計による市場予想平均を上回り、一株当たり利益(EPS)はやはり市場予想平均を上回りました。会社は、2024年8-10月期のガイダンス(会社が発表する業績予想)としては売上高のみを発表していますが、これも市場予想平均を上回りました。

好決算なのに株価が下がった理由

エヌビディアの決算は、一言で言うと「好決算」でした。しかしながら、決算発表を受けて、エヌビディア株価は時間外取引で終値比6.89%安の116.95ドルで推移しています(ニューヨーク時間19時59分時点)。一方、日本株についての影響は限定的であり、日経平均株価は小幅安で推移、半導体関連株は朝方から下げ幅を縮める動きとなっています(日本時間14:00時点)。

そもそも、エヌビディアという一社の決算がここまで注目され、日米の株式市場全体に影響を及ぼすのは、今の株式市場を大きく左右する要因がAI(人工知能)であり、AIの普及に欠かせないデータセンターで用いられる半導体で圧倒的な市場シェアを有しているのがエヌビディアだからです。エヌビディアと直接取引がない企業、セクターであっても、エヌビディアの業績が示唆するAI普及動向が、それら企業の業績へのインプリケーションになると考えられるからといえます。

では、決算発表を受けて株価が下落した理由は何か。「投資家の期待には届かず失望された」「AIバブルだったのでは」という声も一部上がっていますが、私はそれよりも、単純に決算発表という当面の重要イベントを通過したことで、利益確定売りが出たとみています。7月に株価が下落した後、最高値とはいかないまでも回復しているエヌビディア株を、いったん利益確定させたという投資家も相応にいたのでしょう。このような売りが一巡すれば、企業業績の拡大傾向を織り込むようになり、日米の株価へのネガティブな影響は限定的と見ています。

決算の売上高の内訳を見ますと、データセンター向けの売上高が前年同期比2.5倍の262.7億ドルとなり、エヌビディアの業容拡大をけん引しています。世の中でAIへの投資が進んでいることが見て取れます。

現在、株式市場ではAIが一つのキーワードとなっていますが、関連銘柄の株価の急上昇や下落を目の当たりにして、AIバブルではないか、AIバブルは崩壊するのではないか、という懸念はよく聞かれます。

米国株式市場は2000年代初頭に、インターネットの普及に伴い、いわゆるITバブルとその崩壊を経験しました。AIについても、同じような状況を繰り返す可能性はあります。AI関連銘柄の中にはバブルのような状況となり、そのバブルが崩壊する過程で退場となる企業もあるかもしれません。

ITバブルは崩壊したものの、その後、インターネットの普及が進み、様々なサービスが世の中に普及し、今ではインターネットが無い世の中など考えられないような状況となりました。

ITバブルが崩壊した後もアマゾン・ドットコムやシスコシステムズなどは生き残り、今ではダウ指数採用銘柄です。本物は生き残ります。銘柄をよく見極めることが重要と考えます。

今後、テクノロジー株への影響が大きいイベント

今後、米国テクノロジーセクターを中心とした株式市場を見通すうえでは、米国の政策金利の動向を注視する必要があります。株価は将来の利益を織り込んで評価されますが、テクノロジー企業の株価は、他の業種と比べ、比較的遠い将来の利益を織り込んでいる場合が多く、他のセクターと比べ、金利感応度が高い傾向にあります。また足元では、市場参加者は9月のFOMC以降、米国の政策金利が引き下げられていくことを前提にしていると推察されます。

まず政策金利の動向を占ううえで重要な指標は、8月30日に発表される7月PCEデフレーター(個人消費支出物価指数)です。米商務省が月末に公表する、米国の家計が消費した財やサービスを集計したインフレ指標です。なかでも、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターは、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として重視することから、特に注目されています。

FRBのパウエル議長は、8月23日、ジャクソンホール会議において、9月17-18日のFOMCでの利下げ開始を示唆しました。ただし、実際に利下げが開始されるか、また、どのくらいの幅の利下げとなるかは、「データ次第」と発言していることもあり、コアPCEデフレーターの指標は特に重要な指標となりそうです。

9月FOMCは、今後の政策金利の見通しである、いわゆるドットチャートが公表される会合です。利下げ幅に加え、今後の利下げペースについても注視したいところです。

また、9月9日には、アップルがイベントを開催する予定です。イベントの内容について会社は公表していませんが、アップルは例年、9月中旬にiPhoneの新機種を発表しており、iPhone16が発表になると見られます。今回のイベントで最も注目されるのはAI機能、Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)についてです。アップル製品は多くの消費者が使用していることから、AI機能がどのように盛り込まれ、消費者にどれくらい受け入れられるかは、今後のAIの普及という点でも注目されます。

*記事の中で個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

野村證券株式会社投資情報部 シニア・ストラテジスト
村山 誠
1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。
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