2024.12.06 update

2024.10.17 NEW

半導体に詳しいファンドマネージャーが「半導体関連市場の成長はまだ続く」と語る根拠

半導体に詳しいファンドマネージャーが「半導体関連市場の成長はまだ続く」と語る根拠のイメージ

写真/タナカヨシトモ

米エヌビディア、米クアルコム、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー (TSMC)といった大手半導体企業に代表される半導体関連市場は、ここ数年で大きく成長しています。一方、2024年後半には、半導体関連銘柄を含めて株価が大きく調整するような場面も出てきており、半導体関連企業の株価についても様々な見方があるようです。今後の半導体関連市場はどうなるのでしょうか。

野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)の運用を担当する、野村アセットマネジメントのシニア・ポートフォリオマネージャーの加藤明が、半導体関連市場の仕組みや中長期視点での成長の可能性について解説します。

半導体市場は長期にわたって好調を維持

これまで半導体関連市場は大きく成長してきましたが、「今から投資するのは遅い」と思っている投資家もいるかもしれません。半導体関連市場の需要は今後も伸びていくのでしょうか。

はい。半導体関連市場は、生成AIへの投資がけん引して2020年以降急激な成長を見せたと思われがちですが、実はもっと以前から成長の歴史があります。半導体が発明されてから半世紀以上、常にGDPと比較して2-3倍のペースで成長してきた市場です。半導体をテーマとするファンドも、総じて長期にわたって好調を維持しています。

他の多くのテーマ株は、一度需要のサイクルが一巡すると次のテーマへと需要が移っていくのが普通です。ところが半導体は、需要のテーマが変化してもそれまでの需要の上に新しい需要が積み上がる構造なのです。そのため、テーマ株としては異例といえるほど成長が長続きしているのだと考えられます。

半導体市場を1990年代にけん引したのは、パソコンやインターネットの普及でした。その後、2000年代には、テーマがスマートフォンやクラウドへと移り変わっていますが、パソコンの需要がなくなったわけではありません。そしてよく知られているように、2020年以降は生成AIなどの人工知能の進化が半導体市場の成長を支えています。しかし、スマートフォンやクラウドも、今も需要が伸びています。

半導体市場規模の推移

(出所)アプライド・マテリアルズ、世界半導体市場統計(WSTS)および米国半導体工業会(SIA)(1990年~2019年)、ASML(2020年以降)のデータに基づき野村アセットマネジメント作成

では、今後半導体市場のテーマはどのようなものに移っていくのでしょうか。

現在は、生成AIの開発に必要なAIサーバ、データセンターに多くの半導体が使われて、市場が拡大しています。生成AIの活用事例は、足元では先端IT企業での生産性向上を目的とした用途が中心です。今後は自動車や機械セクターなど、さまざまな企業でトライアル段階から、製品に搭載していく実用段階へと移っていくでしょう。

その一つとして大きいのが、インターネットにつながるIoT(Internet of Things)です。IoT機器が大量に情報を収集し、その情報を使ってさらに高度なAIモデルが開発され、実際に使われるようになると想像しています。

例えば自動運転の自動車向け、ファクトリーオートメーションの産業機械向けなど、様々な産業へと波及していきます。自動運転は、車体のいろいろなところにセンサーをつけてまわりの情報をインプットし、運転にどうつなげるかを計算します。センサーの数だけでも膨大に増えることが想像できるでしょう。処理するデータ量は莫大に増え、さらに多くのサーバ、データセンターが必要になります。

さらにはスマートフォンなど個々のデバイスで動く「オンデバイスAI」も普及するでしょう。2024年9月に米アップルが発表したiPhone16に、生成AIを使った新機能が搭載されていることが話題ですが、こうした身近な持ち物でAIを使うようになると用途は一気に広がります。

半世紀以上にわたる成長により現在半導体市場は約5,000億米ドルとされていますが、その成長スピードは加速しており、2030年には1兆米ドルから1.3兆米ドルに達するという試算もあります。

IoTやAIの次に何が来るのかを予想するのは難しいですが、今後どのようなテーマが来たとしても既存のテーマがしぼむことなく、構造的に成長が続くと思われる点が、半導体関連企業の強さです。

半導体業界の5つの分類 日本が強いのは

半導体関連企業の分類を教えてください。今強い分野と今後伸びそうな分野はどれでしょうか。

半導体業界は5つに分類することができます。

① ロジック半導体

今市場で盛り上がっているのはロジック半導体の企業です。米エヌビディアや米ブロードコム、米クアルコムが代表格で、一部を除き自前の製造設備を持たずに半導体の設計、ソフトウェアの開発に特化しています。対象とするのはデータセンターに使われるサーバ向けの半導体、PC、スマートフォン向けの半導体の設計です。特に、エヌビディアは生成AIに使われる「GPU」と呼ばれる高性能な半導体の設計に強みを持っています。また、生成AIの開発で重要な役割を果たすのが、AIサーバ同士を高速でつなぐ通信チップです。米ブロードコムがこの分野で強みを持っています。AIサーバの高度化に伴い、2023年に1つのデータセンターに使われる通信チップが1万個だったとすると、2027年には100万個になるとも言われています。エヌビディアのGPU以上に成長する分野ではないかと見ています。

② パワー・アナログ半導体

アナログ半導体とは、音、光、温度、速度などの情報をセンサーでアナログ信号として読み取り、デジタル信号へ変換する際に使われる半導体です。パワー半導体は大きな電流、電圧がかかる電力制御に使われ、メインは産業機械や自動車向けです。これらの分野の代表的企業は米テキサス・インスツルメンツです。日本企業ではルネサス エレクトロニクスが挙げられます。

③ 半導体メモリ

データの記憶を行う装置です。過去何十年に亘って価格変動が大きく、過酷な競争にさらされた結果、DRAMというメモリに関してはトップ3社が大部分のシェアを占める市場になりました。韓国のサムスン電子、韓国のSKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーです。その結果価格が安定し、収益を上げられるようになっています。ロジック半導体の性能を上げるためには超高速化したDRAMである「HBM」という高度なメモリが必要で、需要が高まっています。HBMは価格が高く、今後、成長が見込める分野です。

④ ファウンドリー

自らは設計をせず、他社から受託して半導体の製造を専門とするメーカーです。米国のエヌビディアやブロードコムといった企業は生産設備を持たないファブレス企業であり、彼らの発注先です。微細化が進んだことで、最先端の半導体製造には高度な技術と生産設備が求められます。それが年を追うごとに高額になっていることなどを背景に、数兆円単位の巨額設備投資が必要になっています。そのためファウンドリー市場は寡占化が進み、現在ではTSMCが圧倒的なシェアを持っています。

⑤ 半導体製造装置

半導体製造の過程で使われる様々な装置をつくるメーカーです。この分野は日本企業が強みを持っており、東京エレクトロン、ディスコなどが代表格です。その他、米アプライド・マテリアルズ、オランダのASMLホールディングスなども代表的なメーカーです。米国、欧州、日本では、地政学リスクを踏まえて半導体の自給自足体制をつくるべく政府から巨額の補助金が支給されている状況です。そのため、高水準の設備投資が数年間にわたり維持されると見ています。

半導体関連銘柄で強いのはエヌビディアだけではない

5つの分野の役割と需要を細かく見ると、半導体関連企業は、話題のロジック半導体だけが突き抜けて成長するわけではなさそうですね。

はい。5つの分野は、波はありつつもそれぞれが成長する余地があると見ています。例えば2022年にロジック半導体の在庫調整があり落ち込みが見られましたが、そのときにはアナログ・パワー半導体の市場が伸びていました。どこか一つの分野に張るという考え方ではなく、それぞれに投資しておくことで、需要の波を乗り越えられる可能性が高くなります。アクティブ・ファンドの運用に際しては、それぞれの分野の市場動向を見て、都度比重を変えています。

個社についても、どこかが一強のまま成長し続けるわけではないと思います。たとえばエヌビディアは、高性能な半導体設計について圧倒的な強みがあり、他社の追随を簡単には許さないのですが、半導体需要がそれだけに留まるわけではありません。

エヌビディアのGPUは、さまざまな用途に対応できる性能の高さがあるのですが、電力を多く消費するという欠点を持っています。生成AIを何に利用するかわからないフェーズでは重宝しますが、用途が定まってくるとブロードコムやマーベル・テクノロジーが設計する半導体のほうが消費電力が少なくてすむというメリットがあります。

半導体関連企業の動向を知るにはどのような指標を見るといいですか。

世界半導体市場統計(WSTS)の月次データを見ると、ロジック半導体や半導体メモリなどの分野に分かれたデータで需要動向を確認することができます。また、台湾の企業は月次の売上高を出しているので、特にTSMCの売上高を見ると半導体関連企業全体の動向をつかみやすくなります。

リスクシナリオはどう想定していますか。

足元の半導体関連市場は、米アルファベット(グーグル)や米マイクロソフトなどがAIデータセンターへの巨額の設備投資を行っていることがけん引しています。設備投資のトレンドが転換し、前年比で下がるようなことがあるとネガティブです。米国の景気が後退し、インターネット広告が減速する、またはクラウドサービスが失速するようなことがあるときには注意が必要です。

そうしたリスクを踏まえたうえで、中長期で投資する視点を持つといいということでしょうか。

はい。一時的に米国全体の景気などの影響を受けて変動することはあっても、中長期視点でみると、生成AIの進化はまだ初期段階でさらなる進化が期待できます。人が「もっと便利な社会をつくりたい」「デジタルを使ってもっと楽しい生活をしたい」と願う限り、テクノロジーは進化し半導体関連企業の成長も続くでしょう。

加藤 明
野村アセットマネジメント
シニア・ポートフォリオマネジャー
日系運用会社を経て、2021年に野村アセットマネジメント入社。グローバル株式のポートフォリオマネージャーとして米国の成長株を中心に10年以上の運用経験を有する。博士号(工学)取得。担当している代表的なファンドは、「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」「野村グローバルAI関連株式ファンド」。

※本コラムにおいて個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。本コラムで取り上げられたマーケットや投資に関する考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。

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