2024.12.25 NEW
シニア世代でも積立投資の意味はある? NISAを最短5年で使い切った場合のパフォーマンスを野村證券ストラテジストが検証
NISA(少額投資非課税制度)の非課税保有限度額(総枠)は1,800万円です。年間投資枠が、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の合わせて360万円なので、その枠を使い切るには最短でも5年かかります。シニア世代の中には、積立投資を始めることに躊躇し、NISA口座を開設したもののまだ使用していない方もいらっしゃると思います。今回は、非課税保有限度額1,800万円を毎月の定額積立投資で最短5年で使い切った場合のパフォーマンスについて、野村證券投資情報部の磯崎博志ストラテジストが検証します。
直近10年間でのパフォーマンスは良好
一般に、資産形成において長期積立投資は有効と言われています。しかし、20年や30年といった期間は長すぎると感じる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、例えば5年間積立投資を行い、その後は追加購入や途中売却をせずにさらに5年間保有した場合について考えてみましょう。
今回は、米国の代表的な株価指数の1つであるS&P500指数で検証します。試算をしやすくするために、円建てのS&P500配当込み指数(以下、指数)に連動する架空の投資信託があるとします。この架空の投資信託を対象とし、10年前の2014年12月から毎月30万円を5年間積立投資したと仮定します。この金額は、NISAの年間投資枠である、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円を毎年使い切ることを5年間続け、NISAの非課税保有限度額1,800万円を活用した場合を想定しています。
(注1)図はイメージ。S&P500配当込み指数(円建て)に連動する基準価額10,000口あたり、10,000円の投資信託を、NISA枠を活用して2014年12月から、2019年11月まで毎月30万円投資し、その後は2024年11月までの間保有した場合のシミュレーション。データは月次ベース。
(注2)購入時手数料、信託報酬等は考慮していない。なお、試算期間によってパフォーマンスは異なる。
(出所)S&P500、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
5年間毎月30万円の積立投資を行った結果、5年後の2019年11月には積立総額が1,800万円となります。直近の10年間の指数のパフォーマンスは、コロナ禍の影響もありましたが、概ね堅調な動きを示しました。これに伴い、積立投資終了後も評価額は良好な水準を維持しており、積立投資を始めてから10年が経過した2024年11月時点での評価額は約6,895万円に達しました。
相場悪化時でも積立投資により一定程度下落を緩和
それでは、相場環境が悪化する直前に積立投資を開始した場合はどうでしょうか。1990年代後半から2000年代初頭にかけて発生したITバブルにおいて、指数が数年にわたり下落傾向が続く直前に高値をつけた月、具体的には2000年8月から積立投資を開始したケースを試算してみます。前述と同様に毎月30万円ずつ5年間継続し、積立総額が1,800万円となった後、追加購入も途中売却もせずにさらに5年間保有することを前提としています。
(注1)図はイメージ。S&P500配当込み指数(円建て)に連動する基準価額10,000口あたり、10,000円の投資信託を、2000年8月から、2005年7月まで毎月30万円投資し、その後は2010年7月までの間保有した場合のシミュレーション。データは月次ベース。
(注2)購入時手数料、信託報酬等は考慮していない。なお、試算期間によってパフォーマンスは異なる。
(出所)S&P500、ブルームバーグより野村證券投資情報部作成
この期間、指数が軟調に推移したため、当初は評価額が積立総額を下回る期間も続きました。しかし、2004年初あたりから評価額が積立総額を上回るようになり、2007年5月には評価額が一時約2,871万円に達しました。その後、リーマンショックの影響で評価額は再び積立総額を下回りましたが、徐々に持ち直しました。10年経過した2010年7月には評価額が約1,573万円となり、積立総額からの下落率は12.6%でした。なお、指数はこの期間中に29.3%の下落を記録しています。期間中にITバブル崩壊とリーマンショックという2度の危機がありましたが、積立投資により、一定程度下落を緩和できたと見てよさそうです。
シニア世代の中には、NISAの非課税保有限度額1,800万円の使い方に悩む方も多いでしょう。今回の検証で、毎月の定額積立投資を通じて一定の効果が得られることが確認されました。市場環境が不安定な中でも、積立投資はリスクを分散し、長期的な利益を目指す戦略として有効だと考えられます。NISAの活用を検討している方は、まずは一歩を踏み出してみることをお勧めします。
- 野村證券 投資情報部 ストラテジスト
磯崎 博志 - 2002年野村證券入社、営業店を経て2019年より投資情報部。2024年からは金融リテラシーに関するコンテンツを作成。
※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。
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- 年間投資枠はつみたて投資枠は120万円、成長投資枠は240万円です。また非課税保有限度額(総枠)は、成長投資枠・つみたて投資枠合わせて1,800万円、そのうち成長投資枠は最大で1,200万円までとなります。なお、非課税保有限度額については、NISA口座で上場株式等を売却した場合、当該売却した上場株式等が費消していた分だけ非課税保有額(NISA口座で保有する上場株式等の残高)が減少し、その翌年以降の年間投資枠の範囲内で再利用することができます。
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